ボクの欲望とか渇望とかそんなの
「そんなわけで買い物だー!」
食事を終えた後に、買い物の為に売店による
「おっちゃーん。ラジカセと対刃服強化お願い!」
「おう。しかしさっきは災難だったな」
ショップNPCの緒方のおっちゃんが
「どっちが正しいかわからないから何も言わなかったが、あの野郎の普段の素行を考えるとなあ」
「あっはっは。まあそう言う事もあるってことで!」
その件に関してはそれで終わらせる。おっちゃんもそれ以上は何も言わなかった。
そんなわけで買い物と服の強化だ。メインのラジカセといつもの『抗ゾンビジュース イチゴミルク味』を買い込む。
「私は『眷属の餌』を。あと『鬼の角』を『鬼角笛』にしてください」
福子ちゃんが頼んだのは
そして『笛』と言うのは
「眷属も10匹もいると大変だねー」
「ええ。すぐに尽きてしまいますの」
このゲームにお金の概念はなく、『眷属の餌』も当然無料でもらえる。だが消耗品の類はハンターランクにより貰える最大数が決まっているのだ。なので福子ちゃんのランクで10匹使役するのは、本当に大変なのである。
「早くクランを作らないとね。荷物の共有化が出来るし!」
クランの特権としてアイテムボックスの共有化がある。クラン員の許可があれば、互いのアイテムボックスのアイテムを共有できるのだ。
ボクはあまり荷物持たないので、福子ちゃんの眷属の餌を持つことで眷属を長く使うことが出来るようになのだ。
「クランか。その為の対刃服強化か」
おっちゃんは
「うん。そうだよ。あ、ボクの服は速度強化でヨロシク!」
「……まあ、オーダーには従うが……大丈夫なのか? この制服だとチェンソーザメの攻撃を受ければお陀仏だぞ」
「喰らわなきゃいいんだよ」
「……オーダーはこなす。それがプロだ」
だけどおっちゃんは渋い顔をしてそう返した。むぅ、何が不満なのさ。
そんなわけで脱衣所で服を抜いて、ジャージに着替える
「……いや、それは本当にどうなんだろうかと自分でも思うんだけど」
自分の裸に見惚れて欲情しちゃうとか、なんかナルシストみたいで色々気持ち悪いんだけど、でも元々この体は僕の身体じゃなくそして僕は男なんだから、むしろ何も感じない方がおかしなわけで。
「どうしたんですか?」
悶々とそんなことを考えていると、福子ちゃんが声をかけてくる。
「ううん、何でも――」
ない、と言いかけて口が止まる
「? あの、本当にどうしたんです? いきなり固まって」
「いや、あの……なんでジャージじゃないの!?」
そう。
福子ちゃんが来ているのは白のスポーツブラとオーバーパンツ。しかもスポーツブラはハーフトップサイズ。胸を隠しておへそ丸出し状態なのだ。
「ジャージだと背中の羽根が邪魔になるんです」
言ってくるっと回転して背中を見せる福子ちゃん。成程、背中にあるコウモリの羽根はジャージを着ると邪魔そうだ。なっとくなっとくー。
(じゃなくて! あと背中見せられたら、お尻が! オーバーパンツって結構ボディライン出るんだね! はじめてしったよー!)
まだ未発達ともいえる14歳のボディ。しかしそれは今なお成長を続ける途中であるという事。スポーティな布一枚に隠れたそこには、確かにその兆しがあるのだ。
「えーと……もしかして光華学園てみんなそんな感じ? 背中から羽生えてる子は皆スポーツブラ?」
「ええ。尻尾が生えている人は、此処に穴をあけていますわ」
お尻を軽く突き出すポーズでぱんつの少し上あたりを指す福子ちゃん。うーん、遺伝子操作って恐ろしい!
「それは……体育の授業とか大変だよね。男の子に見られたり」
「そんなの別々に決まっていますわ。男子は男子で上は裸ですのよ」
ワイルドだなぁー。さすが
いや、そんなカルチャーショックを受けている場合ではない。今目の前にある危機に耐えなければ!
「その……恥ずかしくない? そんな格好で」
「体育の度にこの格好ですからもう慣れましたわ。男子に見られているわけでもないですし」
ココに男がいるんデスー。僕は心の中でそう謝罪した。
……いや、確かに僕は男だが、
「そっかー。慣れてるんだー」
言いながら見る。見ちゃう。だって見ないと不自然なんだし。相手の方を見ないで会話するのは失礼だもんね。だから仕方ない。っていうかそれが普通なんだから。
(……うわー)
そこには一つの芸術があった。
背中まで伸びた銀色の髪。宝石のような碧眼。いつもは黒いゴシックドレスで隠されている、陶磁器を思わせるほどの白い肌。
白のスポーツブラのふくらみは、幼さから少し大人に成長している証。すらりと伸びた方からお腹、そしてお尻へのライン。オーバーパンツから伸びる太ももは、細くすらりと伸びた御人形のよう。
(うわーうわーうわー)
まるで人形のような。使い古された表現だけど、まさにそうとしか言いようのない福子ちゃん。それは普段のゴスロリなハンター姿もそうなんだけど、いまその服を脱いだ素の彼女はまた別の魅力があった。
「あの、ヨーコ先輩?」
「ひゃい! あの、おいくらまんえんですか!?」
「はい?」
「いや、違う。うん。冷静になったぞ、ボク!」
頬を叩いて正気に戻る僕。
そして理解する。やっぱり僕は男で、
(これはいろいろ危ない! 具体的にどう危ないかはわからないけど、欲望のままに突っ走ったら止まらなくなる!)
問題はそれが福子ちゃんに襲い掛かるという事だ。
「そ、そう言えば他にも変わった事とかあるなら教えてほしいな! 光華学園てよく知らないし!」
「え? そうですわね。授業では生物学がかなり多岐にわたっています。高校では海洋学まであるとか」
「へー、それで福子ちゃんはどんなことを学んでるの?」
矢次に質問をして、
こうして天国のような地獄のような時間は、強化された服と角笛が帰ってくるまで続くのであった。
「まあ、橘花学園ではそんなことがあるんですね。意外でしたわ」
『普通』である橘花学園の日常に笑う福子ちゃん。
とにかくこの笑顔を守ったんだ。僕って偉い。
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