第6話 四季降る塔
春
世の人は恋の始まりだとか新生活の幕開けだとか
どうでもいいことで舞い上がる季節。
ピンク、紫、黄色、オレンジ、白、赤、緑
目が眩みそうになるほど色とりどりな花壇の前で、
人は何を思うのだろう。
過去を振り返るか
未来へのビジョンに胸躍らせるか
止まらない日々に絶望するか
駅や交差点は相変わらずモノクロの服を着た人たちで溢れかえる。
夏
7日間という短い命を授かった生き物が
生きていた証拠を刻もうと必死で声を上げる
こんがりと焼けた肌をむき出しにして駆け回る少年。
肌の白さを保つために灼熱の中やせ我慢するOL
裸同然のような格好で水に飛び込む女子高生
服を泥だらけにして時間のすべてをささげる男子高校生
涼しい部屋に引きこもり周りの期待に応えようと己を犠牲にする受験生
新しい元号を迎えたこの時代には
必死に声を上げる生き物に興味を示す人なんて少ないかもしれない。
秋
紫外線を浴びてツヤツヤと育った緑の葉は
抗うことなく変化を受け入れる。
根から吸収された栄養が隅々まで行き届かなくなり朽ちる準備を始める
人々はその変化をテレビの画面越しに眺める
タンスの奥から服を引っ張り出し、贔屓されてきた服が奥へと追いやられる。
赤や黄色に変わった葉を眺めながら
いいね稼ぎのためにシャッターを切る
肉眼で色を楽しまずに、スマホのレンズ越しからの景色だけを愛でる
冬
花々の朽ちる季節
閑散とし始める並木通り
身を丸くして早足に移動する人々
汚れ無き純白が黒ずんだ街を覆っていく
満天の星空を見上げる人は少なく
また小さな星が静かに姿を消す
くだらない境目で異常なまで騒ぎ立て軽蔑を食らう
煌めく街を一人で通り過ぎる者
腕を絡ませて通り過ぎる者
間に挟まれ安心してプレゼントを抱きかかえる子供
大雑把に4つに分けられた季節
いつだって人間を苦しめるのは人間だ
お互いを貶し合い傷つけ合い自らの手で首を絞める
愚かな人間どもよ
何度同じ過ちを繰り返せば痛みを知るのだろうか
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