鍛冶工房

 そろそろ、僕が村民に配った農具が痛み始めてくるだろう。ちらちら、屋敷の方にも、その手の相談をする人が増えてきた。その時は、新しいものを土魔法で作ってから、渡していたりしていた。


 僕一人で農具のメンテナンスをするのは、難しいから、誰か代わりにしてくれる人はいないものか。そういえば、この前、海で、砥石の原石を拾うことが出来た。それを使えば、砥石の表面を平らにしたいが、どうしたもんか……風魔法が使えそうかな? 

 ステータスを見てみよう。久しぶりに見るな。


ステータス

体力 100%

魔力 100%


スキル

火魔法 取得可

水魔法 取得済み

風魔法 取得可

土魔法 進化済み → 大規模魔法+ 省魔力+

回復魔法 取得済み 進化可

品種改良 取得済み 進化可 → (栽培期間 栽培時期 品質 食味 収量)変化可 


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 随分と経験値が溜まっているな。これなら……風魔法を取得した。風魔法の知識が流れ込んできた。名前の通り、風を操ることが出来るようだ。風向、風量、風圧をコントロールできると……これなら、鋭利な刃物のような風を生み出すことができそうだな。どうやら、竜巻みたいのを起こすことは出来なさそうだな。


 とりあえず、やってみよう。怖いから、一旦外に出て……砥石の表面を平らにするように、風圧が高いかまいたちをイメージして……原石を切断した。きれいな面が現れた。砥石として、使えそうだな。かまいたちは、そのまま直進して、物干し台を切断して、消えていった。洗濯物がすべて泥まみれになって、エリスにすごく怒られたことは……気にしないでおこう。


 これで、鎌を研磨してみよう。久しぶりだなぁ。日本にいた頃は、毎日のようにやったもんだ。おお……いい感じだ。いい出来だ。よし、その辺の草で試し切りを……よく切れる。これはいい。

 砥石が手に入ったことで、村人に農具のメンテナンスを任せることができそうだ。


 すると、エリスからゴードンの来訪の報せが来た。


 「村長、以前から申しておりました、鍛冶工房の候補者が決まりました。この村の鍛冶職人はいなくなってしまいましたが、その者を手伝っていた妻がおりまして、その方が、是非、鍛冶工房を任せていただきたいとの願いがありまして。その裁可を村長にお願いに上がりました」


 「それは、朗報だ。鍛冶工房はこの村には必須。今後、多くの需要が見込まれるからな。その人は、どこにいるんだ? すぐに会って話を聞きたい。今、ちょうど、いい発見もあったんでな」


 「それならば、表で待たせてあります。今から、連れてまいります」


 ゴードンが一旦、屋敷を出て、すぐに戻ってきた。一人の女性を連れて。その女性は、子供? っていうくらい小さく、狸のような耳と小さな尻尾が生えていた。


 「お初にお目にかかりますも。カーゴと言うも。村長。私の旦那は、旧都で鍛冶職人として働いていたも。私は、その仕事を良く手伝っていたから、ある程度は鍛冶仕事がわかるも。村長が、鍛冶工房の責任者を探していると聞いて、立候補したも」

 

 なるほど。即戦力として使えるというわけか……


 「話はわかった。工房はこれから建設という運びになるだろう。農具のメンテナンスに関しては、すぐにでも、してもらいたいと考えている。ただ、その前に、カーゴ……君の腕を見てみたい」


 僕は、さっき作った砥石と錆びた鎌を持ってきて、カーゴに手渡した。


 「これで、鎌を研いでもらいたい。鍛冶師の手伝いをしていたのなら、これくらいできるだろう? 」


 カーゴは静かに頷いて、研ぎ始めた。最初はゆっくり、徐々に早く、緩急をつけながら、研ぎ上げていく。終わると、僕に鎌を手渡した。ん〜素晴らしいな。実際に、雑草で試し切りすると、空気を切っているような切れ味だった。これはいい腕をしている。砥石の性格をよく熟知しているようだ。


 「すばらしい。これなら、農具のメンテナンスを任せられるな。砥石については、僕が調達しておこう。もちろん、君の方でも砥石の原石を集めてもらっても構わない。表面処理は僕の方でやっておくから……。それと、早速だが、鍛冶工房の建設について話がしたい。工房に必要なものはわかるか? 」


 カーゴは頷く。


 「結構だ。僕は、鍛冶工房については無知だ。大工のレイヤとよく相談して、工房を作って欲しい。予定地は、ゴードンに指示しておく。よいか、鍛冶工房は、この村にとって、重要な施設だ。くれぐれもよろしく頼むぞ。それと、まだ早いかもしれないが、弟子を取ることも視野に入れておいて欲しい」


 話が終わると、ゴードンとカーゴは屋敷を後にした。エリスにレイヤを呼ぶように頼むと、しばらくして、レイヤが現れた。


 「村長、今日は何のようですか? 宿泊施設の増築でもしましょうか? 」


 「大変魅力的な提案ではあるが、今日は違う。ついに鍛冶工房の責任者が決まったのでな、鍛冶工房の建設をお願いしたい。こちらも最大限協力するから、よろしく頼むぞ」


 レイヤは、特に何も言うこともなく頷いてくれた。最近、レイヤには、無理を頼むことが増えてきている。なにか、労ってやりたい。


 「鍛冶工房が一段落付いたら、一緒に飯でも食べよう。エリスの料理は、ものすごく美味いぞ」


 「それはうれしいです。豪勢に頼みますね! 」


 レイヤと僕は二人で笑い、レイヤは屋敷を後にした。砥石の量産をしたいところだが、手頃な石なんて、転がってないんだよね……どうしたものか。


 エリスと二人きりになった。今日は来客が多かったせいで、今日はあまり話してないな……


 「ロッシュ様は、レイヤさんのこと、どう思ってるんですか? 」


 「どうって……すごく村に貢献してくれている大事な人だよ」


 「村としてではなくて、個人的にはどう思っているんですか? 」


 「個人的か……あまり考えたことないなぁ……魅力的な女性であるとは思うけど……」


 「そうですか……不躾な話をして、申し訳ありませんでした」


 エリスが僕に頭を下げてきた。


 「気にしなくていいよ。エリスの助言は大いに役に立っている。なんでも、僕に言ってもいいんだからね。君の事は、個人的にも大切な人と思っているからさ」


 エリスは何を言われたか、わからないように、キョトンとしている。やっと、飲み込めたのか、顔を赤くした。


 「コ、コーヒーのおかわりをお持ちしますね」


 エリスの後ろ姿を僕はじっと見つめていた。僕の大切な女性の背中を……



スキル

火魔法 取得可

水魔法 取得済み

風魔法 取得済み

土魔法 進化済み → 大規模魔法+ 省魔力+

回復魔法 取得済み 進化可

品種改良 取得済み 進化可 → (栽培期間 栽培時期 品質 食味 収量)変化可 


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