世界の救い方!

 身体が痛い。

 何でだ?

 なんか頰がざらざらするし、体はチクチク。

 これなーんだ。

 

 目を擦ってその正体を見る。

 正解は地面でしたー。


「…………」


 待て、何で俺は地面で寝てるんだ?

 確かいつもと変わらず起きて像を磨いて。


「思い出した……くそっ」


 そうかどっかの世界に送られたのか。

 恐らく救済者が必要な世界に。

 ティーは俺のことを心配してやったんだろうが、要らぬお節介とはこのことだ。


「――! ――――ッ!!」


 横を見れば何の変哲もない直剣が置いてある。

 俺と一緒に送られてきたみたいだがどういうつもりだ?

 剣なんかほとんど使ったことない。


「――――! ――――!!」


 兎にも角にも立ち上がってついでに剣も拾っておく。

 売れば幾ばくかの金にはなるだろう。

 それで酒を買う。

 世界に放り込みさえすれば働くと思ったか。

 甘い、甘いぜ。


「――――!! ――――ッ!!」


 というかさっきからなんかうるさいな。

 ドンドンガンガン鳴ったり何か叫んだり。

 土煙もすごい。

 誰か暴れてたりするのか。


 後ろを振り返る。


 なんか青くてデカイ両生類みたいなのがいた。

 そしてそれに守られるようにして茶髪の少女がいて、周囲の大人とドッカンドッカン。

 めっちゃ暴れてる。


 状況を見るに少女が十数人の不審者に襲われてるらしい。

 近くには少女の物だったと思われる荷車が倒れていた。

 両生類も合わせて善戦しているが、明らかに少女が劣勢。

 不審者の一撃一撃で両生類の身体が削られ、今にも少女に攻撃が届きそうだ。


「ッ!?」


 逃げ道を確認しようとしたのか、後ろを振り向いた少女と目が合う。

 人がいるとは思わなかったようで、驚きと共に大きく開かれる蒼眼。

 争いによって多少乱れていてもわかる程に顔の造形は整っていた。

 まだまだ幼さは残るが。


「そ、そこの方! ちょっと幼気いたいけな美少女に興味はないですか!? 出来れば助けて欲しいんですけども!!」


 少女の声がこちらに向けられる。

 合わせて周囲の大人達もこちらをギロリ。

 一応後ろを確認してみたが誰もいない。

 俺に声をかけているようだ。


 確かに俺は丁度剣を手にしていたし、襲撃者達は統一した黒い服を着ている。 

 導き出されるのは通りすがった何らかの武芸者。

 一か八か助けを求めてみるのは悪くない。


 しかし『幼気な美少女に興味はないか』、か。

 ここは正直に伝えるべきだろう。 


「もっとむっちりした子がタイプだ!」


「この状況でよく普通に返せますね!? じゃ、じゃあお金はどうですか!? いっぱいありますよ!!」


 先に幼気なとか言い出したのはそっちだろうに。

 でもお金は悪くないな。

 クソニート的には金のないむっちりより金のあるぺったん。

 人を助けた金で飲む酒ってのもたまには悪くない。


 そう思って一歩踏み出した時。


 ピコン。


 視界の端にメッセージが出てくる。

 俺の視線は否応無しにその文章へと吸い寄せられた。


 ====================


 【ティーレリアが教える世界の救い方!】


 STEP1:目の前の幼気な少女を助けよう!


 ====================


 よし。

 絶対助けねえ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る