第7話 虹の素
人は息を吐くように嘘をつく
保身のため
大切な誰かを
大切な何かを守るため
己を見捨てついた嘘
自分がかわいいためについた嘘
嘘発見器を誰もが持っているなら人は嘘をつかないだろうな
眩しい空が苦手だった
差別なく人を照り付ける光が
誰が作ったのかわからないメロディーが鳴り響いて
私たちより少し早く生まれただけの大人が
世界のことを知り尽くしたようにしたり顔で腕を組む
黒板にこすりつけられるチョークの無機質な音
中途半端な厚さの冊子を棒読みする教師
物事を学ぶ理由を質問してもオブラートに包みこみすぎた言葉が返って来るだけ
本音を言って見放されるなら相手の望む言葉だけを言えばいいと
自転を繰り返す星の上で学び、賢くなった人が
顔色を伺いながらなるべく傷つかないようにバリアを張っていることに
「早く気づいて」と小さく悲鳴を上げている
それでも小さくしか悲鳴を上げられない弱い自分に腹を立て、絶望し、
けれども眠り目が覚めるとまた同じ時間を繰り返す。
そんな、『平凡』という言葉にうまく騙されている愚かな生き物。
四つ葉のクローバー
雨上がりの虹
雲の隙間からこぼれる日差し
稀な自然現象は幸福を与えると先人たちは言うけれど
その裏にある不幸を考えたことはあるのだろうか
四つ葉のクローバーは葉が芽吹いたその瞬間に傷つけられたことによってできるもの
虹は空気中の水蒸気に光が差し込むことで見えることができるもの
直前に降り注いだ雨が、街を沈めているかもしれないのに
誰かが笑うとき、必ず誰かが泣いている
それによって世界のバランスは保たれている
恐ろしいほど真っ赤な夕日を見つめながら、その人は言った
必然なのだ、と諦めたように
金属バットがボールを跳ね返す音を遠くに聞きながら
僕はうなずくしかなかった
幸福だと思う瞬間、必ず誰かに不幸が降りかかっている
もし世界中の人間が争うことなく仲良く暮らしていたのなら
やく70億人を擁するこの星はどんな変化を遂げていただろう
今よりもっと極悪非道なものが生まれていたかもしれない
僕にはわからない
わかりたくもない
バランスを保とうとする世界の原理と真実は
きっと知らないほうが『幸せ』だ
生きる生きている @azami0518
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