第2話 発現
さて、状況を整理しよう。
俺、目が覚めたら突然、ダンジョンになってました
完
いや、待て待て
ありえるかそれ??
自分で言ってて受け入れられる状況じゃないぞぉ??
と、ともかく!!
俺は、気がついたら身体がダンジョンになってしまっていたようなのだ。
しかも、元々の肉体の感覚とは全く未知の感覚を感じる。
それに、決定的に違うことがあるのだ
それが、意識したら視界に現れるこれだろう
半透明のディスプレイ
謎の音声による読み上げ
現状が瞬時に理解できるデータベース
一番分かりのいい表現が
”メッセージウィンドウ“だろう
こんなもの、ゲーム以外でありえるわけがない
だが、俺は実際にこの眼で見ており、そして、操作できてしまっている。
これが、夢でなければ事実なのだろう。
それに、これが現実であると裏付けることがもうひとつある
それが、ちょうどいいことにやって来た。
思考を巡らせている間に、何度目になるかわからないが、再び体内にあの気色の悪い感覚が出現した。
先日、新たに手に入れた視界操作を駆使し、感覚の出所を探してみると、それはすぐに見つかった。
それは、グニャグニャと蠢き、その不定形の身体を器用に伸び縮みさせて移動をしている粘性生物を見つけることができた。
俺の知識の中で最も近しいものをあげるとすれば、それはおそらく“スライム”である。
だが、それは某RPGに出てくる可愛らしい見た目の青いゆるキャラではない。
身体は向こう側が微妙に透けて見え、そのなかに無数のオレンジ色の小さな粒が忙しなく蠢いている。
粘性の身体は毒々しい紫色をしており、小さなオレンジの粒がより一層その見た目のインパクトを強めている。
正直いって、見てるだけで鳥肌がたちそうだ。
・・・・・まあ、たつ肌すら今は無いのだが。
それはさておき、ようやく現れてくれたスライムに、俺は少しだけ嬉しくなりながら、もはや恒例となりかけているメッセージウィンドウを確認するために、素早く意識を集中させた。
そして、ウィンドウに表示される情報から、それを見つけ出した。
【ダンジョン内→モンスター発生中・・・1/10】
俺は、数字を確認して思わず両手を挙げて喜んでしまいたくなった。
だが、残念なことに俺に今手はない
なので、気持ちだけ最高に昂らせるだけにとどめ、俺は早速スライムもどきを吸収する作業に入った。
ここで、少しだけ説明してしまうと
どうやら俺は、この洞窟(ダンジョン?)に転生してしまった。
そして、出きることがいくつかあるのだ。
その一つが、“吸収”である。
これは、体内(洞窟内?)にある物体をある程度の時間を掛けて俺の身体の一部として取り込むことが出きるのだ。
しかも、半自動的に行ってくれる親切機能である
吸収したら、ウィンドウにも感覚的にもわかるので、大変助かる。
ゲームチックに言ってしまうと、ダンジョン内の物体を経験値に変換することが出きるのだ!!!
ここでのメリットとして、まずこの洞窟である俺の成長を促すことが出きるのだ。
何度かこの行為を繰り返して気付いたのだが、どうやら今の俺は、この吸収をすることで自分の能力を向上させることが出きるようなのだ。
具体的に言うと、つい先日までは洞窟内の壁と入り口しか見れなかったが、今では全方位を自由自在にみることが可能となっている。
どこを基準に?といわれると、コアというしかないのだが、その説明はあとでしよう。
ともかく、俺は吸収で成長できる。
それが、基本的に俺がこの状態で出きることのひとつだ。
そして、もうひとつ出来ることとして、モンスターの生成である。
これは、今実際に吸収したスライムを出現させることがこれに当たるのだ。
これは、それこそ偶然見つけたことなのだが、どうやらこの身体は、一定時間経つと身体のある地点でモンスターを産み出すことが出きるようなのだ
俗に言う、モンスターのポップアップ地点と言うのだろうか?
そこから、俺は先程のモンスターを産み出すことが出きるようなのだ。
こいつらは、産み出すとしばし硬直しているのだが、すぐにうごきだし、ある地点を目指してひたすら前進するのだ。
それが、このダンジョンの中心部であり、おれ自身である “コア” である。
これの説明もしてしまうと、先の視点移動や、モンスターのポップアップ地点の設定、ウィンドウの出現なども、実はこのコアの付近で行っている。
今は、入り口から数メートルの通路から、なにもない広場に下り、さらにその一番奥の方に鎮座している真ん丸の水晶
これが、おれ自身であり、このダンジョンの命であるコアだ。
これも、視点移動や様々なことをやってみたときに判明したことだ。
モンスターは、この水晶目掛けて洞窟内を前進してくる。
ただ、別に破壊したりとか、食べようとしてくるわけではないのだ。
なんとなく、コアに近付いてくるだけで、それ以外のことは一切してこない。
故に、別にわざわざモンスターを遠ざけることはしなくていいのだが、コアの近くに何かがいると、俺はとてつもない不快感と危機感を覚えるのだ。
なので、早々に出現したモンスターに関しては俺の糧となってもらっている。
まあ、今俺が出現させることが出来ているのは、スライムくらいなのだが、これもおそらく何度か吸収し、成長をすることが出来れば新たなモンスターの生成も可能になるだろう。
そんなことを色々考えているうちに、先程現れたスライムは、既に俺に吸収され、その姿を消していた。
そして、俺は再びウィンドウを開いて情報を確認した。
【ダンジョン名→スライムの洞穴】
【ダンジョン内→異常なし】
【ダンジョンコア→囲側平田】
【ダンジョンボス→囲側平田】
【ダンジョンモンスター→スライム】
【ダンジョンレベル→1】
【ダンジョン脅威度→F】
レベル事態は変わっていないが、名前とモンスターの欄が変化している。
これは、ここ最近で新たに増えたことなのだが、どうやらこれはこの世界の一般的な基準を可視化したものらしく、このダンジョンの大体の水準を表しているようなのだ。
そして、いくらゲーム下手な俺でもハッキリと分かることが、このダンジョンがとんでもなく弱いダンジョンであり、今のままでは俺の命はとてつもなく危険な状況であると言うことだ。
モンスターはコアに攻撃してこないが、この世界にいるであろう攻撃的存在が、俺に何かしてくるかもしれない。
前世の記憶に照らし合わせれば、ダンジョンと来ればおそらく冒険者やギルドの様な人間たちの組織があってもおかしくはない。
この世界の人間は未だに見たことがないが、おそらくいると思う。
さて、そうなるとだ、このウィンドウの情報から考えるに、このダンジョン・・・もとい俺がどれ程の強さなのか想像するのも悲しくなる。
雑魚の代名詞的な存在である
スライムの名がついており
ランクがF
レベルも1
うわっ、俺のダンジョン弱すぎ・・・・・・
これはいけない
本当に不味い。
何とかしなければならない
何とかして、レベルをあげるかこのままひっそりと余生・・・もといダンジョン生を全うしなければならない。
・・・・・・対策を考えたいのだが、残念ながらいま俺にできるのは、スライムを生み出すことと、視点を動かす意外なにもできない。
トラップや、ダンジョンの拡張なんかもできない生まれたてホヤホヤのただの洞窟なのだ。
唯一できるのは、ひたすらスライムを生み出し、それを自らの糧にして能力の覚醒をするしかない。
・・・・・・・・・はぁ、先が思いやられるな。
そんなことを考えつつも、他にできることもないので、俺はただただ
====================
時はしばらく経って、俺がいい加減スライムを吸収するのに飽きてきた頃、ついに変化が現れた。
そう、ついに
ーーーーーーー新しいモンスターが出現するようになったのだ!!
・・・・・・なぜ、能力より先にモンスターへ変化が?
まあ、細かいことはいいだろう。
さて、ここで新たに出現するようになったモンスターをご紹介しよう!!!
さあ!ご覧ください!!
その豊かな曲線美に、緑色の半透明な身体!!
そして、体内に毒々しい紫の斑点状の粒がうごめいている新たなモンスター!!
その名も、【ポイズンスライム】ッ!!!!
っって、またスライムかよ!!!!
どうして?!
ただのスライムですら気持ち悪いのに、今度は色違いのもっと気持ち悪いスライム?!
どうなってるんですか?!
・・・・・・はぁ、まあ落ち着け
クールになろう
とにもかくにもだ、俺の体内で新たに出現した彼なのだが、どうやら見た目が気持ち悪いだけではないようだ。
実感はないが、どうやらこのスライム
名前の通り、身体から毒のガスを放出するようで、彼らが生まれてコアに向かって来る間に、通ってきた道が毒ガスで満たされ、大変危険な道に早変わりしていたのだ。
ウィンドウを確認してみたが
脅威度が“F”から“F+”になっていた。
・・・・・・・・・“+”って、おいおい
この世界のダンジョンどんだけランクがあるんだ?。
考えただけで気が遠くなってしまう。
ま、まあ、最初の頃よりは危険になったのだ
目標に一歩近付いたと考えよう。
この毒も、どうやら持続性はあまり長くないようで、ポイズンスライムが通りすぎてから10分後には、元の毒なし通路に戻ってしまうようなので、納得の脅威度だろう。
・・・・・・どれ程危険なのかはさっぱりわからないが、まあ、身の安全が向上したと思って喜んでおこう。
さて、ここでまた考えなければならないのが、俺の能力とモンスターの関係性だ。
どうやら、今回の成長は単純にモンスターに現れた訳ではなく、違う部分が成長したと考えていいだろう。
おそらくだが、成長したのは“ポップアップポイント”
これが、増えているわけではなく、先程までの出てきていたスライムのポイントから、ごく稀にポイズンスライムが出てくるようになったと考えていいだろう。
現に、今もほとんどがスライムなのだが、稀にポイズンスライムが混じっているようなのだ。
それに、スライムのポップアップも徐々に早くなっているようで、今では一匹吸収してから数十秒でまた新たな個体が姿を表している。
これは、喜ばしいことだ。
さらに、種類が増えたお陰か、モンスター数の欄の最大値も“10”から“15”に増えていた。
これも新たな発見だ。
どうやらモンスターの種類が増えれば、必然モンスター数も増えるようなのだ。
ちなみに、このモンスター数なのだが、これは単純にこのダンジョン内に同時に存在させられるモンスターの数を表しているようなのだ。
ちなみに、スライムもポイズンスライムもどちらも一匹につき“1”値が増えるようだ。
そして、俺はここで新たな実験をしてみようと考えた。
それは、“モンスターへの命令”だ。
これは、少し考えてみたことなのだが、このモンスターたちは、俺の体内から出現して、俺の中のみを徘徊している。
先のモンスター数の実験でしばらくモンスターを放置したのだが、ほとんどの個体が入口付近からコアを行ったり来たりするだけで、外に出ようとしたりするスライムがいなかったのだ。
さらに、スライム同士で接触したり共食いの様な現象も起こしていないのだ。
この事から、このスライムたちには一定の知性ないし自我があるのではと考えたのだ。
ならば、俺の命令を簡単な範囲なら聞かせられるのではと考えたのだ。
だが、これには大きな問題がある。
それは、俺の命令をどのようにして伝えるかなのだ。
念じてみたらいけるか?と先程から【こっちへ来い】と、あるスライムを見つめながら念じているが、その声に反応している様子はない。
もちろん、その個体以外は定期的に吸収している。
もしかすると、成長したら声が届くかもしれないからだ。
なので、そのスライムには個人的に呼び名すら考えている。
いまのところ、スライムを仮に“アルファ”と呼びながらずっとコアに近づくように念じてみている。
この個体を選んだのはたまたまだが、なんとなくコアに近づいてきて長めに停止していることが多かった個体だったため、こいつを命令対象に選んでみた。
好感度?ではないかもしれないが、なんとなく言うことをきいてくれそうだったこともある。
今のところ、アルファに変化はみられない。
たまに、いつものように俺のところで長めに停止することはあっても、俺の声を聞いて近づいてきている様子はない。
唯一近付いてくるのは、徘徊の終着点として、洞窟の終わりとして訪れているくらいで、命令を聞いて踵を返している様子はない。
仕方なく、変化が起こるまで根気よく見守ることしか出来ない。
とりあえず、レベルはあげて損はないだろうと、吸収は続けているが、何か新しいこともない。
これは、またしばらくかかるかもしれないと思いつつ、俺は今日もアルファに呼び掛けながらひたすら吸収を続けたのだった。
================
結論から言おう
アルファは、ダメだった。
もとい、間に合わなかった。
俺が吸収しながら呼び掛け続けていたある日、アルファが入口付近で急に動かなくなり、どうしたのかと思えば、突然オレンジの斑点が黒っぽくなり、その紫の身体がみるみるうちに溶け出して跡形もなく消えてしまったのだ。
ここではじめて、モンスターに寿命の概念があることを目の当たりにした。
そりゃ、生き物なのだから当然なのかもしれないが、勝手に死なないものだと考えていた。
うう、アルファよ
お前のお陰で、俺はまた新たなことを知ることができたよ
さて、いつまでも悲しんではいられない。
ここで対策を考えなければならないだろう。
アルファの尊い犠牲のお陰で、こいつらが永遠に生きていられないと言うことがわかった。
体感的に、おおよそ10日ほどだっただろうか?
アルファは、スライムのなかでは長生き出来ていたのだろうか?
それとも普通より早く死んでしまったのだろうか?
今後、アルファの様な犠牲をいくつか出さないと正確にはわからないが、極力は避けたい。
なぜなら、俺のなかで死んだアルファは、吸収こそされたが、生前の状態で吸収するより圧倒的に経験値が少ないのだ。
それに、スライムならばいくらでも出てくるが、ポイズンスライムや今後出てくるであろうモンスターの寿命を知るために、わざわざダンジョン内を死ぬまでさ迷わせるのも可哀想だ。
必要ならやるのだが、今はそれほど必要だとは考えていない。
むしろ、課題は別にある。
いつ死ぬのか、ではなく、いつまで生かせるか、が重要だと思う。
常に新しい個体を生み出す事より、長生きなモンスターがいた方が可能性は拡がるのではないだろうか?
ダンジョンの俺ですらレベルがあるのだ
きっと、モンスターも長生きの方が様々な能力が発現する個体がいるかもしれない。
そうと決まれば、方法を考えなければならない。
今のところ、彼らの生存に必要なものが、この洞窟に無いのは確実である。
もし、それがあるなら、アルファはそれを吸収ないし食べて今も元気にダンジョンを徘徊していたに違いない。
では、彼らは何を食べるのか。
これまでずっと彼らを監視していたが、何かを吸収や食べているところを俺はみたことがない。
これは、彼らがもともとそういった生き物だからかもしれないが、それなら、この世界にいるスライムはとっくに消えてなくなってるだろう。
何か、何かを吸収させてみればわかるのだろうが、それを調べる術も、方法もないのが痛い。
ここは、俺がレベルを上げて打開策を身に付けるしかないのかもしれない。
それか、外から来る来訪者の出現を待つしかないのかもしれない。
・・・・・・そういえば、久しくウィンドウを見ていなかった。
アルファの観察ばかりしていたから、確認するのを忘れていた。
久しぶりに確認してみるかな?
おれは、久しぶりにウィンドウのステータス画面を開いてみた。
すると、そこには以外な項目が付与されていた。
【ダンジョン名→スライムの洞穴】
【ダンジョン内→一部毒、正常】
【ダンジョンコア→囲側平田】
【ダンジョンボス→囲側平田】
【ダンジョンモンスター→スライム、ポイズンスライム】
【ダンジョンレベル→2】
【ダンジョン脅威度→F+】
【個体名“アルファ”を、生き返らせますか?
はい← いいえ】
あれ?
アルファ、生き返るの?
試しに、“はい”にしてみると、次のようなメッセージが現れた。
【アルファの蘇生には、ダンジョンポイントの消費が必要です。消費しますか?
100/100 消費→5 消費後ポイント95/100
はい← いいえ】
え?え?え??
ダンジョンポイント??
なにそれ??
ま、まあ、そこまで深い愛着はないが、物は試しだ。
アルファが生き返るなら、古い個体としてなにか変化が出るかもしれないし、うまく行けば、新しくポップさせたスライムと比較調査出来るだろう。
それに、100ポイントもあるのだ
使っても大丈夫だろう
おれは、少し躊躇ってしまったが、物は試しにとアルファを蘇生させることにした。
すると、突然体内からわずかに何かを抜き取られるような感覚があり、数秒後に俺の目の前にスライムが現れた。
おおお!!
成功したぞ!!
やった!!
同じ個体なのかはさっぱり見分けはつかないが、とりあえず成功したはずだ!!!
しかも、このスライム
今までの様にどこかへ行こうとしないぞ?
なんだかその場で跳び跳ねてる・・・?
お?お?お?
なんだなんだ?
喜んでるのか?
そんなのんきなことを考えていると、急にスライムが俺の目の前まで近付いてきて急停止し、その身体を細長く伸ばして、伸ばしたそれをこちらに近付けてきた。
ん?
あれ?
なんだなんだ??
何をする気だ?
今までの個体はこんなことしてこなかったぞ?
てかまてよ?
その伸ばしてきてるのなに?
まさか、俺への攻撃?!
え?!
謀反?
謀反なの?!
【よくも見殺しにしてくれたな】って感じ?!
あ、いや、あれは、だって調査のためだし?!
ま、待つんだアルファ君!!
アルファくんだよね?
お、俺は悪気があって君を見殺しにした訳じゃないんだ!!
あ、まって!!
もうすぐそこまできてるし!!
は、話せばわかる!
た、頼むまってく・・・ぎゃーーーー!!
なんかすごいヒンヤリするぅー!!!!
俺の抗議もむなしく、アルファの身体は容易く俺に触れた。
よくわからないが、このまま何かしらの事が起こるのだろう
ああ、短いダンジョン生だった。
もし、生まれ変わるなら、今度は自由に身体が動かせる生き物になりたいなぁ
【あ・・・・・・いぃ】
・・・・・・んん?
なんだ?
とつぜん、目の前にメッセージウィンドウが表示され、そこにいまのような文字が現れた。
思わず、首をかしげるような素振りをしたつもりになったが、すると、アルファの様子に変化が生まれた。
なんと、アルファが身体を斜めにしているのだ。
ためしに、俺はその場で跳ねるような動作をしたつもりになると、なんとアルファがその場でピョンピョンと跳び跳ね始めたではないか。
こ、これはもしや!!
蘇生に伴った何かしらの特典?!
念願の、意志疎通能力?!
または、命令が通じてる?!
すると、アルファがまるでそれを肯定するようにプルプルと身体を震わせた。
お、おお!!!
反応した、反応したぞ!!!
こ、これは大進歩じゃないか?!
あー、えっと、何て声をかければ言いかな?
久しぶりの会話だし、えっとえっと
ーーーーーこ、こんにちは??
俺はしどろもどろしながら、とりあえず挨拶をしてみる。
すると、スライムが激しくブルリと震え、なにやらしばらく硬直していたが、すぐにまたウィンドウが現れ、そこに文字が現れた。
【・・・こ、こんに、ちは・・・なに、それ?・・・わか・・・ない】
すると、そこには途切れ途切れではあるが、確かに言葉が現れていた。
おれは、あまりの嬉しさに狂喜乱舞してしまいそうになった。
だがそうすると、アルファにそれが伝わり、代わりに狂喜乱舞してしまうかもしれないので、何とかそれをこらえた。
それでも、嬉しさは伝わったようで、プルプルと身体を震わせていた。
そして、おれははじめて出来た話し相手に改めて挨拶した。
「おはよう、アルファ
君が、俺のはじめての話し相手になったスライムだよ?」
すると、アルファは首をかしげるような動作をして、ウィンドウに【?】をたくさん出現させたのである。
どうやら、生き返らせたばかりだからなのか、スライムはもともとそれくらいの知能なのか、あまり話を理解できないのかもしれない。
まあ、時間はたっぷりあるのだ。
ゆっくりと親睦を深めていこう。
俺は、ダンジョンになって約30日目にして、ようやく意志疎通の出きる存在を手に入れたのだ。
そして、これが、この世界にとって初めての
“意思を持ったスライム”
の誕生だったのである。
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