第5話 思い付きと朝ごはん
「そうだっ!!王子をぶっ飛ばそう!」
「…オレは何も聞いてないオレは聞いてないっ」
翌朝腫れぼったい目を開けると思い立ち言葉を発した。
鉄格子を両手で握り揺さぶる。ガシャンガシャンと音が鳴る。
「そろそろ出してよ!渋谷さん!」
牢屋の警備なんてそうあることではないからか、渋谷さんは甲冑を着たまま当直だった。
「同情はするが、それは出来ないんだよな。早く出られるといいな」
そう言いながら眠い目を指先で擦り渋谷さんは側に来てくれた。
どっ…どっきーーーん
ヤバいです。渋谷さん昨日は暗くて良く見えなかったけど、かなりタイプです!!
完全に全盛期の力道山より強そう(な、お顔)です!!!
「渋谷さん!奥さん居ますか?」
「…朝から嫌味かい?お嬢さん」
そんな会話を遮るように陽気な少女の声が聞こえてきた。
「ご起床になりましたか?アナスタシア様」
ツインテール少女が駆け下りてくる。
その手には少女と同じくらい大きな銀色のお盆を持ってきていた。
お盆にはこれでもかと言うほどぎゅうぎゅうに美味しそうな食べ物が並んでいた。
「エリザベス様から給仕を承りました。メイドのリアーナと申します。どうぞ何なりとお申し付け下さいっ」
リアーナは元気はつらつな声で挨拶を済ませると食事をやり取りするために造られている地面との狭い隙間を訝しげに見ると、ため息をついた。
「エリザベス様の大切な方に床に付いた食べ物を食べさせるおつもりですか?」
何故か牢屋の気温がグッと下がる感覚を覚えた。次の瞬間シュパンと風を切る音がした。
か、と思えば、リアーナは牢の中に居た。
「えっ?えっ?」全く理解が出来ずに立ち尽くす。
渋谷さんは言葉にしないが目をパチパチさせている。
その間にリアーナは涼しい顔で着々とテーブルセッティングしていく。
「さぁ!朝ごはんが冷めてしまいますわ!アナスタシア様召し上がって下さいませ」
良く見ると鉄格子が一本折れていた…
「リアーナさん、弟子にして下さい!」
あたしは物凄く人に恵まれたのかもしれない。
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