第4話 等身大のあの子と渋谷さん

「ごめんなさい…本来投獄されるのはわたくしだったのに」

「いえいえ、何か渋谷さんの話聞いていたら私の方が悪役令嬢に見えてた所だったんですよ」

「お嬢さんシブタニさんってオレのことかい?」

しまった。また声に出したと思ってしまったが訂正するのも手間なので「あたしのお国で優しい人を渋谷さんと呼ぶのです」と言うと「そうか」と短く返事をして、そっと部屋の端に行ってくれた。渋谷さんの気遣いがイケメンすぎる。


エリザベスはあたしの言っていることが良く分からないという顔をしていた。

それにもしまったと思い、何から切り出そうかと考えていたらエリザベスから話始めてくれた。


「…私の独り語りなのですが…私は生まれながらにジョセフ様と結婚すると決められていたのです。私は国母になるため全てのことを努力してきたのです。」

エリザベスは一度上を向いて大きく息を吐いて話を続けた。

「私はジョセフ様自身のこともお慕いしてきました。銀色の髪も碧の瞳も私には愛しい宝物のように想っていて、ジョセフ様にも同じように想っていただけると…そう信じて疑わなかったのです。なのでっ…なのでジョセフ様が素敵な笑顔を見せるのが、私の側でなく…貴女の側であったのが…悔しくて…嫉妬をしていたのです」


絞り出す声にこっちが泣きそうになった。


「あたしは平気なので!もう気にしないで下さい!」

「いいえ!そういう訳にはいきません。私が貴女を階段から突き落としたのは事実なのです。あれは完全に私の落ち度なのです。ジョセフ様に断罪されたのは仕方のないことなのです…本当に申し訳ありませんでした」

エリザベスは頭を深く下げた。金色の髪がランタンの光に揺れる。


あたしは思わず鉄格子越しに両手を伸ばしていた。


「気付けなくてごめん!!プレッシャーやその想いに気付けたチャンスはアナスタシアに沢山あったはずなのにっ!!」


鉄格子越しに抱き締められたエリザベスはランタンを落とし膝から崩れ落ちた。


「ごめ゛んな゛ざいーわたくしっわたくしっ…」

「分かってるわかったから大丈夫だからっ」


公爵令嬢エリザベスは本当はただの16才の少女で等身大の彼女は思っていたよりずっと華奢だった。


渋谷さんは鼻を啜りながらそっとランタンを立てて元の場所へ足音を立てないように戻っていった。

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