第118話 遊園地にも現れるのかな……
「へー、遊園地ねぇ……うちも行ってみたかったんどす」
「ホント!? やっぱり遊園地って楽しいもんね〜!」
給食の時間。
それは、多くの学生にとっては至福の時間だ。
今日の献立はカレーのようで、いい匂いが教室中を漂っている。
カレーの匂いと楽しい話題。
その二つが組み合わさると、すごくテンションが上がる。
「遊園地かぁ……あ、そうだ! 明葉ちゃんはどういうアトラクションが好き?」
「ん? うーん、せやなぁ……やっぱ大きな観覧車やろか。あそこで見る景色がすごく好きやわぁ……」
観覧車。あそこから見る景色は格別である。
結衣も明葉と同じで、その魅力に取り憑かれたもののひとりである。
「わかる……! 私もなぜかすごく惹かれるんだよね〜」
結衣は顔を上気させながら言う。
楽しいことを考えていると、こんなに胸が躍るのはどうしてだろう。
高鳴る胸を抑えきれず、結衣は変なことを考え始める。
「うふふふ……いいですねぇ〜。小学生の子どもがキャッキャしている姿……たまりませぇん!」
……ガーネットも、別の意味でいつもよりテンションが高い。
そんなガーネットの、変態しゅ……事案臭漂う怪しげな言葉は。
結衣のランドセルの中にいるからか――幸いなことに――誰にも訊かれることはなかった。
☆ ☆ ☆
そして夜になり、子どもが就寝しなくてはならない時間になる。
結衣は興奮しすぎて、とても寝られそうにない。
明日は休日。しかも、遊園地に行くのだ。
目が冴えてしまうのも、無理はないだろう。
「最近色々あったし……気分転換になるかもね……」
「あっははぁ。最近の色々なんて、遊園地に行けば記憶にも残ってないかもですよぉ?」
「うーん……それはさすがにないと思うけど……」
さすがにそんなことになったら、もはや記憶喪失と呼ぶべきものだ。
普通に生きていたら、そうそう記憶喪失になんてならない。……と思う。
「……はぁ、遊園地では何もないといいな……」
憂鬱そうに零した結衣の言葉に、ガーネットが空気を読まずに食いつく。
「結衣様ぁ……遊園地には夢があるんですよぉ? 大人も子どもも関係なくはしゃぐ。まさに滑稽な……おっと、愉快な場所なんですからぁ!」
「わざわざ言い直したのに何も変わってないね!?」
というか、遊園地そのもののことで、こうして呟いたわけではないのだ。
結衣は賢い。ゆえに、ある程度、次の展開が予測できてしまう。
「私は……遊園地っていう楽しい場所に、敵が現れないのかなって思ったんだよね……」
「あー……なるほどぉ。そうですねぇ……“現れない”とは、限りませんしぃ……」
「……うん……」
だが、もし。もしそんなことになったとしても、結衣はきっとその子を助けるのだろう。
きっと、助けられるのだろう。
ガーネットはそう思い、静かに窓の外を眺める。
星が懸命に輝く姿を見て、期待と不安を紛らわせた。
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