第16話 核戦争勃発
紀元前2029年、西の地区からマルドックの信者集団がシュメールに侵入し、全メソポタミアを席巻した。紀元前2034年、マルドックが姿を現し、全メソポタミアの支配を宣言した。
直ちに、エンリル派アナンヌキがマルドックに対して戦線布告、また、エンキ派の反マルドック勢力もマルドックに対して宣戦を布告した。
マルドックは、ほとんどすべてのアナンヌキを敵にまわしてしまった。
マルドックを征討するために「偉大なるアナンヌキ協議会」が開かれて、
マルドックに対する[七つの恐怖の武器(核兵器)]の使用を許可した。
核兵器による被害を最小限にとどめるために、攻撃対象をマルドックの勢力基盤であるカナンの諸都市とマルドックの征服目標であるティムルンの宇宙港のみに限定した。反逆児マルドックの殺害も禁じられ、無関係な人類を巻き込むことも厳禁とされた。
エンリル派・エンキ派連合軍はマルドックを信奉するカナンの諸都市(ソドム、ゴモラなど)に核攻撃を加えた。核攻撃の様子は[旧約聖書]にも記録がある。
カナンの諸都市とは、旧約聖書で言う、ソドムとゴモラである。
主は、ソドムとゴモラの上に、天から、主のもとから、硫黄の火を降らせ
これらの街と低地一帯を、町の住民,地の草木もろとも滅ぼした、
神⦅アナンヌキ⦆は核兵器を使用して、すべてを滅ぼしたのだ。
爆発によって生じた熱線がすべてを焼き尽くし、放射能が辺り一帯を汚染したために、住民、草木もろとも滅ぼされた。
さらに、連合軍はティムルンの宇宙港を核兵器で破壊した。
宇宙港はアナンヌキの生命線であり、これを支配するものは地球の派遣を握ることになる。マルドックの手に渡すわけにはいかない。
アナンヌキの野心の的であった宇宙港は破壊された。
山の内部に設えた管制塔は薙ぎ払われ、巨大な石床(プラットホ-ム)は瓦礫と化して、滑走路はただの荒地となった。草も木も生えぬ大地には、もはや、宇宙港の痕跡すらも残されていなかった。
⦅死の灰によって滅びたシュメール文明⦆
4000年後の現在でも残留放射能が検出されるという。
1920年代、ヴァチカンの教皇聖書協会が発掘調査隊を組織し、死海周辺地域に派遣した。そこはマルドックを信奉するカナンの諸都市があったところである。
調査によると、死海周辺地域の諸都市は紀元前2000年頃放棄され、以後、再入植する部族はなかった。
死海周辺の土壌や泉から、未だに、動物の生殖能力を失わせるに足りる程の、強力な残留放射能が検出された。カナンの諸都市に対する攻撃が、いかに大規模のものであったかを示す証拠と言える。
それにしても、未だに強力な残留放射能が検出されるとは、どれほど、すざましい核攻撃だったのであろうか……。宇宙港を破壊した核兵器の痕跡がシナイ半島に
残されていた。核兵器が地面をえぐった傷跡は、あまりに大きな傷跡だったため、宇宙空間からしか観察できないほどのものであったという。
傷跡の周辺には黒い傷跡が広がって、黒いテクタイトという小石で表面が埋めつくされていた。テクタイトとは高温で溶けた岩石が、急激に冷えて生成した鉱物であるという。この場所に、なぜ、このようにテクタイトが散らばっているのか、現代科学は納得のいく説明をすることができない。自然に生成したとは考えられない。この場所に、巨大な核兵器が投下されたとしか考えられないというのである。
メソポタミアの古文書によれば、シュメール文明は(災いの雲)によって滅びた。七つの恐怖の武器が放たれて、閃光が生じ、その閃光が災いの雲を生み出したと。災いの雲は風に乗って東へと流れ,町から町へ災いを振りまいていったと。
これはまさに、核爆発と、それによって生じた死の灰を描写したものであろう。
災いの雲=死の灰は、シュメールを滅ぼし、その放射能は水と土壌を汚染した。
そこに生命が復活するまでに、およそ7年間を要したという。
シュメール文明の滅亡は謎とされているが、シュメール文明を滅ぼしたのは天災ではない──大規模な人災が、シュメール文明を滅ぼしたのである。核攻撃の恐ろしさは、その威力が熱線と爆風のみにとどまらない。核爆発の瞬間に全てが終わるわけではないのだ──核爆発で生じた放射能による被害が後々まで
続くのである。
かくして、人類最古のシュメール文明は滅亡した。
シュメール文明は、ニビルのアナンヌキによって与えられ、そのアナンヌキによって、滅ぼされたのだ。
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