第14話 大洪水
人類は極めて原始的な状態に留まっていた。
エンリルが農園エディンの人類を追放したために、人類は地球全体に分布していたが、農耕も牧畜も知らず、自然物を採集して生活していた。
そのために、今から20万年前に氷河期に入ると人類は激減した。
エンキは人類の救済策を講じようとしたが、エンリルの妨害にあって実現しなかった。
今から、1万300年前に異変は起こった。
惑星ニビルが太陽系内に戻ってきたときのことであった。地球を監視している宇宙ステーションから、飛球の極地帯の氷冠が不安定な状態になっているとの報告がもたらされた。どうやら、惑星ニヒルの引力が地球に影響を及ぼしているらしい
このままニビルが接近すれば、南極の氷冠はバランスを失って崩壊し、巨大な氷塊が南極海になだれ込むと予想された。そうなれば、世界中の陸地に向かって大津波が襲いかかり、地球が水で覆われてしまう。人類を始め、地球上の生物が、
大打撃を受けることが明らかであった。
エンリルは、この異変を人類に知らせてはならぬと厳命を発した。
彼は人類を滅亡させるチャンスをうかがっていた。エンリルにとって、人類は、
エンキの手勢でしかなかった。便利な労働力ではあったが、軍事力にもなりうる、大きな脅威だったのである。また、アナンウキの男性と人類の女性が結婚する例が急増しているのもエンリルには耐え難いことだった。アナンヌキと人類の間に生まれた子供は、半神半人として人類に君臨したから、アナンヌキにとっては既得権益を侵されることになっていた。
大洪水が起こると、アナンウキたちは、ルクブ・イラニ(神々の戦車)に乗って
上空に避難した。そして、地上の動物たちが次々に滅びていくさまを、息を呑んで
見守ったであろう。まさに、大洪水によって地上の動植物が払拭されたのである。
しかし、エンキは、ジウスードラ(聖書にノアとある)という人間に命じて、
潜航艇を作らせて、動植物の保存を図ったのである。
シュメールの古文書によれば、大洪水は、アナンウキが地球上に40万年以上かけて構築してきた文明を破壊してしまった。現存する大洪水以前の建造物といえば、
レバノンのパールベクの石床くらいで、全ては大洪水の汚泥の下に沈んでしまったといわれる。
生命の進化については、現代科学でも完全には解明できていないが、
シュメールの古文書の言うようにアナンヌキの介在を考慮に入れれば、説明できるのだ。大洪水が発生したとき、エンキはジウスードラに命じて地球上のありとあらゆる生物のDNAを保存させたが、大洪水の後、アナンヌキの高度な科学力によって、DNAからすべての生物が再生された。
現存する生物の殆どは一種の人工種であるために、進化段階を明確に示すことができなくなっていると言えるのである。
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