第6話 懺悔

牛人を吸収終えた後、やっと通路の奥から部屋にゴブリとスライム達がゾロゾロと駆け込んできた。

そして、この部屋の惨状を理解したのか、ゴブリが慌てた様子で声をあげた。

すると、スライム達はコボルトのいる窪みに殺到し、素早くその身を俺の近くに運び込んできた。

ゴブリは、それを見届けると、数匹のスライムを引き連れ、再び何事か声をあげると、ダンジョンの中へと戻っていった。


こちらにコボルトを運び込んだスライム達は、少しキョロキョロする挙動をすると、ややしばらくして、ゴブリ達を追うようにダンジョン内へと戻っていった。


俺は、それを見届けるなり、直ぐにウィンドウを開いた。

なにをするのかと言えば、コボルトの治療である。


実は、コボルトの襲撃があった際、ゴブリが瀕死だったのだが、その際に面白い機能が俺には備わっていることが分かったのだ。


それが、これからする【回復促進メディカルモード】である。


これは、ダンジョン内の監視が出来なくなるかわりに、コアの近くにいるモンスター達を回復させることが出来るのだ。


回復も、傷や状態異常はもちろん、体力なんかも回復させられるようなのだ。


前回よりも状況的に悪そうだが、死んでいないのであれば回復できる筈だ。


俺は、早速ウィンドウから【メディカルモード】を選択し、しばらくコボルトを観察した。

治りが遅いと思いつつも、息があることや前回のゴブリの例もあり、回復すると思っていた。


だが、俺はある異変に気が付いた。

コボルトの怪我が、まったく治らないのだ。


それどころか、コボルトは先ほどから苦しそうに呻きながら、僅かに身体を痙攣させるだけだった。



なんだ?

なんでだ??

なんで治らない?


まて、落ち着け

慌てたところでなにも解決しない。

冷静に分析するんだ。


前回と、今回の違いはなんだ?


傷の深さ?種族?経過時間?

呪いの類いか?寿命のような概念か?


・・・・・・まて、待てよ?

そもそも、俺はなんだ?

・・・ダンジョンコアだ。


なぜ、ダンジョンコアに“回復”なんて能力がある?

ダンジョンにいるモンスターを治す為じゃないか?


じゃあ、もし、回復する相手が

なら、どうなるんだ??



ようやく、俺は答えらしい答えにたどり着き、思わず悪態を着きたくなった。

そうか、そう言うことなのか!!


前回、ゴブリを治せたのは、彼がダンジョンのモンスターであるからなのだ!!

今回は、あくまでも一時的にこのダンジョンにいるだけのコボルト

つまり、俺の回復条件からのだ!!


くそ、なんてことだ!!

いま思えば、この20日間、コボルトは自力で体力や傷を治していたではないか!

こんな初歩的なことに気が付かないとは!!!


俺は、目の前で今にもその命を終えそうなコボルトをみて、なにか手はないかと必死に考えた。


どうする、どうするどうする!!

今回は、このコボルトのお陰で、俺たちは大きく成長できた。

協力して、大きな脅威も退けることが出来た。

なのに、一番の功労者であるこのモンスターを、みすみす見殺しにしてしまって言い筈がない!!


・・・・・・

・・・・・・ぐぅっ


ダメだ、俺には、あの手しか思い浮かばない。

だが、それをしてしまえば、このコボルトの性格から考えると、ひどく恨まれ、最悪このダンジョンに多大な不利益をもたらすことになるかもしれない。


・・・だが、これしか

この方法しか、俺にとれる手段はない!!


あー!!くそ!!

無駄のは分かってるが、大切なプロセスだけは守っておくぞ!!




俺は、自分に言い訳をするように、死にかけているコボルトの前に、ウィンドウを表示させ、俺の言葉を表示させた。




「コボルト、このままではお前は間違いなく死ぬ。」




そう表示させると、焦点が定まっていなかったコボルトの眼が、ウィンドウに向いた。

言葉は、理解できているか分からないが、この際、どちらでもいい。


騙すような方法に、俺は少し罪悪感を感じながらも、さらに続けた。




「治療を試みたが、条件を満たせず、治すことが難しい。

そこで、提案だ。

コボルト、ダンジョンのモンスターとして、生まれ変わってみないか?」




すると、少しして、コボルトがグルルと不機嫌そうに唸っているのが分かった。

やはり、承諾はしてくれないようだ。

言葉は読めずとも、不穏な気配から何が言いたいのかを察したのだろう。


一思いに吸収して、文句は後から聞く方法もとれるのだが、こればっかりは俺のエゴだ。


彼の意思を、極力尊重したいが、できれば、生きてもらいたい。

そういった俺のエゴなのだ。




「言いたいことは分かる。

だが、目の前で勇敢な戦士であるお前を、みすみす見殺しにしてしまうのは、俺が許せないんだ。

うらみごとも、文句も後で聞く。

今は、俺に吸収されて貰えないだろうか?」


【・・・・・・・・・ゥゥ】




俺の言葉に、しばらく間を空けて、辛うじて首を縦に下げ、短くか細い声を漏らした。


俺は、これを勝手に了承の意味でとらえ、早速行動に移した。

【メディカルモード】を解除、直ぐにウィンドウから吸収をする準備をして、俺はコボルトを見下ろした。


すると、彼はガフッと口から大量の血を吐き出した。

不味いと思いつつも、慌てず全速力で準備を終わらせる。

その間、コボルトはジッとこちらを見続けており、遂に床の一部が液状になり、コボルトの身体を少しずつ取り込み始めた。


そこで、ようやくホッと一息着いた俺に、なにかがぺとりと触れた。

見ると、いつの間にかアルファが復活していたようで、いつもの声が聞こえてきた。




【ますたぁ、コボルト、怒ってる】




アルファの言葉に、俺は半ば諦めに近い気持ちで、思わずため息を吐きそうになってしまった。

やはり、勝手に取り込もうとしている俺を恨んでいるのだろう。

まあ、覚悟はしていた。


このコボルトの性格的に、このような形で生きながらえるなら、自らの死を選ぶようなやつなのだ。

それを、俺は俺のエゴで生かそうと、救おうとしてしまったのだ。

何を言われても、仕方がない。


そんなことを考えていると、アルファから、さらに言葉が紡がれた。




【コボルト、ますたぁ、怒ってる。

なぜ、見殺しに、しないか

なぜ、自分を、救おうと、するか

なぜ、自分なんかを、勇敢と、いうか

なぜ、戦士と呼ぶか

そんな、うれしいこと、いうか

自分は、やつをつれてきた、元凶

無理に、巻き込んだ、厄介者

危険にさらした、害悪


なのに、なぜ、救いを与えてくれる?】




沈み行くコボルトの言葉を、アルファを通じて理解してしまった俺は、自然と心が締め付けられるような気持ちになった。


そうか、そうなのか

このコボルトは、ずっとそんなことを考えていたのか。


何か、声を掛けてやりたいが、あまり長い言葉は掛けてやれない。

なぜなら、彼の身体は、もうほとんど地面に吸い込まれてしまっている。


ならば、短くても俺の気持ちが伝わる言葉がいいだろう。


おれは、そう考えて、アルファに俺の言葉を伝えると、アルファはしっかりとコボルトにその言葉を伝えてくれた。


すると、沈んでいくコボルトの顔が、驚愕の色を浮かべ、地面に消える直前で、彼の眼から一筋の涙がスゥと流れ出していた。



なんて事はない、俺は、大したことを伝えられていないだろう。

だが、俺の気持ちは、少しだけでも伝わってくれたと思いたい。




「───ありがとう、また会おう、勇敢な戦士よ」









コボルトが完全に地面に消え、それから再び彼に会うことが出来たのは、それからおおよそ1ヶ月が経った後だった。




===============




ここは、どこだ?

俺は、いったいどうなったんだ?


確か、最後に覚えているのは、コボルトの匂いを追って、洞窟に潜った。

それから、それから・・・


むむむ、いまいち記憶がぼやけているな。

これは、少々確認作業からしなければならないだろう。


自分の事は、何とか思い出せる


俺は、牛人

東の平原に住んでいた、普通の牛人だ。

狩りをしている途中、いきなり人間どもに襲われ、それらを撃退をしたんだった。


だが、撃退をしてからの記憶が曖昧だな。

たしか、撃退中に現れた布を全身に被ったヤツに、妙な魔法を掛けられて・・・


ああ、なるほど。

原因はそれか。


何らかの魔法により、俺は正気をなくしていたのか。

それで、暴れまわっていた。


・・・断片的だが、覚えてるぞ

俺は、平原から、南下してきたんだ。

そして、途中で目についた生き物を片っ端から殲滅した。

動物も、人間も、モンスターも

木も、岩も、大地も


あらゆる物が気に入らなくて、ただ破壊を繰り返していた。


途中、コボルトの集落があったから、それも壊したな。

しかも、そこからあるコボルトを執拗に追いかけて、さらに暴れたのも覚えている。


そうか、目が覚めたということは、俺は、そのコボルトを殺したのか?

むむむ、悪いことをしたな。


・・・いや、待て待て

俺に、目的のコボルトを殺した記憶がない。

必死に思い返してみても、穴に落ちてからの記憶がないぞ?


どうなってるんだ?

俺は、いまいったいどうなって??




そこまで考えいたって、俺はようやく辺りを見回してみた。

そこには、なにもない岩肌がむき出しのゴツゴツした通路であった。


細く、俺が立ち上がれば拳二つぶんほどしか隙間がなくなるくらい低く、横幅も両手を広げてしまえば、指先が届いてしまうほどだ。


なんだ?

ここはどこだ?

まさか、まだ例の洞窟にいるのか?


そこまで考えて、俺はさらに奇妙なことに気が付いた。

いつの間にか、足元付近に何びきかのスライムが徘徊していたのだ。

俺は驚き、思わずブモォ?!と声をあげてしまった。

すると、スライム達がこちらに気が付いたのか、プルプルと震え、そして、数匹は踵を返して通路の奥に消えてしまった。

残りは、まるで俺を囲うように集まってきた。


おれは、本能的に不味いのでは?と思い、スライム達を蹴散らして仕舞わないように避け、通路を駆け上がった。

幸いにも、スライム達はそこまで早くないようで、俺は難なく彼らを置き去りにすることが出来た。

これで、なんの心配もなく外に逃げられるだろう。


そう、逃げなければならないだろう。

ここには、断片的だが、とても危険なヤツがいる。

俺を殺せるほどのやつが。


だが、それに怯える必要もなくなるだろう。

なぜなら、目の前にもう洞窟の出口が見えているのだから。


俺は、洞窟の出口からみえる空に、無数のキラキラした光を見いだし、今が夜であることを悟った。

そして、それは俺にとってまさに僥倖であった。

牛人である俺は、夜間に行動することに特化しているのだ。

さらに、体毛も黒に近く、闇夜に溶け込みやすいのだ。

このまま、外にさえ出てしまえば、例え追跡が来てもやり過ごす自信がある。


さあ、後は外にさえ出てしまえば!!!


そう思い、洞窟の出口に、一歩外に踏み出そうとした。

そして、足先が洞窟から外に出た瞬間、それは起こった。



なんと、俺の全身に、例えようがないほどの激痛と痺れが駆け巡ったのだ。

視界はチカチカと明滅し、外に出してしまった足は、ガタガタと激しく痙攣し、おれ自身も無意識に絶叫していた。


俺は、慌てて足を引き戻し、尻餅を着きつつも出口から離れるためにそのまま這うように後ずさった。


な、なんだ?!

なにかの罠か?!


俺がそんなことを考えていると、背後からドタドタと足音が聞こえてきた。

振り返って眼を凝らしてみると、そこには、大量のスライムとゴブリンが一匹、駆け寄ってきていた。


俺は、少し驚いてまた外にいこうとしてしまったが、先ほどの経験を思い出し、すんでのところで外に出ずに耐えることが出来た。

だが、そんなことをしているうちに、ゴブリンとスライム達が俺のもとまでたどり着いてしまった。


すると、ゴブリンが何かゴブゴブ叫ぶと、スライム達は俺の身体の下に潜り込み始め、数秒もしないうちに俺はスライム達に持ち上げられてしまった。




【ゴブゴブッ!!ゴーブギャッ!!!】




ゴブリンがまた声をあげると、スライム達は、なかなかの速度で俺ごと通路の奥へ進み始めた。

その速さは、まるで丘を滑り降りているようで、正直僅かばかり恐怖を覚えてしまった。


いったい、どこへ向かっているのかと思っていると、突然、通路が終り、開けた所に出た。

そこは、洞窟内だというのに、昼間のように明るく、フロアのあちこちに光る何かが点在していた。


一瞬、その幻想的にみえる風景に唖然としていると、不意にグンッと急停止し、身体に負荷がかかって前のめりに倒れ込んでしまった。


ズザーッと地面を滑っていき、口のなかがホコリまみれになった頃、ようやく俺の視界に、それが写り込んだ。

それは、数メートル中空に浮かび上がっており、特に、何かがあるとか、特殊な雰囲気もまったく感じない。

ただの、真ん丸な水晶玉のようなものだった。


これは、知っている

これは、ダンジョンコアと呼ばれているものだ。

そして、俺は、これをみたことがある。

まさに、俺のモヤがかかっていた記憶のそれを、洗いざらい吹き飛ばすほどの強烈な衝撃に、俺は一瞬視界が真っ白になった。


そうだ、これだ!

これに、俺はやられたのだ!!


ようやく思い出し、この洞窟でも一連の動きも思い出すことが出来た。

そして、俺の奥底から湧き出してきた感情は、怒りや、恨みではなく。


────感謝だった。




気が付けば、俺は目の前の球体の前で、両ひざを付き、頭を深く深く下げていた。


かなり前、人間が俺にたいしてしてきた行動だ。

これは、謝罪の意味や降伏の意味を含んでいる筈だ。


俺がそうしたことで、後方にいたゴブリンが不思議そうな声をあげているのが聞こえた。

どうやら、ゴブリンはこの動作の意味を知らないようだ。

俺は、恐る恐る球体の方を見てみると、そこには、一匹のスライムがいた。

そのスライムは、俺のすくそばまで来ると、その身体をぴったりと俺にくっつけてきた。

何事かと思っていると、不意に頭のなかに声が聞こえてきた。




「おはよう、死にたがり君

記憶はしっかりと、あるかい?」




その声を聞いた瞬間、ビビビッと電流が全身を駆け巡るような錯覚を覚えた。

そして、本能的に悟ってしまった。

理解してしまった。


これが、この方が!

俺の、ご主人様である、と




【ぶもぉぉぉおおおー!!!!】


「うおぉ?!な、なんだ?!」


【ブゥルルルル!ぶもぉぉぉぉおおおおおーーーー!!!!】


「あ、アルファ?!なんて、何て言ってるんだ?!」


【わ、分からない

喜んでる、でも、言葉、ない】


「嬉しくて叫んでるだけか?!

にしては、妙に迫力ないか?!」




ああ、ああ!!!

我が主様!!

ご主人様!!!

俺は、俺は!

かならず、必ずや、お役にたって見せます!!!

この命つきるまで!

力の限り、尽くさせていただきますぞぉぉぉぉ!!!!




俺は、自分の感情が止められなくなっていた。

なぜなら、こんな経験は今までなかったのだ。

こんなに、誰かに尽くしたいと

こんなに、誰かの役に立ちたいと

こんなに、感謝の気持ちが溢れることなど!!


ああ、ああ!!!

素晴らしい!!なんてことだ!!!

俺は!私は!!!

最高の主に、巡り会うことが出来てしまったのだ!!!




その日、とある辺境の森のなかから、この森にはいない筈の凄まじい獣の鳴き声が、何時間何時間も轟いていたと、通りがかった冒険者は語ったという。









==============




さて、状況を整理しようか?

まず、俺の状況を整理しよう


現在、俺のステータスはこのようになっている。


【ダンジョン名→スライム達の洞穴】

【ダンジョン内→異常なし】

【ダンジョンコア→囲側平田】

【ダンジョンボス→囲側平田、牛人(未選択)】

【ダンジョンモンスター→スライム、ポイズンスライム、ゴブリン、牛人、コボルト(現在使用不可)】

【ダンジョンレベル→5】

【ダンジョン脅威度→D-】


と、このようになっている。


まず、変化としては、ダンジョンモンスターの種類だろう。

前回の防衛戦により、襲撃者である“牛人”を吸収することに成功している。

これは、本当に様々な偶然と幸運によって、勝ち取った成果とも言える。

そして、さらには、数日間行動を共にし、今回の防衛戦の功労者である“コボルト”である。

彼は、まだ召喚することが出来ないが、召喚が可能になったら直ぐに呼び出して、謝ろうと考えている。


そうしなければ、こちらの気が済まないような吸収であったので、はやく呼び出せないかとソワソワしている。


そして、さらに変化したことと言えば、“ダンジョンボスの選択”が可能になったことだろう。


これは、牛人、もとい“ミノタ”(名付け済み)を召喚したときに気が付いたのだが、どうやら、ミノタの種族の牛人というのは、ボスモンスターらしいのだ。


ボスモンスターというのは、ダンジョンの要所要所のフロアに存在するモンスターで、その強さは、通常のダンジョンモンスターよりも強力、かつ、頑丈なモンスターの総称である。



なぜ、こんなことを知っているかと言えば、これまた新たな変化の話になる。

それは、ダンジョンレベルである。

実は、ダンジョンレベルが“5”に上がったことにより、既存の項目の簡単な説明文が出てくる“ヘルプ”というものが出来たのだ。


これにより、今まで手探りで全て予測で行っていたことや、よく分からない用語の説明などが、本当に僅かだが、分かるようになったのだ。


ちなみに、参考になりそうな説明はこのボスモンスターの項目くらいで、あとはそのまま“項目の名前一部+の~である”といった分が出るだけである。


ダンジョンコアの説明が“ダンジョンのコアである”と出てきたときは、思わず頭を抱えそうになった。

正直、あってもなくても変わらない能力である。


だが、お陰でボスモンスターだけでも理解できたので、よしとしよう。



気を取り直して、選択の話に戻ろう。

ボスモンスターとは、先ほどの説明の通りなのだが、そこで、ひとつの疑問が生まれた。


なぜ、俺がそのモンスターの欄に名があったのか。

答えは単純明快、ボスがいなかったからだ。

どうやら、ボスモンスター不在の場合は、ダンジョンコアがそのままボスとして扱われ、様々な恩恵を貰えるようになっていたようなのだ。


具体的には

・耐久力の向上

・攻撃力の向上

・生命力の向上

・各種能力値の上昇

・広域殲滅可能な攻撃の習得、使用

等々、等々


あげればまだあるが、検証して分かったのはこれくらいだろうか?


ちなみに、ボスからはずすと、それらの効果は全てなくなり、通常のダンジョンモンスターとしての能力値に戻るようだ。


ちなみに、これら全てはミノタにやって貰ったのだが、妙に張り切っていたかれは、これら全てを半日も掛けずに実証して見せた。

ちなみに、俺は休憩や回復は行っていない。

半日間動き続けて、今の疲れた様子もなくキラキラした顔でこちらを見ているため、正直困惑している。


耐久力の試験なんか、ひたすらゴブリが殴り付けたり、岩を当てまくるといった原始的なものだったのだが、ミノタはニヤリとしながら仁王立ちしていた。


ボスモンスターってすげーなぁ・・・



そんなことを考えつつも、何はともあれこのダンジョンに、正式にボスとして牛人のミノタが加わったことで、大幅なパワーアップをすることが出来た。

おかげで、驚異度が“D-”になった。


これで、やっとダンジョンらしくなったのではないだろうか?


さて、では、今後のことを考えねばならないだろう。

まず、目下目標にするべき事は




「俺は、ダンジョンを続けたいか、元に戻りたいか・・・・・・ってところだな」




どちらも、かなり大事な決断ではあるが、正直、選択肢はあってないようなものである。


元に戻るとしても、その方法を知るためには、情報を集めなければならない。

なら、どう集めるか?

それは、情報源に直接来て貰うしかない。

なら、どう呼び込むか?

ダンジョンなのだから、宝や討伐に来る冒険者や人間を誘い込むしかない。

さらに、ダンジョンを続けるにしても、結局どうやって成長するか考えると、やはり、人間やモンスター達をここへ誘いだし、吸収するしか選択肢は残されていない。


つまり、俺に残されている選択肢は、はじめからひとつなのだ。

それは、ダンジョンを作り上げ、人間を呼び寄せる。

それ以外に、俺に残されている手段はないのだ。



「結局、ダンジョンを大きくするしか、俺に出来ることはなさそうだな?」


【ゴブッ!】

【ブモォ!!】

【ますたぁ、アルファ達、力になる】




俺の独り言のような言葉に、その場にいた三びきは各々返事を返してくれた。

その光景に、少しだけ嬉しくなってしまい、自然と言葉が漏れ出て、ウィンドウに表示されていた。




「ありがとう、よろしく頼むぞ?」




その言葉に、三匹は揃って嬉しそうに跳び跳ねたり鳴き声をあげたりした。


その姿に、俺は自然と笑みがこぼれるような気持ちになった。


この、頼もしい仲間達と共に、俺は作り上げるのだ。


誰もが挑み、絶え間なく人々が訪れる。

最高のダンジョンを!!




決意も新たに、俺たちは今日も今日とてダンジョンを作っていくのだった。










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