冥宮【ドラゴン・デス】 三
~ ヨハン・パノス ~
俺とエズィの視線の先に広がる
腰の魔導剣【青燐】を抜く。
俺が持つ
―― 剣技・
斬撃の力を
走った一筋の紺碧の
涼気の宿る風が吹く。
景色は開け、
「行こうか」
「うん」
観光ルートを外れた途端に
百あるかどうかの歩みで、何事も無く俺達は門の前に辿り着く。
「これが
「そうだ」
素焼きの土器のような質感の門の中心には『金の糸を纏い十三枚の翼を持つ黒き月』が
魔月奇糸団に関わる
金の鍵を持つ者は対象を任意の場所へ転移させる事ができ、銀の鍵を持つ者は自分一人だけを転移させる事ができる。
また鍵を持たない者でも『月の問い』に正しい答えを返せば、門の中へと入る事ができる。
なお月の問いに三回間違えると、
「ここまでが
「ふ~ん」
「愚の俗徒が黒翼【愚の
俺達の仲間だった【竜眼 ヤパス】、愚の俗徒の分身の一つだった男が、伝説の物語として語った地獄。
「人は人を殺す為に
門に彫り刻まれた花に触る。
冷たく硬く、名前の分からない花がここに
ここに
「綺麗だな」
「うん」
幼い容姿の
同じものだったのだろう。
そう確信させる程に、感情の薄い顔に宿る
「さて、開けるぞ」
とてもワクワクする。
実を言うと、これを開けるのは俺、初めてなのだ。
俺の先生である先代第四席【鏖風奇刃 ハリス・ローナ】は閉所恐怖症であり
そして俺もまた、
その理由は、俺達が使う五手乃剣にあった。
五手乃剣を
特に第二手の
しかしその逆とでもいうか、こういった空間を操作して創られた場所に立つと、必ず強い違和感に襲われる。
それは強い乗り物酔いに似た、とても気分の悪いものだ。
今はパーナに貰った酔い止め薬が効いているが、もし無かったならば、俺はここに入らなかっただろう。
「開けゴマ塩」
このクソ寒い合言葉はグロリアが決めた。
『
響くのは
十三枚の翼が消え、黒き月が白き月に変わる。
波紋のように、門から魔力が放射される。
青空は一瞬で夜の星空に変わり、幾つものオーロラが神秘的な輝きで闇の世界を照らし出す。
正直、聞いて思っていた以上に最高だった。
『好きな女の子はだ~れだ?』
おい魔女野郎。
「知らん」
『好きな女の子はだ~れだ?』
「いない」
『ねえねえ好きな女の子は誰よ? ここで言ってスッキリしちゃおうよ! ヘイヘイチキン野郎! 私あなたの勇気を見てみたい!』
………………俺の感動を返せ。
「はいはい。俺が好きなのはグロリアだよ。
もう極悪地獄滅殺ルートでいいから行かせてくれ。
『……』
何故転移しない?
『……』
……。
『好きな女の子はだ~れだ?』
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