第9話 パーティーの夜に

パーティーは学園の広間で始まった。

あの断罪イベントが行われた場所だ。

あたしにとっては始まりの場所

かなり懐かしく感じる。


エスコートは渋谷さんに頼んだ。

渋谷さんは一応貴族ではあるが辺境にある領地のしかも男爵それに加えて五男らしく、社交界デビュー時の一度だけしかパーティーに出たことがないらしい。なのでガチガチに緊張している。

燕尾服姿は新鮮だ。特注したはずなのにかなりはち切れそうなのには尊さを感じえない。


あたしの為のパーティーだから入場は最後となる。


会場には見覚えがある生徒や教師、エリザベス、そしてエリザベスをエスコートしているジョセフが居た。あれから当人や関係者との話し合いで婚約者に戻ったらしい。但し今回は(仮)の状態でエリザベスが決めていいらしい。グッジョブパパス&エリザベス!


そしてダンスが始まった。

一曲目はエスコートした相手と踊るのがルールらしい。個人的に渋谷さんの大胸筋に触り放題なのは役得だ。ハァハァっ…いやいやしませんよ。できうる限り平静を装いましたよ。タイプですけどね、逆セクハラは良くないです。


役得タイムを終え、料理の方に一直線で向かっていたらあたしの目の前をジョセフが塞いだ。そしてダンスを申し込んできた。

本当にタイミングの悪い奴だ。


だがジョセフにダンスを申し込まれて断れる筈がない。こちらも今は(仮)らしいが皇太子である。

謹んでお受けした。



「…すまなかった。気持ちを押し付けて…」

ジョセフとダンスを踊っているが、目が合うことはなかった。

「…いいえ、勘違いされる言動を取ったのはアナスタシアですし…」

「…?…ふふっ、相変わらず変わっただ…」

ジョセフは宝物を扱う様にそっと乱れていたあたしの髪の毛を直した。


「…ありがとう。キミに出逢えたこと、キミを好きになったことは私にとってかけがえのない出来事だった。しかもキミは決闘で私 の間違いを正してくれた。アナスタシア、キミは本当に…最愛の友だ」


「…その言葉が最大の宝です!ジョセフ様」

あたしは記憶のアナスタシアを辿り真似てみた。

ジョセフが好きになったのはあたしではなくアナスタシアだから。少しの罪悪感を拭うようにアナスタシアを装った。

ほんの少し吐き気がしたのはドレスのせいだろう…


その後パーティーは滞りなく進んだ。

後半疲れたこともありテラスへ出るとエリザベスに声をかけられた。


「人払いしております。ゆっくり休んで下さい」

そう言いながら自らの手で椅子を運んで来てくれた。

なんて気が利く子なのっ!!!個人的に大好き!!!いい子だよエリザベス!


エリザベスは微笑むと出ていってしまった。

あたしはエリザベスと話したかったなーなんて思っていると、リアーナがジャケットを脱いだ渋谷さんを引きずるように連れてきた!

本当にパツパツだ!眼福です!


リアーナは何処からか対になる椅子や机を持ってくるとテーブルにお菓子をセッティングして親指を立てるとエリザベスのように出ていった。


あぁ、二人は確信犯だったのね。


渋谷さんは牢で優しくしてくれた恩人かつタイプドストライクだ!けどね、別にどーこーなりたいとか思ってないんだけどなー


気を使ってくれたのは嬉しいが少しベクトルがずれている。


とりあえず用意された紅茶やお菓子を食べながら他愛もない話をする。

するとテラスから見えていた空から数多の流星が瞬いた。


「うわー!!」

「今日は星降りの日だったのか…お嬢さん願いは決まったか?」


「うん…あたしの願いはっ…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る