ボクは女子トークをする
「わはははははははは! カオスちゃんなにやってるの!?」
「うるせぇ! 油断したんだよ、これは。本気でやればこの俺が負けるはずがないんだ!」
「うけるわー。マジウケル! 超草生える!」
――あの後、人がいない隙を見計らって【バス停・オブ・ザ・デッド】のテントに戻る
うっそだろ、って驚く
その後AYAMEを誰にも見られないように人がいない時期を見計らって移動し、一息つく。元々四人プラス
で、折角なので
「だって、あんだけ人間に負けないとか言ってたのにこのザマ! ねえよっちー、知ってる? こいつ俺は最強の不死能力とかイキってたのよ。なのにこの姿……あははははは!」
「くっ! 覚えてろよ。復活したら後悔させてやる!」
「はいはい。その時は相手してあげるわ。にしても……マッパのカオスちゃん、可愛いわよ」
仲がいいのやら悪いのやら。AYAMEはカオススライム(ぬいぐるみ)をいじりながら楽しそうにしていた。カオススライムも嫌がってはいるが、本気で拒絶しているわけでもなさそうだ。憎まれ口の叩きあい、と言った所か。
ちなみに服は
「……くぅ! 貴重な水着データーが……!」
ちなみにファンたんはスマホと共に内蔵データが破壊されたらしく、かなり落ち込んでいた。
「今回に至ってはむしろ良かったんじゃない? 悪いけど今回の事は色々口止めしてほしいし」
「分かってるっスよ。さすがに
「ヨーコ先輩の決めたことに反対はしませんが、出来る限り事は隠密に。そして短期間で済ませる必要があります」
福子ちゃんが空気を入れ替えるように真剣な口調で告げる。
福子ちゃんのスマホに示されているのは現状の北区の状況だ。ハンター委員会、更新速いね。市役所と港のゾンビ数は五〇体未満。デパートは未だに二〇〇体以上いる。そして警察署は四〇〇体と言う大所帯だ。
「今日のハンター達の働きで市役所は開放。『原因不明の津波』で港に居るゾンビはほぼ壊滅状態です。デパートにはまだかなりの警察ゾンビがいるようですが、時間をかければ倒せる数でしょう」
「ふーん。ま、裁判女をぶっ潰せばあのケーカンも大人しくなるんじゃない。あの女警察署に居るんでしょ? なんでデパートの事言うの?」
「確かに警察署に行けばユースティティアがいます。ソレを倒せば警察ゾンビの統率もなくなるでしょうけど……警察署を攻めればデパートから増援が来ることが予想されます」
これはハンター委員会の見解だ。本丸である警察署を攻めれば、『港』『市役所』『デパート』に居る警察ゾンビが援軍にやってくる。その為、警察署を攻める前にこの三ヶ所に居るゾンビ数をできるだけ減らしておかないといけない。
「選択肢はみっつあるネ。時間をかけて防衛に徹して、警察ゾンビの数を減らしてから攻勢に出る。次がデパートの警察ゾンビを掃討してから警察署を攻めるパターン。最後は増援覚悟で警察署特攻デス」
指を立てながら告げるミッチーさん。
最初の作戦は、ハンター委員会が推奨する作戦だ。相手のフィールドではなく、こちらが構築した防衛ラインでゾンビを迎え撃ち、数を減らしていく。時間はかかるが被害は最も少なくなる。……こちらの食料や弾丸などが持てばと言う条件が付くが。
次の作戦は、ハンターらしい行動だ。自らゾンビを狩り、その数を減らしていく。危険はあるが、その分ゾンビの数を大きく減らすことが出来る。
最後の作戦は、その発展系……と言うか尖り過ぎた作戦だ。敵将を狙えるが、背後をゾンビに突かれることもあり危険性は高い。
その中で
「そんなの決まってるじゃん! 最速最短で敵ボスをぶっ倒す! 敵は警察署にあり!」
「はい。音子、洋子おねーさんはそう言うと思ってました」
何かを諦めたような音子ちゃんのため息。
まあ、色々無茶だとは思うけど、勝算がないわけでもない。
「大丈夫だって。こっちにはAYAMEもいるんだし。それにあのゆーすてぃあは大橋で一度戦って追い返してるんだから。勝てる勝てる!」
「ユースティティア、です。
ですがそうですね。大橋で一度あのゾンビと戦って、ヨーコ先輩は撃退しています。あの時は
そうそう、ゆーすてぃてぃあ。一文字足りなかった。
楽観思考だが、大橋で相対した時は特に問題なく撃退できた。ゲーム的に言えば大橋では
「ま、方針が決まったならどう行動するかデスね。
とはいえ、ユースティティアに向かって一直線以外の選択肢はなさそうデスよ。それ以外だと警察ゾンビに数で押されてしまいマス。四〇〇対四とかマジ手詰まり」
「……普通はユースティティアにつく前にゾンビに阻まれてアウトっすよ」
ミッチーさんの言葉にファンたんが恐る恐る挙手する。四〇〇体の警察ゾンビは十にすら満たない数で攻めるには、あまりにも膨大な数。しかもこれに援軍までくるのだ。ミッチーさんの策しかないのは間違いない。……まあ、ファンたんの言う事も理解はできるけど。
「ま、無理だと思ったら即撤退かな。退路は確保しながら、突撃で!」
「雑ですが、最短を目指すなら確かにそれしかありませんね」
「作戦決まった? じゃあ女子トークしよ!」
明日の方針が決まったことを確認し、AYAMEが声をかけてくる。カオススライムをいじり倒すのにそろそろ飽きてきたらしい。
「女子トーク……。まあ手伝ってもらえるお礼と思えば」
言ってAYAMEに向き直る
「よっちーとコモリんてどこまでイってるの? もうシた?」
何気ないAYAMEの一言にざっくりと精神を突き刺され、僕は石化したかのように動けなくなった。
「お、ええ……あの、なんでそんなこと、きくの?」
「女子トークってそういうモンでしょ? あ、まさかと思うけどよっちー隠してるつもりだった? だったらゴメンネー」
どうにか紡ぎ出した一言に、あっけらかんと答えるAYAME。
真っ直ぐな指摘に思考が止まる。自分でも赤面しているのが分かるぐらいに、体中が熱かった。
「想像にお任せします」
「あは。そんなこと言われても、あやめちゃんわかんなーい」
福子ちゃんはそう言ってはぐらかすが、ほとんど答えを言っているようなものである。何も言えずに固まったままの
「わかんないから、よっちーを誘っちゃお♡ ねえよっちー、あやめちゃんとあまーい一晩過ごさない?」
言って
「ヨーコ先輩」
「はひっ! わ、分かってるよ。その、女子同士のおふざけ、だから!」
「ぶー。ノリ悪いぞ、コモリん。ガチ嫉妬は最終手段にしてよね。ちょっとふざけただけなんだからー。
ま、よっちーのこと諦めたわけじゃないから。いつでもあやめちゃんの所に来ていいんだよ。待ってるわ。目くるめく拷問でよっちーを染めてあげる♡」
「オウ、これが日本のことわざでいう所のシュラバですネ。爆発一歩前ヨ!」
「洋子おねーさんがしっかりすれば問題ないように思うんですが、音子には分からない何かがあるんですね」
「ううう……。この百合三角関係! これこそ録画して後で見返したいのに……! 心のメモリーに保存するしかないッス!」
そんな神経を削られる女子トークは、寝る直前まで続いた。
(女子トーク……怖い!)
女子トーク。
それは男の僕には踏み込めない領域なのだと、改めて知らされた――
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