生きてるだけで罪らしい。
甜波
第1話 血の匂いが嫌い。
「はぁ、はぁ、はぁ…っ!」
レンガに彩られた道を走り抜ける1人の少女。
その姿は異質で、宵闇に暮れた
街の中でも一際目立っていた。
紫色の髪の毛に、紅と蒼の瞳。
傷だらけの顔からは赤い血が滴っている。
彼女の名前はアシェル・アシスタシン。
この世界で対立し続ける
「人間」と「吸血鬼」
の間に生まれた忌み子である。
彼女は逃げていた。
自分を嫌う全てから。
自分の命を狙う同じくらいの齢の少女から。
レンガに彩られた道を走り抜ける1人の少女。
その姿は他の人とそこまで変わらない。
しかし、内面に秘めた力は、大きな都市の
中でも一際目立っていた。
彼女の名前はシャレード・アルミリア。
この世界で対立し続けるふたつの一族の1つ。
「人間」に生まれた鬼才である。
アシェル「はぁ、はっ、あ…!」
もうどれくらい逃げただろう?
頭がぐらぐらして何も考えられない。
ガッ
アシェル「あっ…!」
欠けたレンガにつまづき、小さな体を
投げ出してしまうアシェル。
コツ、コツ…
アシェル「ひっ…!」
近づいてくる足音。
シャレード「…見つけた。」
アシェル「や、だ…っ!助けて、
ごめんなさいっ!!」
アシェル「やだ、やだ!あなた達が私たちを攻撃するのは私たちがあなた達を食べるからでしょ!?私は人を食べたことなんてないし血を奪ったこともない!!半分は仲間なんだよ!?お願い、助けて…!」
泣きながら命乞いをする敵を、
シャレードの目は冷たく射止めていた。
シャレード「…それは貴方の都合でしょう?」
アシェル「へ…?」
シャレード「私にはあなたが私の仲間かも
貴方が人を食べる食べないも関係ないの」
シャレード「こっちにだって事情があるのよ。貴方をみすみす逃したら殺される。」
すうぅ…っ
シャレードの指に光が集まり、放たれる。
アシェル「ひっ…!!」
すんでのところで交わし、アシェルは立ち上がった。
アシェル(まだ、死ぬわけには…っ!)
脳裏で2人の顔がちらついて、消えた。
紫色の髪の毛が夕闇に溶けていった。
生きてるだけで罪らしい。 甜波 @eru0331
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