第4話

ネタバレ注意



とはいったものの、『ロリータ』の何を明かせばネタバレになるのか私には分かりません。本編の文章の全てが“事件”な小説の要素を少し書いたところで、『ロリータ』に傷がつくことはありません。それほど優れた小説です。強いて言えば私の読みが浅いため、既読の人たちから哄笑されるくらいでしょうか。



さてそろそろネタバレを。

実は冒頭の序文に、とある人物の運命が書かれています。しかし、初読ではほとんど気づかないのではないでしょうか。かくいう私も、指摘されて気がつきました。では、その人物とは? 冒頭の重要な部分を引用します。


「「リチャード・F・スキラー」夫人は一九五二年のクリスマスの日に、北西部最果ての入植地であるグレイ・スターで、出産中に亡くなり、生まれた女児も死亡していた。」


この、何気なく読み飛ばしてしまいかねない序文が重要だと気がつくのは、本作を読み終わる少し前です。このような仕掛けが、数多く仕込まれているため、『ロリータ』は何度でも読まれる。というよりも、読まれなければならない。


そして、この序文が終わりの方で意味を持つということから察した方もいるでしょう。『ロリータ』は、後半を読み落としてはダメなのです。前半の変態的な描写の面白さのインパクトが強すぎるため、後半の内容に踏み込んだ理解がされていないのではないかと感じる。


『ロリータ』をロリコンの元ネタだから、少女好きのための小説だというような人は、絶対に読んでいない。『ロリータ』をロリータの人生が破壊されていることを覆い隠している男性至上主義的な作品だという読解は、小説を読めていない。これらの誤解は、生じても仕方がないかもしれないが、少なくともこの文章を読んでいる人達には勘違いしてほしくない。


次回は実際の誤解に基づく読解の批判をしつつ、それがどうして間違っているかを述べて、『ロリータ』の持つ読解の可能性を述べたいです。

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