因縁 五
【呪律機巧竜 ベヌ・ゲラニハ】によって神殿騎士団は消滅した。
崖から海に落ちた私は気を失って、そして目覚めたのは何処かの廃屋だった。
「ここは?」
灯り、そして人の気配。
「やあ聖女様~、大丈夫ですか~」
黒いローブを纏い、長い黒髪を流した黒目の少女。
「あなたが私を助けてくれたのですか?」
こくりと頷き、湯気の立つカップが渡される。
ココアの香りが立ち昇る。
「どうぞ~」
「ありがとう、ございます」
それは甘くて、とても美味しかった。
* * *
『ガアッ』
更に
『カハハ、流石パフェラナたん。強くて綺麗で可愛くて。だから、兄様の次に……』
「さよならだよ、ベアーチェ」
「
ブルー・クラーケンのエネルギーを、
標準を合わせ、その視界の中で、ベアーチェが笑った。
―― 「パフェラナたんって呼んでいいかな?」
水の大神殿の工房で、遠慮勝ちに聞いて来た彼女。
机に置いた二つのカップからは、ココアの甘い香りが立ち昇っていた。
―― 「この世界は広いのにさ~。人も~、信仰も~、国も~。と~っても小さいよね~。ここ出てさ~、望むままにもっと遠くへ~って、夢を見るんだ~」
―― 「ねえパフェラナたん。パフェラナ。いつか私と兄様と……」
「ブルー・クラーケンッ! 何で今これを見せるんだよっ!!」
唇を強く噛む。
その痛みでも紛れない。
けどっ!
―― 寝台に横たわる姉さんの姿。
―― 色の消えた瞳が虚空を眺める。
―― 「ねえパーナ。私の赤ちゃんはどこ?」
「っ!!」
「テンティクル装填!」
テンティクルの一つを
―― 対聖霊最終兵器。
「エデンズフォール・カノン、ルシファー・スマッシャー
空間さえ貫き壊し、光の速さを超えた青が
そして地表へと届く前に、七つのテンティクルが形作る、異空間の穴の中へと消えて行った。
ブルー・クラーケンの下、星の表面を覆う夜は消えて、青い世界が見える。
それは果てしなく広くて、人の姿など、余りにも小さくて見えはしない。
それぞれの神殿と国を分かつ、地図に描かれた境界など、大地にも海にも無く、空はどこまでも続いている。
光が消え、夜が戻る。
闇の中で空虚が押し寄せて来て。
涙が出る前に、両手で目を覆った。
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