ボクは正面から突撃する
「馬鹿な……!? この『タテガミ』のサラサラヘアーの癒しを、凌駕した……だと!」
【ハンドオブミダース】のアサルトライフル部隊と、それを守っていたガード役を伏した
「すごかったよ、キミたち。装備に頼るだけじゃなく、左翼右翼に分かれたチームプレイ。ガード役も射線を防がないようにする立ち回り。基本に忠実をしっかり叩き込んであったね。
だけど難点あげるならリロードの隙かな? リロードする時は声掛けして、隙を塞いでくれるような配慮があればいいかも」
戦いを反芻し、頷く
「言ってもここまで対応するゾンビは稀かな。AYAMEあたりは気にせず特攻してきそうだし」
潤沢な装備と基本に充実な鍛錬。おおよその相手はこれで蹂躙できる。ただまあ、
「普通、躊躇なく飛び込んできますか。あのタイミングで……」
「弾丸数は覚えてるからね。大体これぐらいでリロードするって知ってれば余裕だよ」
「んな無茶な……」
それだけ言って【ハンドオブミダース】のガード役は力尽きた。癒しタンクとか厄介だったけど、
「ふ、このボクを倒すには役不足だったね。……あれ? 役者不足?」
「白夜様との戦いで満足されない、という意味でしたら役者不足ですわ」
首をひねる
「どうもありがと。国語は苦手でねー」
「語学の勉強は人生を豊かにしますわ。語学だけに限りませんけど。晴耕雨読の精神で学んでみるのもよろしくてよ
「御忠告痛み入るよ。落ち着いたら頑張ってみようかな」
「……頑張る、と言いましたわね。貴方、何を頑張っているのです? ハンターを殺さずに挑発し、戦いを挑む。最初はこの戦い自体が目的だと思っていました。孤軍奮闘獅子奮迅。群雄割拠を求める修羅羅刹なのかと」
油断なくこちらを見据えながら訪ねてくるフローレンスさん。その間にも目に見えないところに隠密部隊が配置されているのが気配で分かる。
「ひっどいなぁ。こう見えてもボクは平和主義なんだよ。面白おかしくゾンビハンターを楽しめればいいって思ってたのに。なんでこんなことになったんだろうね」
思えばここまで来た経緯はトンデモ展開ばかりだ。
そもそもの始まりはゲーム世界へのTS転生。ボク可愛いって思ってたらハンターランクによる差別。その撤回とばかりに頑張ってたら
せっかくゲーム世界にやってきたのに、楽しむ余裕なんてありはしない。ゾンビでアポカリプスな世界だからスローライフとかは無理だろうけど、転生特典とかでいろいろステータスに補正があって、ボクに都合いい世界になんないかなぁ。
「ボクはボクが奪われたものを取り返すだけだよ」
「つまりはハンターに対する復讐ですか? それにしては我々に対する対応が甘い気がしますが」
「そりゃそうさ。その『奪われたもの』っていうのが、ハンターの日常なんだからね!」
問答は終わり、とばかりにバス停を構えて走る
「復讐の炎に身を焦がす魔人よ。その
「やみほのおとか、こくえんとか、わざわざ言いにくくない?」
「カッコイイはすべてに優先するんだよ! コホン、……これが
襲ってきた【ダークデスウィングエンジェル零式】のセリフにツッコミを入れる
でもまあ、言いたいことは理解できる。
「うんうん。ボクもボクカワイイが最優先だからね。その気持ちはわかるよ」
「バス停が?」
「バス停が」
「……これもまた多様性ということか」
疑問符を浮かべられたが、断言したら納得してくれた。まあ、攻撃したりつぁれたりなのであまり口論している余裕なんてないんだけどね!
「それにしても相変わらずガッチガチだな!」
フローレンスさんの親衛隊相手にバス停を振るう
もう少し強く踏み込めば一人ぐらい倒すことはできるだろうけど、それをすれば隙も多くなり
「しかも隠密部隊が、油断できない!」
加えて、親衛隊の攻撃からわずかにずらして襲ってくる三クランの隠密部隊。【ハンドオブミダース】はカランビットナイフの『三日月』(結構な課金アイテムだよ、これ!)をもって襲い掛かってくるし、【ダークデスウィングエンジェル零式】は閃光弾をはじめとしたバッドステータスでこちらを押さえようとする。そしてライフルとクナイで波状攻撃を仕掛けてくる【聖フローレンス騎士団】も侮れない。
『やーん、わちゃわちゃし過ぎ―!』
AYAMEあたりなら対応でパニくってそんなことを叫んでいただろう。ぶっちゃけ、これに【ハンドオブミダース】のアサルトライフル部隊か、フローレンスさんの親衛隊にさっき倒した……えーと……髪触ってた癒しタンク。名前忘れた。そもあれそのあたりがいたら、
「――え?」
フローレンスさんの表情が
その変化に対応すべきか否か。自分の感を信じられるか否か。冷静に考えれば追い込んでいるのは自分で、今の流れを断ち切ることは正しいのか。その『常識的』な判断が命令の遅れにつながったのだろう。
「いっくよー!」
バス停を構え、地を蹴る。線路の砂利を踏みしめ、隠密部隊が襲撃してくる瞬間に合わせてバス停を振るった。出合い頭に攻撃を受け、避ける間もなくバス停に頭部を殴打されて気を失う。
連携の起点を崩し、わずかに浮足立ったところを攻める
「な、何故我々が攻めてくる場所が読めるんだ!?」
「決まってるさ。ボクが隠密系キャラならこう攻める。スペックとステータスを理解すれば、最適解を選ぶのは当然だもんね!」
「スペック? ステータス? 初見でわずかに交戦した程度の我々の装備と能力を見切ったというのか!?」
「とーぜん! ゲーマーなら全装備の知識があって当然だもんね!」
げーまー? そんな怪訝な顔をする余裕さえも与えない。バス停を振るい、
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