過去の記憶であり、今の悪夢

 幼い頃に戦争を見た。

 

 ボロボロになった町。

 ぼろぼろになったみんな。

 そんなみんなを、魔獣達が食べていった。


 何もかもがあっけなく消えてしまって、夢かと思った。


 彷徨い歩いて、何年か過ぎた。

 独り、故郷が在った場所に帰った。


 何も無い砂礫の原を、風が吹いていた。


 砂を握り締めて、舐めた。


 唾と一緒に砂を捨て、手に握った砂を空へと投げた。

 骨の浮かんだ腕を縛る鎖が、ジャランッと鳴った。


 父と母の姿が見えた。

 跪き、聖霊へと一心に祈り続ける姿がまた、消えた。


「聖霊、さま。たすけ、て」


 言葉を思い出しながら、祈りを吐き出した。

 荒涼たる大地を風が走り、自分あなたを見ないまま、去って行った。

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