第119話 ついに来たっ!

 ついに、来た!

 この胸の高鳴りが抑えられない。


 行きの電車の中でも、いつもと景色が違って見えた。

 キラキラ輝く光が、そこらじゅうに零れ落ちているように感じる。


「……ついに! ついにっ! 来たっ!」


 結衣は興奮を抑えきれず、叫び出してしまいそうになる。

 だが、一人の少女が叫んだところで、なんら問題はないだろう。


 何せ、結衣の周囲も賑やかなのだから。

 そう。結衣たちが今いるのは――


「遊園地だー!!」


 夢いっぱいの、遊園地だ。

 ジェットコースターからは楽しそうな叫び声が聞こえ、売店からは微笑ましい笑い声が聞こえる。


「さぁ、みんな! 楽しむわよ〜!」

「「「おー!」」」


 ここで、温泉旅行に行った時のような掛け声がかかる。

 結衣は少し不安になる。

 遊園地に来たメンツはたくさんいるのに、引率が何故か結衣のお母さんしかいないのだ。


「結衣様ぁ、なんだか突然浮かない顔になりましたねぇ? どうしたんです?」


 リュックの中から、少しだけ姿を見せるガーネット。

 リュックは当然、結衣の背中にある。

 それなのに、どうして結衣の顔の変化がわかるのだろう。


 結衣はその事を疑問に思うが、とりあえず触れないでおいた。

 解答がある程度予測できるから。


「……だってさ、保護者が一人って……とてつもなく不安だよ……」

「あー、なるほどぉ。確かにそうですねぇ〜……」


 結衣は改めて周囲を見回す。

 どこを見ても、人で溢れかえっている。

 この中で迷子になってしまったら、一巻の終わりである。


「結衣……」


 そんなことを考えていると、不意に肩を叩かれた。


「あ、真菜ちゃん。どうしたの?」

「それは……こっちのセリフ、だよ……みんな……もう、あっちに……いる……」

「……え? あ! ほんとだ!? ごめん! 行こう、真菜ちゃん!」

「……うん!」


 初っ端からこんなドタバタしてて大丈夫なのだろうか。

 結衣は自分のことが心配になる。


 だけど、まずは楽しまなきゃ!

 そう思い、足を踏みしめながら進んだ。

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