桃扇、感ず。

「桃扇、いる?」


桜夜は、神妙な面持ちでこえをかける。

その仕草は他人からすればおかしな行為。

しかし彼女は気にしない。


【ここにいる。我を疑ったか?】


「なにが?疑ってなんてないわ。」


それから桃扇の前にたつ。


「私はいまからcounterをしに行くのよ。」


発音のよい英語で。ただ、意味は日本語で。


「ちょっと?華媛さん。そんなところで独り言呟いてないで早く来てくれない?」


「低俗なばかどもが。黙りなさい。云われずとも行ってあげるから。」


低温の響き。桜夜は声のトーンひとつで圧をかけておく。

相手の呼吸が乱れる。


「早く案内しなさい。」


「わかって、るわよ!!!」


相手、柿崎悠香は苛立ちを隠さぬ顔で睨む。


「解っているのなら早く案内しなさい。」 


尚も低温でこれ以上喚くなと伝える。


【おい、そなた。こやつ、なにか隠しておるぞ。】


「解っていてよ、桃扇。でもね。こんな雑魚、私にかなうはずがないわ。」


その言葉、柿崎のみみにはいった。苛立ちを抑え、抑え、抑え、抑え、抑え、。柿崎は足を早めた。 


友桜ゆうささま。」


「悠香!連れてきてくれたの?」


柿崎は重々しくうなずく。


「友桜さまは我らの主。主の命は絶対ですので。」


「ふふっ!あなたって、ほんといいこね。」


友桜ゆうさ桜夜さよを連れてくるよう命じた。


悠香はゆっくりと友桜の前へ桜夜を連れてくる。けしてかってに顔をあげないように。


「ふぅーーー。あんたが、山之内友桜?」


「・・・。黙りなさいな、小娘。友桜様でしょう?」


にたり、と笑い桜夜を見下ろす。

その笑みはまやかしの笑み。油断させるための凶刃。そう、これが宴の始まりかと桃扇は感ず。そう、血の宴の・・・




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