第6話 運命の日
「お嬢さん応援してるぜ」
「アナスタシア様は筋がよろしいので大丈夫ですわ」
あたしは二人の仲間に見送られ、牢を出た。向かうは学園の敷地内ではなく、王城だ。
待ってろジョセフ!!待っててねエリザベス!!
あたしはこのストーリーを自分の思うハッピーエンドにしてみせる!!!
頭の中でロッキーのテーマが流れている。
生卵一気飲みしたい気分だ。
馬車に乗り込みいざ出陣!!
王城の大広間では王様やジョセフ王子といった王族や公爵といった身分の高い人たちが一堂に会していた。
そこには伏せ目がちなエリザベスも居た。
大きな扉が開いた。そしてあたしは決して下を向くことなく、出来うる限り凛と絨毯の上を進み、王様であろう人の前まで行き膝まづいた。
「そなたがアナスタシアか?皆の話ではジョセフとエリザベスの仲を引き裂き、あまつさえジョセフに気のある素振りをしておきながら暴力を振るった女は」
カチンときたが、概ね事実であるので反論出来ない。
「…はいっ、それは事実にございます」
「…王族に手をあげるということの意味を理解しているのか?」
フィンという音が鳴った。
何だまだ機能してたのか?
また三択が出てきて世界は止まった。
①どんな極刑でも覚悟しております
②命だけはっ…
③私はジョセフ様を愛しているのです!
違う台詞を言おうと口を開けるが、声は出ない。身体もピクピク動く程度だ。
何たる腹立たしさだ!あたしは選択肢で生きてる訳ではない!
あたしの意思を伝えたいのだ!
あたしはあたしで居たいの!!!
ヒロインなんてくそ食らえ!!!!!!!
バッ
っと、あたしはあるものをジョセフに投げつけた。
右手に着けていた白の手袋だ。
やはり選択肢に逆らったからか息が上手く出来ない。肩で息をしている。苦しい。
「…気のある、素振りに…見えたかも知れない…本当にごめん。だけど、貴方の側には…貴方を本当に愛してる人が居る!それを分かって欲しい!っ…だから勝負してっ!!!」
ザワザワ
令嬢が何たる言葉遣いだ
王の御前で不敬だ
極刑だ!
そんな罵詈雑言の中、エリザベスだけはあたしを庇う発言をしていた。
エリザベスの言葉は掻き消される。
良く聞こえなかったが庇ってくれているのは伝わった。ありがとう。あたしは頑張れる。
「アナスタシア…手袋を投げるのは決闘の申し込みだとわかっているのか?」
ジョセフは切なげにアナスタシアを見つめた。
「…えぇ、命をかけることもっ…わかっています…」
「そうか」
そういうとジョセフは手袋を拾い王様と言葉を交わして剣を用意した。
「伝統的にこれの勝負でいいか?」
ジョセフの視線が哀愁漂う。ジョセフは彼なりにアナスタシアを愛してくれていた。
だが正直アナスタシアの記憶を思い出していると、ジョセフに対する感情は下町に住んでいた頃の近所の友達感覚であったのだ…
でもきっとあたしがアナスタシアと同期しなければ二人は結ばれてめでたしめでたしだった気がする…
申し訳ない気持ちはほんの少しだけあるのだ。
「ジョセフ様がっ…お望みのままにっ…」
「…ではこれで…約束しよう。キミ意外は絶対に傷つけないことを」
ごくりと喉が鳴った。
死刑を王子から宣告されたのと同じ意味だろう。
手の震えが止まらない。
でも覚醒した後に王子を殴り飛ばしてしまった。そのつけを払わなければいけないのだ。それが今なのである。
「ありがとう、ございます…」
「いけないわ!アナスタシア!!!お父様!!何とか言ってくださいませ!」
エリザベスは隣に立つダンディな人にしがみつく。その男性は人差し指を一本立ててエリザベスの唇にちょんと触れた。
そして微笑んでいた。
…その人サイコパスなのかもとそちらに気をとられそうになりつつ、深く深呼吸して息を整え、周りに促されるまま剣を抜いた。
決闘になることが予め決まっていたかのように周りは着々と準備が整い、審判的な人まで出てきた。
「ではこれよりっジョセフ皇太子殿下とアナスタシアの決闘を執り行う!」
そう高らかに宣言されると大広間のは歓喜に湧いた。
※この乙女ゲー世界では女性だからといって代理人は立てないようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます