幕間 少女たちの過去(前編)

真菜の過去

 最近よく思い出す。

 両親のことや、育ててくれた知り合いの人たち……


 真菜は山奥で一人、物思いにふける。

 燃えるように赤い夕日を見ながら思い出す。


 あの頃もたしか、こんなように赤い――赤すぎる夕日が、山を照らしていた気がする。


 ☆ ☆ ☆


 あれは真菜が小学二年生の時。

 まだ、水無川家が没落する前のこと。


 真菜の両親はとても優しく、真菜のことをとても大事にしていた。

 真菜も、そんな二人が大好きだった。


 だけど一つだけ、どうしても好きになれないところが……


「おお! 見てくれ!」

「わぁ……! やっと、やっとなのね……!」


 両親の声が聞こえる。

 だが真菜は、そんな両親に声をかけることはしなかった。

 今声をかけたら、真菜も巻き込まれるからだ。


 それは――


「幽霊と会話ができる術を、ついに見つけたぞ……!」


 ――そう、これだ。

 お父さんとお母さんはいつも、幽霊の研究ばかりやっている。


 真菜はそのことに辟易していた。

 幽霊は……まあ、たしかに真菜も興味はあるが、なぜ両親がそこまで熱心なのかわからない。


「もう……やめて、よ……」


 幽霊に関心を持つより、自分を――


「……お母さんと……お父さん、なんて……だいっ、嫌い……」


 だけど、そんな思考は振り払い、考えないようにする。

 自分がこんなに悩んでいても、両親がこちらを見てくれることなんてないのだから。


「あれ、真菜? どうしたの?」


 そんなシリアスな思考に浸っていると、急に声をかけられた。

 お母さんが真菜に気づいたようなのだ。


「寝付けないのかしら?」


 お母さんは優しく朗らかに笑う。

 だが、真菜は笑い返すことは出来なかった。

 だから――


「……だい、じょうぶ……」


 そう小さく零して、自分の部屋へと戻っていった。

 その目に大粒の涙を乗せて。

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