ボクは言いがかりをつけられる
「お前、後藤さんが攻撃していた『
話しかけてきたのは同級生のハンターだ。体格の良さから、装備品を多く持てる『
「横殴りぃ?」
横殴り。他の人が戦っている敵キャラに許可なく殴りかかる行為だ。ゾンビのドロップ権は殴った人間とそのパーティにのみ存在するので、横殴りは基本推奨されない。端的に言えば、漁夫の利を得ようとする行為なのだ。
「……って、もしかして?」
そういえば、『
おそらく
「思い当たる節があるようだな?」
「いやないよ。だって後藤、逃げて行ったじゃないか。一緒に殴る、って誘っても断って――」
「誰が逃げたって? 聞き捨てならないなぁ」
肩をすくめる
「ちょっと、話しようじゃねぇか。こっち来いよ」
「やだよ。ボクはこれからご飯食べるんだから」
「うるせぇ! 黙ってハンターランク10の俺様の言う事に従いやがれ!」
席に座ろうとする
「ふん、つまらないですわね。それぐらいにしなさい、
「なんだ? その羽根は光華学園のモノか?」
そんな後藤を鼻で笑うように福子ちゃんが制止をかける。
「貴方は逃げたのです。それは私もしっかりと確認していますわ」
「逃げたんじゃねぇ! ウィルスを鎮静化させると同時に、射撃ポジションを確保するために移動中だったんだ!」
「結果としてそれを得られず、逃げ帰ったんでしょう?」
「黙れ! どの道、横殴りしたことには変わりねぇ! あともう少しで倒せるところだったのに!」
後藤と福子ちゃんの口論は、そこから平行線になる。
逃げた逃げてないというのは、第三者から見ればわからない事だ。そして事実として、
まあ『
「だいたいなぁ! ランク0のネタ武器女があの『
「そうだそうだ! あんな武器で『
「だいたいランク0であそこまで行けるわけがない! そこの光華学園の女に付き添っただけなんだろうが!」
ヒートアップした後藤の矛先が、こっちを向く。そしてそれに乗じるように後藤の取り巻きと思われる人たちも乗ってきた。
「ありえねぇんだよ! あんなネタ武器で近接パワーゾンビの『
「全くだ。そんな簡単に倒せるわけがない! ランク10の後藤さんですら、どうにか勝てるかどうかぐらいなのにな!」
「たまたま傍にいて横殴りしただけのネタ女が! 恥を知れ!」
とことんヒートアップする生徒達。うわぁ、容赦ないなぁ。
人間、ストレスのはけ口があるとどんどん加速していく。『自分が正しい』という燃料が理性のブレーキを溶かしていくのだ。
「――恥を知るのは貴方達です! ヨーコ先輩は『
「それこそ犬塚が倒してドロップしたかどうかなんて、証拠はないだろうが! 大体お前も――」
「でも少なくとも、ライフルでこの切り傷は無理なんじゃないかな?」
その矛先が福子ちゃんに向きそうになったので、口を挟む。
部位破壊系のドロップアイテムは、その部位をどの属性で攻撃したかでドロップ率が変化する。ライフルなどの弾丸は貫通系で、『鬼の角』のドロップには適さない。バス停などの斬撃系が適しているのだ。
「そ、そうかもしれないけど――」
「まあ、この話は一旦保留にした方がいいかな? ここは皆が使う学食だ。大声で口論する場所じゃない。
っていうか、ご飯冷めちゃうよ。福子ちゃんも座って」
話を無理やり収める為に、手を振る
「おい。無理やり誤魔化すんじゃねぇよ。ランク10の俺様に逆らうなんざ――」
「あ、さっき付けで僕のランク12になったんで」
なおも言い寄ってくる後藤に、生徒手帳を見せる
「何っ!? ば、馬鹿な、ありえねぇ! テメェ、ズルしたな!」
「してないよ。きちんと『
キミも『
「……ちっ! そいつも横殴りして得たドロップアイテムのおかげだろうが!」
言いながら背を向ける後藤。
ランクが自分より上なのは事実だから、『そのランクは俺の功績を奪った結果だ』と無理やり話を収めたのだ。
後藤の取り巻き達も、そう言う事なんだろうと納得して一緒に帰っていく。だけど、ある程度頭の働く人は疑問に思っているはずだ。どちらが正しいのだろうか、と。
ともあれ、少し冷めたご飯を食べ始める
「皆酷いです! ネタ武器ってだけでヨーコ先輩を信用せずに、あの嘘つきの言葉を信用して!」
福子ちゃんは怒りの声をあげながらパスタを口にしていた。
「まー。近接武器が信用されないのはしょうがないもん」
とかく、この『
だからこそ
「確かにそうですけどっ! それでも頭ごなしに人の功績を否定されるのは許せませんわ!
大体ハンターランクで判断する今の風習も納得いきません!」
「あー。福子ちゃんもそこは納得できないんだ」
「当たり前です! カミラ
「おー。初めてまともなハンターに出会えた気がする! うんうん。そうだよねー」
「……いいえ。残念ですけど『ハンター権』を賛同するハンターの方が多数派ですわ。どちらが『まとも』かと言われれば、やはりハンターランクを重んじる方の方になります」
「光華学園でもそうなの?」
「ええ。光華だけではなく、六学園全てがその思想に染まっていますわ」
ハンターを称え、ハンターでない者はハンターに尽くせ。ハンターの為に環境を整え、ハンターの為に生きよ。
そんな体制など、僕は許せない。人類平等を唱えるつもりはないけど、後藤のようなハンターを生んでしまうのは認められない。
「ヨーコ先輩がランク12になったから今の場は収まりましたけど、そうでなかったら暴徒となった彼らに襲われていたかもしれませんわ」
「ま、そうなったら逃げるけどね。ばびゅーん、って」
「……どうしてそんなに軽く考えられるのですか? 酷い言いがかりじゃないですか。もっと怒ってもいいと思うのに」
「ボクが正しい、ってことを知っている人がいるならかな。ボクの代わりに怒ってくれて、ありがとう。嬉しかったよ!」
「…………どうして、そういうセリフを恥ずかしげもなく言えるのかしら……もう。怒ってる私が馬鹿見たいですわ……」
真剣にお礼を言ったつもりなんだけど、福子ちゃんは表情を見せない様に顔を俯かせてそう呟いた。
うーん、何か間違ったかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます