バルマード三勇姫なのよ!?

 ドカッ!

 俺は扉を蹴破るようにして、室内に入る。

 同時に中にいた者達に睨まれたが、そのほとんどが酒場でぶっ飛ばしたことのあるやつで、視線はすぐに霧散した。


「くそッ……何で俺がこんなところに……」


 周りを威圧するよう目をギラつかせながら、歩を進める。

 俺がやって来たのは荒くれ者達の巣窟、勇者組合の精霊国副都支部。

 雑用から要人の護衛、物の買い付けから危険生物の討伐など。

 依頼を出し、それを受ける者がいればどんな仕事でも成立する、究極の何でも屋。

 それがこの勇者組合だ。

 

 その特殊な形態から組合加入の敷居は低く、それでいて国からの仕事なんかも入ってくるらしい。

 謳い文句は『今日から君もみんなの勇者』。

 みんなの雑用係の間違いだろ。

 

 組合の中はシンプルだ。

 依頼を受け付ける窓口があって、それらを張り出す掲示板があって。

 あとは待合所的な意味を込めた飲食スペース。

 そこでは勇者どころか蛮族みたいな顔をした奴らが、掲示板を睨みつつ酒を飲んでいる。


 酒を飲んであーだこーだ言ってる暇があったら働けよな。

 このクズどもめ。


 『それどう考えてもブーメランですから!』と叫ぶ自称美少女の姿が頭に浮かんだ。


 十ほど並んだ掲示板。

 その一番手前にここに来た目的の姿を見つけた。

 見つけてしまった。

 いなけりゃティーに言い訳もできたのに。

 何ですぐ見つかるようなところにいるんだよチクショウ。


 俺は鉛のように重くなった足を何とか持ち上げて近づく。

 そしてなるべく明るい声を意識して、その後ろ姿に言葉を掛けた。


「や、やあ三馬鹿、じゃなくてバルマード三勇姫の皆さん! 死ね、じゃなくてご機嫌麗しゅう!」


 にっこり笑ってご挨拶。

 まずはこいつらの機嫌を取ろう。


「あれ、悪党のお兄さんじゃないっすか! そんな変な顔してどうしたんすか?」


「変な顔なのは多分ナー達がボコボコにしたからだナー。そこまで変になるとは、ちょっと申し訳ないナー」


「ふんっ! 変な顔を見せつけて同情を誘おうったってそうはいかないんだから! 悪いのはあなたでしょ!」


「…………」


 が、我慢だ我慢。

 今すぐ殴りたい。

 「どっからどうみても満面の笑みだろうが!!」って叫びたい。

 けど俺はこいつらの依頼に同行しないといけないんだ。

 ここは何とか下手に出て、ただでさえ低い好感度を稼がないと。


「い、いやあ実は今日ここに来たのは御三馬鹿に謝りたくてですね!」


「あれ、今『御三馬鹿』って言ったっすか?」


「いえいえ、『御三方』ですよ!」


 貼り付けた笑みと共に否定する。

 赤馬鹿は「何だ聞き間違えか」と納得していた。


「酔っ払っていたとは言え、大きなご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした!」


「全くよね。貴方のせいで精霊を貰えるまでの依頼ノルマが増えたんだから! 一般人を他国の勇者がボコボコにするなんて何事かって怒られて。全部貴方が弱いくせに突っかかって来たせいよ! 弱いくせに!」


 おごッ、おごごごぽぐごごッ。

 がまん、ぼくはがまんの子。

 ぼく、像、まもる。

 それ、ぼくの、しあわせ。


「そ、そうですよね。こんなにも弱い僕が突っかかったせいで! あー申し訳ないなぁー!! このガキもう死なないかなぁー!!」


「ん? 今『このガキもう死なないかなぁ』って言わなかった?」


「『この度申し訳ないなぁ』って言いました!」


 凄むような笑顔で否定する。

 青馬鹿は少し首を傾げていたが、最終的には聞き間違いとして処理していた。


「それでお詫びと言っては何ですが、皆さんのクエストのお手伝いをさせて頂けないですか? 一度だけでも! と言うか一度だけ!」


「んー? ナー達は基本的に魔獣の討伐依頼を受けてるからナー。正直言って弱い人が付いてくるのは足手まといなんだよナー」


「ま、まあそう言わずに! 実は僕もそれなりに戦えるんですよ。戦闘員が要らないって言うなら荷物運びでも何でもしますし、何ならお前らを鞄に詰めて谷底に運んでやろうかクソガキ共」


「後半のが完全に本音だよナー? 聞こえてるからナー?」


 思わず罵倒が口から飛び出た。

 三馬鹿がこちらを見つめてくる。

 笑顔だ笑顔。

 変な顔と言われようと何だろうと、笑顔で押し切る。

 笑えば万事は解決するって偉い人もきっと言ってた。


 微妙な静寂がその場に数秒流れる。

 しかし俺の笑顔が崩れないのを悟ったのか、三馬鹿は以前のように肩を寄せ合って周囲に丸聞こえの会議を始めた。

 

「こう言ってるけど、どうするかナー?」


「私はいいんじゃないかって思うっすけどね! なんか、あのボコボコな顔を見てるとちょっと可哀想になってきて……」


 うるせえ自前の顔だよ。

 怪我ならとっくに治ってるわ。


「まあ、一度は妹になった身っすからねやっぱり!」


 へへっ、と鼻の下を擦る赤馬鹿。

 そうだよな思い返してみればほとんどお前のせいだよな。

 責任をとってちゃんと俺を同行できるようにしてくれ。


「ナーは何か怪しいと思うけどナー。別に求めてもないのにお詫びがしたいって。それもクエストに同行するって言うピンポイントな形で。裏がありそうだよナー」


 くそっ、馬鹿のくせにまともな考えをしやがって。

 赤馬鹿、何とか言ってやれ。

 

「そ、そう言われてみれば怪しい気がしてきたっす! もしかしてまだ私達の兄になろうと考えているとか……!?」


 やっぱりお前はもう喋るな。


「可能性はあるナー」


 ねえよ!

 結局馬鹿同士の会話じゃねえか。

 青馬鹿はどうした、お前が一応こいつらの纏め役みたいなもんだろ!

 

 そんな俺のやきもきした思いが届いたのか、無言を保っていた少女が不適な笑みと共に口を開く。

 

「ふふっ、あの男の狙いがわかったわ!」


 自信満々に言い切る青馬鹿。

 あ、ダメな奴だこれ。

 というか堂々とこっちを指差すんじゃねえよ。

 一応お前達の間での密談じゃねえのかよ。


「さ、流石っすミズちゃん! 是非聞かせてください!」


「ナー達が考えた『まだ兄になろうとしてる説』が正解だとは思うけどナー。ま、まあでも一応聞いてやるかナー」


 グイグイと食い気味に青馬鹿へと顔を寄せる二人。

 黄馬鹿も口では素っ気ないふりをしているが、興味津々なのが丸わかりだ。


「しょうがないわね、聞かせてあげる! あの男の狙いはね――」


「ご、ごくり……」


「ご、ごくりんちょ……」


 わざわざ効果音を口に出すなイラっとするだろうが。

 黄馬鹿のに関しては唾を飲む音でも何でもないし。

 そんなことを思いつつ、俺も青馬鹿の言葉に耳を澄ませる。


「――そうあの男の狙いは、この私よ!!」


「「なっ!?」」


 なっ!?

 

「つまりあの男は私に惚れてるのよ!!」


 な、何だってぇー!?


 じゃねえよ!!

 そんなわけあるか!!

 くそっ。

 なんか利用できるようなものだったら、と耳を傾けた自分を殴りたい。


「どういう、ことっすか!?」


「は、早く詳細を聞かせろよナー!」


 何でお前らはもう信じ気味なんだよ。

 仲間の言葉だと脳が思考停止するようになってんのか。


「まずは何故この男が私達に付き纏うかってことだけど、それはあれね。多分私達の内の誰かが好きだからよ。男が女に近づく理由はそれぐらいだってどっかで見たわ」


 おい、一番大事な部分がフワッフワじゃねえか。

 流石にそれじゃあ二人も納得しないだろ。

 

「なるほどっす」


「確かにナー」


 するのかよ。


 もう俺も適当に話をでっち上げた方が早い気がしてきた。

 それこそ兄だって言い張れば多分何とかなるぞこれ。


「問題は誰が好きかってことだけど、まずファイナは外れるわ。最初は貴方の兄だって言って近づいてきたし、妹とは恋仲になれないもの」


「そ、その通りっすね……」


 何でそういうところだけは考えれるのか。

 不思議でならないよ。

 兄だって言って近づいた覚えは全く無いけどな。


「そして店の外でボッコボコにした時、一番あの男を殴ったのは私よ! つまりは私のことが好きってことね!」


 いやそれはお前の匙加減。

 というかどう思考を繋いだらそんな結論に至るんだこの馬鹿は!

 

 だ、ダメだこいつらの会議に身を任せても事態が好転する気がしねえ。

 こうなったら下手に出るとか言ってる場合じゃないな。

 何とか無理やりにでも依頼に同行させてもらおう。


「おい、さっきから好き勝手言いやがって。俺がお前のことが好きだぁ? そんなわけないだろうがこのガキが!! 自分の体型見てからものを言いやがれ!!」


「あ、ちょっと今まだ推理披露してる途中だから静かにしてて」


「す、すいません。……じゃねえよ!! 聞けよ!! 俺の話を、聞けよ!! 聞けよ!! なあ!? 聞けよ!!」


 俺は身振り手振りを使って全力でアピールする。

 渾身の割り込みがそんな後ろ手で制されて終われるか!

 大体今のはどうでもいい話とか放っておいて、俺の罵倒に言い返すところだろうが!

 それが何で『今忙しいから後でね』的な感じになるんだよ!


「こ、ここまで必死に言ってるんすから、聞いてあげるっすか?」


「そ、そうだナー。ミズもいいかナー?」


「え、ええ……目もなんか充血してて怖いし。しょ、しょうがないわね聞いてあげる!」


 少しビクビクした様子の三馬鹿。

 どうだ、大人が全力で大声を出して懇願してくる恐ろしさがわかったか。

 その勢いを殺さぬまま、青馬鹿の顔を指差す。

 

「まず一つ! 俺はお前に惚れてない!」


「で、でも一番貴方を殴ったのは私だし……」


「だからそれはお前らの匙加減だろうがっ!! というか何で殴られて俺がお前に惚れるんだよ!!」


「そういう性癖だから?」


「チッガーウ!! 俺の、性癖は、おっきなおっぱいとお尻だ!! わかったか!? わかったら復唱しろ! はい、おっきなおっぱいとお尻!!」


「お、おっきなおっぱいとお尻!」


「よしっ!」


 自分でもよくわからないテンションになってきた。

 組合中から注目されてるし。

 ふざけんなてめえら見せもんじゃねえんだぞ。

 そんな思いとともに周囲を一度見回せば、視線が散っていく。

 

「でもミズちゃんが好きじゃ無いのなら、何でクエストに付いて行きたいとか言い出したんすか?」


「だからそれは詫びでって言ってるだろうが、あぁ!?」


「ど、どう見ても詫びてる人間の顔には見えないんだよナー」


「完全に肩がぶつかった時のチンピラの顔っす……」


「うるせぇよ!」


 俺の顔を見ながら後ずさる二人に一喝する。

 大体、肩もぶつかってないのに言いがかりをつけてくる奴らに、チンピラとか言われたくない。

 悪意なく因縁をつけて人をボコボコにしてる分、こいつらチンピラよりたちが悪いだろ。


「ともかく! 一回だけでいいから依頼に同行させてくれ。報酬を分けろなんて言わないし、何なら絶対達成できてすぐ終わる簡単な依頼……そうだなこの倉庫の整理とかに同行させてくれれば、俺が討伐依頼と同じぐらいの金を払ってもいい。それなら弱かろうが関係ないし、お前らも楽でいいだろ?」


 本当ならこんな奴らに金なんて払いたくないが、それで素早く縁を切れると言うなら必要経費だ。

 ティーの指示に同行するクエストの指定はなかったし、街から出ないようなものでも問題はないはず。


「ちょっと待ちなさい!」


 青馬鹿が一歩前に出て声を張り上げる。


「何だまだ何か文句あるのか? 報酬ならちゃんと払え――」


「私達の絶対達成できる依頼が倉庫の整理ってどういうことよ!! 馬鹿にしないで!! 私達はバルマード三勇姫なのよ!?」


「…………」


 そこに食い付くのかよ。


 後ろに少し引いていた赤馬鹿が力強いジャンプで目の前に飛び出てくる。


「燃え盛る炎姫! ファイナ・ティルベルっす! …………あれ?」


「ファイナ、今のは決めポーズの合図じゃなくて多分ただ言っただけだナー」


「あ、そうなんすね」


 黄馬鹿に襟首を持たれて元の位置へと回収されていく、赤馬鹿。

 よかった、もしまたあの戦隊モノを見せられていたらこの建物ごとぶっ飛ばしてた。


 赤馬鹿が後ろに戻ったため、再び怒り状態の青馬鹿と対面する。


「倉庫整理の依頼はお前らが弱い人がどうのこうの言うから選んだんだろうが。付いてっていいなら別に俺は何だっていいんだよ」


「ふんっ! 私達レベルならえーっと……」


 青馬鹿が掲示板へと顔を向けて、その視線を右往左往させる。

 そして目にかなった依頼を見つけたのか手を伸ばした。

 しかし身長が足りず、掲示板の上の方にある依頼へ手が届かない。

 背伸びしたりジャンプしたりしても目標へは届かず、最終的には背負っていた大剣でつついての確保。


「これぐらいが絶対達成できるラインね!!」


 鼻息を荒くして見せられた一枚の依頼書。

 内容は郊外にある森で発見された魔獣の討伐(複数)。

 依頼難易度を表す星の数は7。

 ちなみに最大が10らしい。


 他の馬鹿二人も青馬鹿の選んだ依頼書を覗きにくる。

 そして赤と黄が小声で会議。


「この前失敗した依頼は星いくつでしたっけ」


「確か7だナー」

 

 おい、絶対達成できてねえじゃねえか。


「ってことはもしかしてミズちゃんは……」


 赤馬鹿の言葉に対して頷く黄馬鹿。

 どう考えても見栄張ってるだけだろ。


「私達が以前より成長してるって、確信してるんすね!」


「そういうことだナー!」


 ポジティブが過ぎるなおい!

 頭の中お花畑すぎて虫沸いてんのか!?


「どう? 私達がどれだけすごいかこれでわかったでしょ?」


 無い胸を誇らしげに張って依頼書を掲げてくる青馬鹿。

 できれば面倒な依頼は避けたかったが、もう何でもよくなってきた。

 

「ああそうだなすごいな! で、その依頼に俺も付いていっていいんだな!?」


「え? 弱い人が付いてくるのはちょっと……」


「…………」


 じゃあ今のやりとりは何だったのか。

 お前のそのアホ毛に大剣ぶっ刺して掲示板に留めてやろうか。

 そんな思いを乗せて超至近距離から青馬鹿を睨む。


「だ、だってほら! 怪我とかされて私達が責任取るのもやだし、勇者組合的にも加入してない人が付いていくのはどうなのかなーって思うし! そうよね!?」


「えっ」


 焦った青馬鹿がパスを出したのは、数個隣の掲示板に依頼を貼りにきた職員。

 少し顔に小皺が刻まれた気の弱そうなおっさんだ。


 おっさんに青馬鹿が再度尋ねる。


「組合に入ってない一般の弱い悪党が、難しい討伐依頼に付いていくのはだめよね!?」


「え? あ、は、はい。なんか、色々ダメだとお、思いますけど……」


「ほらね! 組合的にダメなのよ! 諦めなさい!」


 虎の意を得たり、と落ち着きを取り戻した声で叫ぶ青馬鹿。

 俺はそんな少女を無視し、ポケットに片手を突っ込みながらおっさんに近づいた。


「なあ職員さん」


「ひっ、な、何ですか?」


 横へと並んで肩を組み、ポケットから手を引き抜く。

 そこには特徴的な文様と文字の刻まれた金属のプレートが。

 それをおっさんの目に良く入る位置へと持って行き、囁くように問いかけた。


「これが何かわかるか? ケイルバーン商会副都代表、チャミーフィオ・ケイルバーンの紹介状だ」


「あ、あのケイルバーン商会代表のしょ、紹介状!? い、いつも紹介にはお世話になっておりますっ……」


 ペコリと頭を下げるおっさん職員。


「そうかそうか、それはよかった。実は今言った副都代表とは昔から仲が良くてな。怖い奴だぜ、アイツは。人のことを金を生み出す機械だとしか思っちゃいねぇ」


 俺はわざとらしく下卑た笑みを浮かべつつ話す。

 肩を組んで下を向いているので、おっさん以外には表情も言葉も届いていない。


「そ、そうなんですか……」


「ああ、それに常に犠牲を求めてる。犠牲なき経営に栄光なしってのが理念だったらしいんだが、今じゃ目的と手段が逆転して、ただ犠牲を産むことに悦を感じてるんだ。何の罪もない従業員を斬り捨て、小銭を握り締めてきた子供を親もろとも焼き殺し、目が合った適当な市民から理由なく経済的立場を奪い取る。それが悪逆非道のチャミーフィオ・ケイルバーンって女だ」


「…………」


 ガタガタと震えているのが、組んでいる肩越しにも伝わってくる。

 

「次の犠牲は誰だろうなぁ? 突然国一番の商会に除け者にされて、生きていけると思うか?」


「あ、ああああ、あの! す、すみませっ、わた、わたしっ何も知らずっ!」


「別に怯えることはないさ職員さん。俺はただそんなヤツと知り合いだって言っただけで、別にあんたが犠牲に選ばれるって言ってるわけじゃない。ああそうだ、職員さんにはお願いがあったんだよ。難しいとは思うんだが、あの三馬鹿の依頼に付いていく事、何とか容認してくれないか?」


「も、もっももももちろんですっ! よ、よよ、容認させて頂きます!!」


「そうか? 悪いな、なんか脅したみたいになって! 責任は全部こっちが取るから気にすんなよ!」


 バンっと一度おっさん職員の背中を軽く叩いて密談を終了する。

 いやあ、誠心誠意お願いはしてみるもんだな。

 チャムの紹介状も今回はちゃんとアイツの思惑に沿った使い方をしたし、今度会ったときには喜んでくれるに違いない。


 改めて青馬鹿に向き直るおっさん職員。


「ミ、ミズ・シーディアさん!」


「ど、どうしたの……? 何かすごく顔色が悪いように見えるけど、そこの悪党に何か言われたの?」


「そ、そそんなことはないですよ!? それよりもさっき言った討伐依頼に一般人が付いていくっていう件なんですが……」


「組合的にダメなんでしょ? ならしょうがないわ――」


「この方なら連れていってもオッケーですっ! むしろ連れていく方がオッケーです!!」


 グッと力強く親指を立ててみせるおっさん職員。

 その汗たぎる後ろ姿に、迷いは見られなかった。 


「…………へ? 何で!?」


 先程までとは正反対の意見を受け、理解が追いつかない青馬鹿。

 聞き返したその顔は今までで一番間抜けな表情をしていた。

 

 そんなこんながあって、俺は三馬鹿の討伐依頼に同行することに。


 後日談として、チャムには紹介状を売った時と同じぐらいブチギレられた。


「この美少女のどこが悪逆非道ですかッッ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る