第5話:深淵
先代、先々代のGMたちがあの部屋に入り、『D.L.P.N』システムにアクセスした後、その部屋から出てきた時は、決まって、げっそりと頬がこけており、さらには眼の下にくっきりとクマが出来上がっていたのである。そのGMたちの姿を見て、怖気を感じていた
「自分にGMの御言葉を断る権限なぞ無いのはわかっているけど、それでも貴殿は地獄の釜を開くことに後悔はないの!?」
「ははは……。サーバールームを『
「くっ……。痛いところをついてくる……。地獄の先だから、深淵こそがふさわしい。貴方は深淵の扉を開くことになる!」
「そういう言い直しは要りませんっ! ってか、臨時メンテナンスの時間がそろそろ終わりそうなんです。残念ながら、ここできみと言葉遊びをしている時間がありません。さっさとブラックルームを開けるための鍵を渡してください」
「自分の義眼がブラックルームの扉を開けるための鍵となる……。これを使ってほしい」
「うえっ……。噂には聞いてましたけど、なかなかにグロいシステムを採用してますね……。義眼だとわかっていても、おえっとなっちゃいそうです」
そこにたどり着くまで時間としては2分もかからないのだが、
「気を付けてほしい。深淵を覗く者は同時に深淵に覗かれる……」
「それってデカルトの言葉でしたっけ? まあ、誰の言葉でもこの際、どうだっていいです。では、いつ頃までに戻ってこれるか確約は出来ませんが、行ってきますね?」
光が当たるやいなや、真っ黒な壁から浮き出るように長方形をかたどる線が走り、それは扉となる。そして、その扉は左から右へとスライドする。
「良い旅路を、山道。きみが行く先に祝福あれ……」
「ふむ。ブラックルームと呼ばれている割には、光源は準備されているんですね」
それは黒い卵型のマシーンであった。黒い卵には何本もの太いケーブルが繋がれており、まるで黒い卵の背面から底辺りにかけて太い血管が繋がっているような印象を
「さてと……。仰々しいですが、この黒い卵を開けるにはどうすればいいんでしょうか? 一文字くんからもらった義眼はここに置けばいいのでしょうか?」
黒い卵の脇に台座が設置されていた。その台座の上には半球状の金属製のお椀があり、そこに義眼を置けば良いという感じを受ける
するとだ。ウィィィンというモーター音が聞こえ出し、黒い卵の表面に隙間が生じ、さらにはパカッと貝のように大きく開くのであった。黒い卵の中にはまるでアニメに登場するようなヒト型ロボットの操縦席のようになっており、そこに座れば良いことがうかがい知れるのであった。
「やれやれ……。こんなところに金をつぎ込めるなら、もっとノブレスオブリージュ・オンラインの開発そのものへ予算を回してくれても良さそうなんですけどぉ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます