海と水着と宿泊施設

 塩田を管理しているマリーから、人手を増やして欲しい旨の嘆願が届いた。事情を聞いてみると、単純にマンパワーが不足して、塩を効率的に生産できなくなってきているとのこと。


 塩は、重要な資源だ。優先順位も当然高い。ここは、是非もなく、人を送るべきだ。ただ、問題は、住居だ。さすがに毎日、10キロを移動して通うのは難しいだろう。向こうに住居があるのが望ましい。しかし、向こうには、マリーが住んでいる一軒しか住居がない。そうなると、新築するしかないか。


 こういうときは、レイヤに相談するしかないか。さっそく、エリスに使いをしてもらい、レイヤを呼んでもらった。

 こういう時、レイヤはすぐに来てくれるので、助かる。


 「村長、あたいを呼ぶなんて珍しいじゃないか。なにか、あったのかい? 」


 おお⁉ 相変わらず、タンクトップと作業ズボンの組み合わせだ。なんとも、魅力的な格好だ。なぜだろう? こういう時、エリスがものすごく怖い顔になる。


 「おほん。今日、呼んだのは、他でもない。家を一棟作ってもらいたいんだ」


 「おお!! ついに、エリスとの愛の巣を作るってことか⁉ やったな! エリス」


 エリスが慌てて、レイヤを止めに入った。なんか、レイヤが落ち込んでいる……この二人にはなにか、あったのだろうか……

 

 「そうではない。レイヤには、前に海の近くの家を補修してもらったが、その近くに建ててほしいんだよ。それも至急に頼みたい」


 「村長の頼みなら、従うけどよ。すぐに欲しいってことになると、住居区の家を移築するのが手っ取り早いけど……」


 僕もそれを考えていた。一からより断然早いからな。僕は、頷いた。


 「了解。すでに、何軒か分はバラしてあるから、すぐに作業に移れるさ。ただ、人手が必要になるな」


 おお! 話が早くて助かる。人手について、ゴードンに相談するために呼び出すようにエリスに頼んだ。ゴードンが来る間、すこし間が開いた。


 「村長。ちょっと頼みがあるんだが……」


 ん? レイヤから頼みとは珍しいことがあるな。しかし、レイヤが身を乗り出してきているせいか、何か見えそうなんだけど……とりあえず、話を続けさせよう。


 「ついでに、もう一棟建ててもいいかな? 実は、海で遊びたいけど、帰りが億劫って言ってる奴がいたんだ。そういう奴らのためにも、宿泊施設を作ってやりたいんだよ。みんな、仕事ばっかりで、息抜きなんて、ずっとしてなかったからさ。資材も、あるんだしさ……いいだろ? 」


 レイヤの言うことはもっともだ。人には、娯楽が必要だ。張り詰めた糸は切れやすいものだ。


 「無理のない範囲だったら、構わないぞ。もちろん、その分の人手も確保しよう」


 レイヤがすごく喜んでいた。さすが、村長だなって褒めてくれた。


 「なに、大変なのはゴードンだがな……」


 二人が笑っている時に、ゴードンが到着した。


 「なにやら、楽しそうな声がしますな。ロッシュ村長。して、どのようなご用件で? 」

 これまでの経緯を説明すると、ゴードンは了承してくれた。宿泊施設についても、大賛成だった。どうやら、前々から、娯楽施設が欲しいと、住民から要望が上がっていたようだ。しかし、現状では難しいと断っていたとのこと。僕も少し前なら断っていただろうな。村にも少しずつ心の余裕が出来てきたってことかな。


 数日後、人手となる村人が集まり、住居区の解体された家屋の部材を、海近くの建築現場まで運び込んだ。思ったよりも人手が集まってくれたおかげで、一日で済んだ。


 資材が運び込まれれば、あとは、レイヤとその仲間達で、一気に建てあげていく。僕も初日だけ、更地にするための魔法を使って、手伝いをしただけで、あとは任せていた。数日後、レイヤから、完成した旨の連絡が入った。


 流石に早いな。僕はエリスを連れて、海に向かった。折角、海に行くんだから、水着を持っていこう。この暑さから、少しでも解放されたい。エリスも嬉しそうに水着を用意していた。


 現場に到着すると、しっかりと二棟建っていた。新築とまではいかないが、かなりきれいな外見をしていた。まずは、塩田労働者用の家を拝見した。普通の間取りで、一世帯が住むのにはちょうど良さそうな感じだ。一方、宿泊施設の方を見ると、なるほど……広めのリビングとキッチン、あとは寝室がたくさんあった。これなら、10人程度なら楽に泊まることができそうだ。


 当分は、海で遊びたい人で宿泊施設を回していくしかないな。ゆくゆくはもっと大きな施設を作ってあげたいが、その余裕はなさそうだ。


 レイヤを呼び、僕は、大いに労った。レイヤがいなければ、ここまで住居環境を良くすることは出来なかっただろう。すると、レイヤが、僕に、この宿泊施設の第一号になってくれと頼んできた。……もちろん、そのつもりだ!!


 すぐに、僕とエリスは水着に着替えた。僕の方が先に更衣室から出たので、海の方に向かった。熱い風、熱い砂浜、そして、冷たい海。最高の気分だった。さっぱりしたところで、海から出ると、ちょうど、家の方から、五人の女性が来た。


 エリスとレイヤとその仲間たちだ。皆、ビキニタイプの水着を着ていた。いつも見ない姿だけに、僕は興奮するのを抑えることができな……僕の体が、興奮を一気に冷ましていく。こういう時、13歳の肉体が恨めしく思う瞬間だ。


 それにしても、皆、スタイルが良くて、目のやり場に困るほどだ。しかし、エリスとレイヤは特にすごいな。どちらも出るところが出て……レイヤのほうが少し大きいか。それにしても、エリスは着痩せするタイプなんだな。こんなに大きいとは思わなかったぞ。


 しかし、エリスの水着、サイズが合ってない気がする。成長を水着がカバーできていないようだ。来年までに水着をプレゼントしよう。


 海で遊びまくった僕達は、夜にバーベキューをして、宿泊施設にみんなで泊まることにした。すごく、快適な部屋でびっくりした。そこで、女の子たちと、いろいろとあったが……それは別の話。


 すぐに、村人に宿泊施設が開設したことを告知し、利用者は順番を守って使うように徹底的に指導した。あの施設が、村人たちの憩いの場になってほしいな。


 ちなみに、塩田労働者用の家には、亜人の老夫婦が移り住むことになった。『ろう』って付いているけど、亜人は若い時が長いため、労働力としては文句のつけようがないのだ。老人だと馬鹿にしてたら、近くの大木を軽々持った時は、流石に驚いたよ。

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