サーカス3

サーカス小屋が見えてきた。赤と黄色の、楕円形の派手なテントだ。

「うわー、すげー」

「ライオンいねえかなあ」

「なあ、カンちゃん知ってる? 昔、Ⅰ市でサーカスのライオンが逃げたんだって」

「そうなんだ?」

「係の人がカギかけ忘れたらしいよ」

「そんでライオンは?」

「撃ち殺されたってさ」

「そうか」


入口のところで、女の子がチケットのもぎりをしていた。

そうだよな、と俺は思った。ここまで来たものの、チケットがないと中に入れない。

「あのう、このチケットで入れませんか」

あまねが、もぎりの女の子のところに行って、話しかけた。

なんだ、チケット持ってたのか――よく見ると、あまねが手にしていたのは、二枚のつやつやの葉っぱだった。

「なんだよ、その葉っぱ。――すいません」

俺は、あまねの頭を叩いて、女の子のほうを見た。


女の子は外国人で、俺たちと同じくらいの年に見えた。金色の髪をふたつに結って、バレリーナみたいな衣装に身を包んでいた。

「サーカスの子? 君もステージに立つの?」

あまねが尋ねると、

「あたしは、まだ。見習いですから」

その子はきちんとした日本語で答えた。そして「フーム」などと口の中でつぶやいて、二枚の葉っぱを陽にかざした。

「これはとくべつ席のチケットですね。十分後にここに来てください」

「え?」

思わずあまねと顔を見合わせた。

「ほんとに? いいの?」

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