第13話 骸(ムクロ)

「クソッ!」



悪態を付きながら、俺は急いでステータス画面を進め、倒れている仲間の回復を始めた。

ゴブリやボルは、既に絶命しているので、再召喚

ミノタとカターシャの二名は、辛うじて息があったので、この部屋を回復ポイントとして、二人の回復を待った。

そして、アルファなのだが、驚いたことにアルファはほとんど無事であった。


いや、無事なように見えているだけだ。

このままこの部屋にいれば、間違いなくすぐに元気になってくれる。

だがーーーーー



俺は、ほぼ自動で伝えられるダンジョン内の感覚により、激しいヒリヒリとした痛みが、もう既に大広間のすぐ近くの通路まで侵食してきているのをしっかり感じていた。


間違いなく、オーガは大広間手前にいる。





【マスタァ、敵は、かなり進んでる。

もうじき、来る。

急いで二人、向かわせる。】




久しぶりの片言に、俺はアルファもかなりのダメージを負っていることを感じとることができた。

いくつか用意した罠も突破してしまっているようだ。


恐らく、もうじき大広間に侵入してくるだろう。



念のため、ゴブリとボルの二名を送り出したが、果たしてどこまで耐えてくれるか。


急いでミノタとカターシャを回復させないと、詰みだ。


そんなことを考えていたのだが、事態はやはり最悪の方向へ進むのが常なのかもしれない。


フロアの奥、恐らく大部屋の向こうから、かなり大きな雄叫びが聞こえてきた。

オーガのもので間違いないだろうが、すぐに事態の悪化が感覚として伝わってきた。


なんと、大部屋の壁から、先ほどよりは弱いが、ヒリヒリとした痛みを感じ始めたのだ。


視点を動かそうにも、回復状態では視点をこの部屋以外に移すことはできない。


だが、こんな感覚が伝わってくる時点で、二人は無事ではすまない。

ステータスを開くことはできるので、開いて確認してみたが、やはり二人の名前が瀕死の状態を示していた。

反面、ミノタとカターシャはだいたい半分くらいは回復ができている様子だが、二人を回復ないし再召喚するには、回復を一度やめなければならない。

それに、また二人を出してもやられてしまう確率がかなり高い。


相手は、炎を瞬時に部屋中に蔓延させるほど強力である。


アルファを向かわせるか?

いや、アルファがやられれば、今度こそ打つ手がない。

それに、アルファはまだ甦生を試したことがない。

ゴブリやボルのように、普通に召喚できるか怪しい。


だが、迷っているいまこのときも、オーガがこちらに近づいているのは明らか。


・・・どうする。

俺は、この状況でどう対処してやれば最善だ?


なにか俺にできることはあるか?

他のものにできることはなんだ?

考えろ、考えろ、考えろ。




【マスタァ、落ち着いて。

私がいます。

信じてください。】




・・・アルファ

確かに、お前なら全力で時間を稼いでくれるだろう。

強くもなっている。


だが、しかしーーーーー



俺は、必死に考えたが、結局それしかないのかと奥歯を噛み締めてしまいたくなった。


俺は、叫びたかった。

じぶんの無力さを

じぶんの不甲斐なさを




だが、そんなことを主張していい時間は、とっくに過ぎてしまっていた。



おれは、曲がりなりにもこのダンジョンの主

俺のために、力を尽くしてくれた奴らがいる。

俺のために、力になってくれる奴らがいるのだ。



そいつらの気持ちを、俺は踏みにじるのか?




【マスタァ、大丈夫。

アルファ、考えがあります。

絶対、帰ってきます。

回復に、集中。

・・・信じて】




俺の葛藤を見抜くようなアルファの言葉に、俺は何を言える?


・・・なぜ、彼女はいつも、俺の気持ちを汲んでくる?

声なんて聞こえないはずなのに

考えなんて、読み取れないはずなのに


どうして、こいつは

俺の、俺の言いたいことが、わかるんだ?


俺に身体があれば、きっと涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていただろう。


俺に言えるのは、もうこの言葉以外残されていない。

おれは、アルファを視界の中央に写しながら、絞り出すように声を出した。




「アルファ、ミノタとカターシャがいくまで、足止めをしてこい。


・・・信じてるぞ。」


【・・・了解です、マスタァ。】




俺の言葉を聞いたアルファは、短くそういうと、いつものように弾丸のような早さで、部屋を出ていった。


そして、残されたおれは、回復に専念するために、ダンジョンないの感覚も遮断し、全神経を回復へと向けた。


いそげ、いそげ、いそげ

一分、一秒、一瞬でも。


二人を回復させるのだ

ミノタがいれば、怪力と持久力で

カターシャがいれば、サポートと知略で

どちらか片方でもいい。

時間さえあれば、全員向かわせることも可能なのだ。


いそげ、いそげ、いそげ。

声なんて無視しろ

音なんて気にするな

熱なんて元々感じるわけがないだろ?


俺がやるんだ

俺にしか出来ないんだ。



守るんだ。

ここを、ダンジョンを。

守るためには、これしかないんだ。


いそげ、いそげ、いそげ、いそげ・・・



ーーーーーーそこからは、まるで永遠に感じるほど、ただ、ただ、回復だけに気を向けていた。


何かが蒸発する音がする。

なにかが雄叫びをあげる声が聞こえる。


だが、聞こえるだけ、意識がそちらに向かない。

やがて、部屋のなかを写している視界すら煩わしくて、映し出すことをやめた。

音も、感じとることをやめた。


いまは無駄なのだ。


あと少しだ、集中しろ。

いままでで、一番集中しろ。

まだだ、部屋全体を回復してる余裕はないのだ。

的を絞れ、ミノタとカターシャだけでいい。

集めて、威力をあげろ。



もう少し、もう少しだ。




【ゴガァアア!!】




静寂の中にいた俺だが、次の瞬間、俺は激しい熱さと声によって現実に無理やり意識を引き上げられてしまった。


復活してしまった聴覚に、パチパチゴウゴウと何かが激しく燃え上がっている音が聞こえる。

唸り声と、風を切るような音も聞こえる。


その度に、ヒリヒリとした痛みが伝わってきて、ない顔が歪んでしまう。


視界をつければ、そこには全身を焔で覆ったオーガが、俺のコアめがけて大剣を何度も叩き下ろしていたのだ。


激しい痛みは、俺の心臓とも言えるコアを、こいつにタコ殴りにされているからだろう。


試したことがないが、どうやらコアは、思ったよりも頑丈なようで、かなりいたいがすぐにどうにかなってしまうようなことはないようだ。

だが、何かがすごい早さで削られている感覚から、恐らく長くは持たないのだろう。


回復は、まだ少し足りない。

集中しなければ。

乱れすぎては、回復できないのだ。

痛みを無視しろ(痛い)

回復させるんだ(やめてくれ)

いそげ(いやだ)

いそげ、いそげ(だめだ、まずい)


・・・いそげっ!!!!(助けて)




俺が、再び回復を再開させようとした刹那、オーガは大上段に構えた大剣を、渾身の力を込めて俺に叩きつけてきた。


そして、その瞬間

俺を守っていた何かが砕け散る感覚がした。

そして、それが何を意味するのかを瞬時に理解してしまった。










・・・あー、くそ。

結局、なにも出来ずに、死ぬのかよ














悪態をつきながらも、スローモーションを見ているような気持ちで、再び振り上げられた大剣を見つめながら、剥き出しになったおれ自身に、オーガが雄叫びをあげながら大剣を振り下ろす様を、俺は見ていた。



・・・ごめん、みんな

何もできないおれを、許してくれ。















【マスタァ!!!!!】









死に際に聞こえた声に、俺の心が激しく動揺した。

声に反応して、思わず視界を声の方に向けてしまった。


そこには、既に半分以上焼けただれて黒くなってしまったアルファが、こちらに手を必死に伸ばしている姿。

そしてーーーーーーー






【ブモオオオオオォォォォォォォオオオオオォォォオォォォ!!!!!】





大気を震わせるほど巨大な咆哮

それにより、動きが数舜止まるオーガの姿。

そして




〔ーーーー水神の奇跡を、今ここに!〕

〔荒れ狂え “アクア・ウェーヴ”〕




突如、よく通る声が響き渡り、部屋中に大量の水が高波のように押し寄せ、部屋を満たしていた強力な火を俺たちごと丸のみにした。


俺の目の前にいたオーガは、波に飲まれて壁際に激しくうちすえられ、他のみんなはなぜか平然とその場に立っていた。


そう、先ほどまでぐったりしていた二人が、立っていたのだ。




「ミノタ殿!、私は奴の火を何とかする!!

頼んだぞ!!」


【ブモオオオオオォォォォ!!!】




カターシャの言葉に、ミノタは、全身から煙を上げながら雄叫びをあげる。

両手には、いつもの手斧

そして、はじめてここにきたときのように、瞳を激しく赤く光らせた、全力モードである。


オーガは、身体からあげていた火が消え、わずかだが弱っているようにも見えた。


それでも、ミノタ同様身体から煙が立ち上っており、口の端からは変わらず火の粉が漏れだしている。


だが、今のミノタはそんなことお構いなしだ。




【ブモォーー!!!!】




まるで蒸気機関車のごとく煙をあげ、突進を繰り出すミノタに、オーガは正面から受け止める構えをとる。

だが、生憎だがミノタのそれはただの突進ではない。


ミノタは突進と途中で軽く飛び上がり、身体を回転させると、斜め上方向から両手に持っている手斧を振り下ろした。


推進力と突進力、さらに体重と腕力。

それは、巨体と質量の暴力。


それら全てが、対象の頭部目掛けて振り下ろされる。

武器はおろか、床や壁ごと削り取るような威力を秘めた剛撃が、オーガに向けて放たれたのだ。


さらに




〔ーーーーーー彼の者を助けたまえ〕

〔その身に宿れ、“ウォーアーム”!!〕




カターシャの魔法による援護によって、ミノタの剛腕が、さらに太く膨れ上がり、ミノタ自身もその力を余すところなく手斧へと送り込み、そして、オーガの頭へと見事にクリーンヒットさせたのだ。



オーガは、驚愕した様子でミノタを見上げ、そのまま抵抗する暇もなく、もろに額からその手斧の直撃を受け、叫んでいた。


手斧は、見事にオーガの額へとめり込み、叩き割るという表現が的確なほど、きれいにオーガの頭蓋は真っ赤な血を撒き散らしてひしゃげた。


さらに、ミノタは追い討ちを仕掛け、もう片方の手斧をがら空きのオーガの首目掛けて振り抜いた。


既に頭部のほとんどを破壊されてしまったオーガに、それに反応するだけの力は残されておらず、ミノタの手斧は、オーガの頭と身体をきれいに分離させた。


吹き飛ばすという表現がここまで綺麗にはまる瞬間も珍しいと思いつつ、オーガの頭はまるでゴムボールのように何度か壁や地面で跳ね、最終的に俺のすぐ近くでゴロリとその動きを止めた。


残されたオーガの身体も、ミノタの初撃を受けた格好のまま固まっており、しばらく首があった場所からダラダラと大量の血を垂れ流していた。



【ブモォーーーー!!】

「首をはねれば、さすがに生き返っては来ないでしょう。お疲れ様だ、ミノタ殿」




興奮気味に両手を上げて喜ぶミノタに、カターシャがサムズアップして健闘を称えていた。


見事な連携と強力な一撃。

さすがのオーガもこれで絶命しただろう。


安心しきった俺は、ボロボロであろうアルファに回復をするために、そちらに視界を移したとき、異変に気がついた。


なんだか、部屋全体がかなり熱い。

ピリピリとひりつくような痛みも感じ、まるで火で炙られているような・・・


すると、オーガの首から吹き出していた血飛沫から、微妙に煙が上がっていることに気がついた。

血だけではなく、硬直している身体や、俺の近くに転がっている頭からも煙どころが火の粉がパチパチと漏れていた。


こ、これは?!




【マスタァ!敵、死んでない!!!

ミノタ、カターシャ!!

頭か身体、潰す!!】




アルファの叫びに合わせるように、オーガの肢体がゴウッ!と勢いよく燃え上がり始めた。

同時に、俺の近くに転がっていた頭が、両目と口をカッ!!!と開き、そこからもゴウゴウと炎が吹き出し始めた。


切断部から吹き出す炎が一番強く、まるで蛇のように宙をうねって俺たちに襲い掛かってきた。


アルファの助言のお陰か、俺の方はカターシャが、彼女とミノタは互いに炎を避け、戦闘態勢に再び移行した。


うねる炎は、しばらく宙を飛び回り、やがて、首と頭から出てる炎がぶつかり、一本の鞭のようになると、なんとオーガの頭が炎の軌道に合わせて動き始め、もとの身体に収まった。


そして、首が完全に一致すると、首の傷が綺麗さっぱり消え、オーガは何でもないように首に手を当ててコキコキとならすと、ミノタとカターシャの方を見下ろし、ニヤリと笑って見せた。



くそ!

こいつ、不死身か?!



オーガは相変わらず口の端から火の粉を散らし、真っ赤な炎を身体のあちこちから燃え上がらせている。


ミノタも、想定外のことに少し動揺しているが、カターシャがすぐにミノタの脇からスルリと前におどりでた。


そして



〔ーーーー水神の奇跡を、今ここに!〕

〔荒れ狂え “アクア・ウェーヴ”〕




先ほどと同じ文言をいい放つと、彼女の足元から高波のような水が沸き上がり、オーガに向かって襲い掛かっていった。


オーガは、一鳴きして大剣を抜き放つと、それから炎を柱のようなものを作り出し、大剣ごとその炎を波に向かって叩きつけた。


ジューッ!!!という激しい音と共に、大量の水蒸気が発生し、一瞬で視界が白一色に塗り替えられてしまった。



くそ!やられた!!

俺は、身体の内側に意識を向ければ、位置を把握することはできるが、細部を知るためには直接見る必要がある。


それは、おそらくミノタとカターシャも同じだろう。

だが




【ご、ゴゴガ、ゴアアアァァァ....】




唸るような低い声が、移動しているのがわかる。

どうやら、多少のダメージはあるようだが、この視界のなかでも攻撃の意思はしっかり持っているようだ。




【ミノタ殿!

オーガは移動している!

声のする方を警戒してくれ!!】


【ぶ、ブモォッ!!!】




ミノタは一鳴きして、集中しているのか二人の声は聞こえなくなった。


唸り声だけが聞こえてくるが、オーガも攻めあぐねているのか、声があっちへウロウロこっちへウロウロと、向こうもミノタたちと状況は同じようだ。


だが、いつまでもこの状況が続くわけではない。

いずれ水蒸気がはれ、お互いの姿が見えるようになれば、再び戦闘が始まるだろう。


しかし、先の様子から見るに、オーガの再生能力は凄まじい。

水を掛ければ弱るか怯むだろうが、倒すまではいまだに至れていない。


それに、カターシャがあと何回同じことが出来るか不明な以上、他の打開策を探さねばならない。



【ブモォッ!!!】



鋭くそう声を上げたミノタは、横薙ぎに手斧を振り切ると、そこにたしかな手応えがあったのか、間髪いれずにもう片方を身体の捻りを加えながら大上段から振り下ろした。


どちらの斧もミノタの胸くらいの高さで止まり、わずかだが唸り声のようなものも聞こえる。

すると、カターシャもそこに追撃するように持っていたナイフを二本投擲した。



ザクッという音が聞こえたかと思えば、今度は苦しそうな声がとどろき、水蒸気が激しく揺らぎ始めた。




【畳み掛ける!

オーガ、弱ってる!!


でも、様子が変!!】




アルファの声が、聞こえるのとほぼ同時に、水蒸気が晴れてきて、ミノタやカターシャの姿が視認できるようになった。


それとともに、ミノタの手斧に身体を切り裂かれ、額と片目にナイフが突き刺さっているオーガの姿もあらわになった。


オーガは、満身創痍で、大剣を片手に持ったまま、虚ろな目で口の端からパチパチと火花を散らせ、ミノタを睨み付けるように見ていた。


ミノタは、少し距離を取り、カターシャが腰から新たなナイフをとるのと同時に、ミノタはオーガ目掛けて駆け出した。


そして、両手の手斧を大きく後ろに振りかぶり、オーガに衝突するかというタイミングで、左腕の斧を大きく弧を描くようにかち上げた。


ミノタの斧は、オーガが辛うじて構えた大剣を軽々と打ち上げ、それに引っ張られたオーガは完全に無防備な姿をさらしていた。


そこへ、ミノタは勢いをころすことなく。


力強く、一歩、前へ。


そして、渾身の力を込め、右腕の斧を袈裟懸けに振り下ろした。



さらに、ミノタの一撃が入ったのを確認するやいなや

この部屋に鳴り響いたのは、激しい水の音




〔荒れ狂え “アクア・ウェーヴ”〕




カターシャの声が洞窟内に木霊し、数秒の間を開けて、カターシャの足元から、まるで激流のような波が、オーガとミノタ目掛けて押し寄せた。


ミノタは、事前に来ることがわかっていたので、手斧を振り捨てて全速力でカターシャの方へ回り込むように駆け出した。


オーガは、傷口から血と一緒に炎やら火花を散らしながら立ち尽くしており、逃げる様子はなかった。

カターシャの呼び出した荒波はすさまじく、

オーガに到達した波は、まるで生き物のようにその身に取り込んだものを流し、揉み、砕き、押し潰した。

オーガも例外なく、飲み込まれ、水のなかで回り、押され、砕かれた。


波が収まり、水浸しになった部屋に残ったのは、びしょ濡れの状態でぐったりと壁にもたれ掛かったオーガの姿。


だが、持たれている首は一回転してダランと垂れてしまっており、両手足も、変な方向に曲がっていた。

身体からも、火花ではなく黒い煙を立ち上らせており、もはや生きているような姿ではなかった。




「・・・やったか?」




カターシャの特大なフラグに、一瞬だけドキリとしつつオーガを見つめたが、いくらまってもオーガが再び動き出すような気配は感じられなかった。



ふう、よかった。

どうやら、本当に倒しきれたようだ。



ホッと胸を撫で下ろし、部屋にいるみんなを呼び集めようと、アルファの姿を探した。


アルファはすぐに見つかり、呼ぼうと思ったときに、異変に気が付いた。


アルファが、こちらを見たまま固まっているのだ。



「どうしたんだアルファ?」



ウィンドウに表示させるために、いつも通りに言葉を発してみて、さらに違和感に気が付いた。




・・・いま、喋れた?

声が、出てなかったか??




今まで、ほしくて堪らなかった

ダンジョンになるまでは普通に出来ていた。


喋るってことが

おれ自身の声が


いま、出てなかったか???




「アルファ、ミノタ、カターシャ!!!」




声は震え、なんだかよくわからない感情のまま、この部屋にいる人物の名を呼んだ。


すると、ミノタとカターシャは、目を真ん丸にさせてこちらを振り向き、アルファは今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。




・・・これは?

一体、どういった反応だ?


ダンジョンに変化があれば、多かれ少なかれみんな喜んでくれていたのだが、今回はなんともいえない反応であった。


もしかして、俺のコアになにか重大な問題が?!

見た目的にすごくヤバそうとか?!


俺は、あわてて視界を部屋の天井に移し、真上から部屋全体を見渡せるような位置から部屋の中、もといおれ自身を見てみた。




そして、視界に写り込んでいたそれに、俺は初めて視界の信憑性を疑った。


なぜなら、今までコアが浮かんでいた位置。


ちょうど斜めしたくらいのところにあるはずの、いろんな色に光るオーブ。


それが、誰のともわからない



に変わっていたのだ。




「ギャアアアーーーーーー!!!!!」


ピカーーンッ!!




「きゃああああーーー!!!!」

バタンッ!

【ブモォォォォーーー?!?!】

ドシンッ




俺が思わず叫んだ瞬間

骸骨は、両目を怪しく光らせ、顎が外れるのではと思うほど大きく口を開け、そこから大音量の叫び声を発していた。


カターシャは、悲鳴を上げてバタンと倒れ、ミノタは、両耳を手で覆い、尻餅をついてしまった。


すると、視界に紫色の影が頭蓋骨へともうダッシュした。

アルファであるのだが、アルファは人型ではなく、スライム形態になっており、そのまま飛び上がったかと思うと、身体をバッと伸ばし、頭蓋骨に覆い被さった。


すると、頭蓋骨から出ていた音がしなくなり、目の光りも思いのほか落ち着いてr


ガボボボボボボボボ?!?!?!


ちょっ?!

な、なんだ?!

水?!

なにこれ!!

冷たい!!!なにこれ!!




苦しくはないにしても、水のなかで声を出しているような感覚になり、俺はようやく叫ぶのを止めた。


すると、自然と頭蓋骨も口を閉め、目の光が穏やかなものに変わった。




・・・さてさて

これは、どう考えても、そういうことだろう。



俺はどうやら


コアがに変わってしまったようだ。






・・・いや、なんで?!

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