第4話:一文字・恒彦
「まあ、実際に『D.L.P.N』システムに繋がってみたほうが、どうなるかわかるってもんですよ。というわけで、僕はさっさと行ってきますんで、川崎くんはサーバー負荷のモニタリングをお願いしますね?」
「ウッス……。なんか上手くまとめられた気がするッスけど、そこはGMならではの手腕だと思っておくッス。あと聞いておきたいんッスけど、外部から『D.L.P.N』システムを監視できないんッスか?」
「うーーーん。あまり、僕のPC画面を見せたくないんですが!?」
「うっさいッス! 緒方っち、山道さんのディスクにあるPCから『D.L.P.N』システムを監視できるようだから、仕事の合間にも見ておいてほしいッス!」
「あうあう……。そんなに強く言わなくてもぉ。わかりましたぁ。私がチェックしておきますけど、何かありましたら、川崎さんに振りますからね??」
仕事用のPCと言えども、仕事とはまったく関係ないソフトを入れていることは誰しもが納得してくれることであろう。ソフトまでならまだマシな部類で、デスクトップ画面を家族の写真に変えていたり、あろうことか、萌えアニメのキャラクターにしていた場合は眼も当てられない大惨事となる。
今、GM山道のPC画面のトップ画像はグラフィックデザイナーのカロッシェ・
とにかく、女性である
かくして、後を頼んだ
「さっぶぃ! こんな冷え込んだサーバールームで仕事をしなければならないなんて、地獄そのものですねぇ!」
余りにもの寒さに
サーバールームにあるサーバーマシーンは西暦2030年代のこの時代、量子コンピューターが主流となっている。エイコウ・テクニカル社でも積極的に量子コンピューターを導入し、サーバーへの負荷低減対策を取っている。しかしながら、それでもシーズン5.3導入による1つのゾーンへプレイヤーが殺到したことには耐えれたなかったことは容易に想像できるのであった。
そもそも、ノブレスオブリージュ・オンラインのプレイヤー人口が目減りしていったことにより、エイコウ・テクニカル本社は、よそで使っていた能力の低いサーバーマシーンをシーズン4.0からノブレスオブリージュ・オンラインに割り当てたのである。それによって、プレイヤー人口が減ったというのに、サーバーが物理的にダウンしかけるような目にあってしまうのである。
「やあ、いらっしゃい……。ここは地獄の最下層・『
サーバーマシーンの傍らにあるデスクの椅子に座ったまま、その椅子を回転させて、
「あのですね……、一文字くん。いくら寒いからといって、サーバールームを
「そんなこと言われても、寒いんです。お酒が無かったら、どうやって、自分は身体を温めたら良いんです!?」
しかし、そんな彼ですら、これ以上の負荷にサーバーマシーンは耐えられないと窮状を訴えてきたのである。今日は木曜日。そして、明日から金土日といった、社会人層たちが本格的に新バトルゾーンへ殺到することは火を見るより明らかな状況が待っている。
「一文字くん。身体を温めるだけの酒量は認めます。それよりも、僕はこのサーバールームのさらに奥にある『D.L.P.N』システムに用があってきました。鍵を渡してください」
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