第4話 進む両者
思っていたよりも早く目が覚める。
そうとう文化祭を楽しみにしているらしい。
いや、愛華のいる文化祭が楽しみなのかもしれない。朝早くから準備があるので当たり前だが、いつもとは比べ物にもならないくらいの早さで支度を済ませ、家を出る。
こんなにワクワクしながら向かう学校も珍しいが、いつもの集合場所で集まった眠そうにしていない純平を見るのも珍しい。学校までの道のりで、自分たちのクラスはどうだとか、今日はどこを周ろうとか話すうちに、純平は少し気だるげに、
「今日、めっちゃカップルおるんやろなー。」
ここまで関西弁が強くなった純平は珍しい。今日は珍しい事が重なる日のようだ。
どこの学校でもそうなのかもしれないが、文化祭はカップルが楽しそうに色んな所を巡ったり、または、告白が様々な所で行われる。それを純平は少し羨ましくもあり、妬ましくもあるようだ。しかしそのすぐ後には、話題は俺と愛華の話に切り替わっていた。「お前、ここらで一発いっとけよ!」と純平はなんとも楽しそうな笑顔で言っている。その一発がどのような意味合いかは容易に想像できるが、そんなに簡単なことではない。少なくとも俺の場合は。
学校に着くと、いつもよりかなり早いせいだろうが、いつものような騒々しさはないが、校舎に上がると慌ただしく準備が進められていた。愛華はもう準備を始めていた。俺も急いでクラスのTシャツに着替え、作業に加わる。今日が特別な日であるためか、誰がとは言わないがとても綺麗に見える。
黙々と作業を続けていると、気づけばクラスの店を開く時間となり、最初の店番だった俺は慣れない接客を始める。嬉しいことに店は繁盛し、あっという間に時間は過ぎていった。
純平と明良の2人と一緒に色んなクラスを周っていると、前から愛華とその友達の加藤さんの2人が歩いて来ることに気づいた。向こうもそれに気づいたようで、こっちに近づいて来て一緒に写真を撮って欲しいらしく、加藤さんと写真を撮った後、愛華と写真を撮った。なんだか幸せな気持ちになって、1日は過ぎていった。
家に帰って来た後、ゆっくりとしていたところに一通のラインが来ていた。愛華からだった。写真ありがとうのメッセージと共に文化祭の時に撮った写真が送られていた。しかし、その写真は明らかに不自然であった。撮った時間帯はもちろん明るい昼間だし、撮った場所も蛍光灯が点いていて暗くないはずだ。だが、この写真は異常なほど暗く写っていた。
気になった俺は、この写真を明良にラインで送ってみた。もしかしたら、俺のスマホの不具合で暗く表示されているのかもしれない。そう思ったのだ。
じわじわと湧いてくる不安を押し殺そうと風呂場に向かった。
風呂からあがって、ラインの通知は新しく2件増えていた。1つは明良から先ほどの写真は別に暗く写ってないと言うもの。もう1つは愛華からだった。
"今度どこか遊びに行かない?"
死す者 月川原虎雅 @tora1116
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