第43話 エピローグ
「クラウス、私申し訳なくて」
「何が?」
「今まで自由に生活していたのに、お城での生活は窮屈じゃない?」
「結構窮屈だな。第一、なぜ家が石でできてるのか不思議でしょうがない。そんなに敵がいるのかな?」
「そのようね。攻めてくることもあるらしいから。我慢することも多いでしょう?」
「そうだな。ローゼマリーはどこへ行くにも、警備がついてなきゃいけない。一緒に川へふらりと釣りに行くこともできないよ。リベール王国の生活からは考えられない」
「クラウスが、ここを出て行きたくなっちゃったらどうしよう」
「そうしたら……一緒に出て行くしかないな」
「ああ、良かった。クラウスだけがここの生活が嫌になって、一人で出て行っちゃうんじゃないか、心配だった」
「そんなわけない。大丈夫だ。その時は一緒に連れてくからさ。でも、ここの生活も悪くないよ。大雨が降っても流されることはないし、縁談の相手に会わされる心配もない」
「私が姫だったからこうなっちゃったのね。ごめん! クラウス」
「そんなの仕方ないさ。ローゼマリーの責任じゃないし、出会った時から君はどこかのお姫様だと思ってたから」
「最初からそう思ってたんだ……」
「うん、まあそうだな」
何処かのお嬢様だから、家に帰してあげれば褒美がもらえると思っていたのは誤算だったが。
リンデルが、じっとローゼマリーの方を見て何か言いたそうにしている。
「あら、今日はメイドの服をお召しになって。何をなさってるんですか」
「ついつい懐かしくなって……借りちゃったのよ。だって、女王様の服はひらひらしすぎてて、歩きにくいんだもの。たまにはいいでしょ、リンデル。お城の中だけよ」
「全くしょうがない女王様。クラウス様もなんですか、その格好は?」
クラウスは、薪割をするときによく履いていたズボンを履いている。歩きやすいからだ。その格好でお二人で外にいたら、召使と間違えられてしまいますよ。
「たまにはいいだろ。これで城の外にはいかないから」
なかなか、城での生活になれるのは大変だが、二人の生活は賑やかに過ぎている。
独りぼっちだった俺が、姫と出会った飛び切り素敵な生活は、この国をゆったりと流れる川のように今日も続いていく。国を追われた姫の、飛び切り素敵な笑顔と共に……
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