第4章 明らかにされていく状況
第15話 三人の勇ましい教師
三人の教師組が仲良く会話をしながら、横並びに渡り廊下を歩く。
真ん中の
178センチの身長で、やせ形のスマートなモデル体系。
茶髪のウルフカットに、イケイケな爽やかな笑顔、白肌で目がパッチリした美男子。
年齢は40くらいだが、見た目は20代にも見える。
少々、口は悪いが、それなりに腕は立ち、仕事がそれなりにさばける若きホープで、彼自身のファンクラブまである。
そんな彼は一学年担当で、ようするにチャラ男である。
また、右側を歩くのは163センチの小柄な体系な黒の長髪で、灰色のスーツを着こなす人物。
この教師の名前は、
つい最近に入った新米で、35歳になる優男であり、細い瞳をさらに強調させた度の強い黒ぶち眼鏡をかけている。
体は痩せていて貧相で小さいうえにオドオドしているせいか、よく生徒からいじられるが決めるときは決める教師。
生徒からの応対は、不器用な青春男子による愛情表現と前向きに捉えている。
こちらは二学年担当である。
……以上、この三人組デコボコトリオな大人の男性が、この『ヨスガの高等学園』の教師達である。
****
三人は二階の音楽室に向かっていた。
今から職員会議があると、石垣教師があの三人の生徒にそう言っていたが、ここに来て何をやるのだろうか。
もしや会議は嘘で、早くも今年の忘年会に向け、教師達にも合唱コンクールがあり、今まさに練習の真っ最中とか……。
──音楽室は相変わらず暗い。
もう夕方の5時前とくればなおさらだ。
しばらくして、石垣が手のひらサイズの緑の棒状の懐中電灯で周囲を照らす。
残りの二人も、いつの間にか携帯ライトをつけていた。
──奥にある黒塗りのピアノの前で三人が立ち止まる。
「さてと……」
そのピアノのある床に中腰の姿勢で、
がさごそと石垣が開いた左手で床の書類をはらう。
すると、はらった床から、隠れて錆びついているたたみ半畳サイズの鉄の扉が姿を現した。
石垣がその扉のとってを握り、軽々と上へと引き上げると、開いた口から薄汚れた灰色のコンクリートの階段が出てくる。
どうやらこの床を覆いつくす紙の山は、この階段を隠すためだったようだ。
まさに木を隠すなら森の中である。
「じゃあ、ちゃっちゃと行こうぜ。
志摩ちゃん、導ちゃん」
沖縄が前にしゃしゃり出て、二人を手招きする。
その右手には色とりどりの鮮やかな指輪達がはめてある。
中指に紅いルビー、薬指には5カラットのダイヤ、小指には茶形の琥珀であり、
どうやら、それなりの暮らしを満喫しているようだ。
「お前、ワシより年下なのに相変わらずじゃな。
ワシに対して、ちゃんづけはなかろう」
「そうですよ。
私は、ともかく石垣さんは大先輩ですよ」
石垣と北開が文句を言いながら階段を降りているが、二人の顔は笑っていた。
どうやら沖縄の、この生意気な口調は日常茶飯事らしい。
「いや、俺ら長い付き合いじゃん。
あだ名で呼ばれるよりマシっしょ」
「ほう、例えばどんなあだ名じゃ?」
「志摩ちゃんは石頭焼き芋、導ちゃんは線香花火のようなイメージだからさ……」
『カチッカチッ……』
「……沖縄、ここは禁煙じゃ」
「ちっ、悪いな。ちと考えを回すために必要だったからさ」
しぶしぶ、口に加えていた煙草と青く半透明なライターを胸ポケットにしまう。
「それで、あだ名は、ほかやんと……」
……と、石垣を名指しする沖縄。
「ひょろ吉」
……続いて、北開に人差し指の標準を合わせる。
……その
『ボカーン!!』
「あがっ!?」
石垣による強烈なゲンコツが沖縄の頭にクリーンヒットする。
「お前は、そんなつまらんことを考える暇があれば、もっと仕事に生かせ」
「痛いな。志摩ちゃん。俺はいつも真面目だぜ……」
「だったら、その
赤く腫れ上がった頭をさする沖縄。
「沖縄さん、バチが当たりましたね」
「導ちゃん、俺、志摩ちゃんからパワハラ受けてるのに知らんぷりか?」
「いえ、自業自得ですよ」
「導ちゃんまでもパワハラかよ?
学年担当が一番下の俺をいじめてそんなに楽しいか?」
「ワシは楽しいぞ!!」
「うわっ!?」
そこへ、石垣が今日最凶な微笑みで沖縄に顔を近づける。
その気迫にビクリと身の危険を感じとる沖縄。
「案ずるな、冗談じゃよ」
──そうやって三人は時にじゃれあい、ふざけながら、コンクリートの石畳の階段を下り終わると、5メートルほどの高い天井に、平坦な土色の地下道が遥か先までのびている。
歩くごとにたまに、天井から地下水による水滴の粒が落ち、その三人が歩く砂利の地面を湿らしていた。
また、ここまで来ると安全のために天井に蛍光灯が2メートル間隔についており、
それに対して目が慣れてきた三人の教師達は手に持っていたライトをしまった。
****
それから歩くこと、10分後……。
目の前に巨大な土色の壁が姿を見せる。
どうやら、ここで行き止まりのようだ。
ここまで別れ道はなく、ひたすら一本道だったが……。
そこへ、石垣が迷わずに、その壁に手を触れると……、
『指紋認証確認。
ヨスガの高等学園、
三学年教師、石垣志摩。
これより先への東京大学院への通行を許可します』
機械的な女性の音声が響き、その土壁が左側へとスライドして消えてゆく。
その先からは洞窟ではなく、正四角形の広さに青緑色の背景となり、2メートルくらいの低めな天井の床や壁などに様々な太さの電飾の配線が絡みついている異色な光景が続いていた。
まるで巨大なロボットの内部、または、人類の神秘的な体内を探索するかのようである。
「いつ来ても、ここは慣れないな……」
所々からはみ出している紅いケーブルに軽く触りながら呟く沖縄。
「あの学園は昭和時代からの古風な作りですからね。
この機械的な風景が現実の建物ですから」
北開が青いケーブルさえもいじる沖縄の手を『勝手に触ったら駄目ですよ……』と小声で注意して、眼鏡のふちを押さえる。
「まあ、プロジェクトKならしょうがないな」
「……以外と皆、聞き分けがいいからのぉ」
「ちょっと、その話は極秘事項ですよ。
あの方にバレたらおおごとですから」
北開が厳しく指摘していると、一気に目の前が開け、天井が見えないほどの広々とした縦穴の空洞に出る。
上空には見覚えのあるミリタリー色の輸送機や小型のヘリが飛び交い、それらの運転は誰かしらの遠隔操作により、人形のロボットが操縦していた。
さらに奥へ進むと、その地下には大きな青白い色のビルが高くそびえたっていた。
そのビルの周りには、不法侵入などを防ぐためか、2メートルほどの黒の壁の上に高圧電流が流れる有刺鉄線が張り巡らされている。
そんな壁沿いをつたい歩きながら、三人が歩く先にあった黒い登下校門となる左側の壁の表札には『東京大学院』と書かれている。
この学校機関が過去に噂されていた日本最高峰の実績を誇った大学だが、その目立った学園は過去の第三次世界大戦で東朝鮮の核ミサイル攻撃により、真っ先に滅びた。
学園で余計な知恵や情報を吹き込まれ、隣接にする北アメリコと一緒になり、日本が軍事力を復活させて、東朝鮮に牙を剥くかも知れないと恐れたからだ。
そのうえに、学園だけでなく、国会議事堂や軍の研究所までも大破。
日本はその教訓を活かして、地上での活動は困難である事を悟り、今では地下に根づく巨大な軍事施設となったのだ。
それが、この東京大学院である。
──石垣が黒の電子ゲートが閉ざされた前で胸ポケットから先ほどの小型ライトを取り出す。
その光をゲートの左側の壁にある赤外線モニター付きのインターホンの小型カメラに照らした。
『状況確認。
石垣志摩教師からの光源商品を認知しました。
続いて、こちらに浮かびます数式ボタンから、4桁の暗証番号を入力して下さい』
「ほいっ」
『ピッピッピッピッ!』
淡々とした女性アナウンスの音声の手元の空中に数字のキーボードが出現して、それに素早く番号を入力する石垣。
『了解いたしました。石垣志摩教師からのすべての認証を確認。
ただいまから、数秒後に一時的にキーロックを解除。
側の電子ゲートを開きます』
『ガラガラガラ……』
「いやあ、志摩ちゃんと来ると、本当、ここの手続きが楽だな」
「そうですね。私や沖縄さんだと身分証があっても、中々通してくれませんからね……」
「やっぱ、三学年は違うな。そんだけ信頼されてるって事か」
「そうですね。あと、何十年もあの学園の教師をやっていますからね……」
「……おい、お前ら、立ち話もいいが、早くしないとゲートが閉まるぞい」
「しまった、やべやべ。話に夢中だった。急ぐぞ、導ちゃん」
「はいっ」
会話に夢中で、その場にとり残されていた二人の教師は、急いで校門を抜けて、石垣と合流するのだった……。
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