第5話 懲りない少女

「ガパオの掟は私が守る! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 真理亜、お友達10億人キャンペーン実施中!


「出ていけ! 師匠! この道場は私のものだでござる! アハッ!」

「酷い!? この年寄にホームレスになれというのか!?」

「そうだよ!? お姉ちゃん!? ガパオちゃんをいじめないで!」

 真理亜は道場からガパオ師匠を追い出そうとしていた。

「だって、この道場は私のものだって言ったのは師匠じゃん!」

「ワシ、そんなことを言ったっけ?」

 先話を調べる楓。

「あ!? 言ってる!? この道場はお姉ちゃんのものだ!?」

「ほら見ろ。おバカ師匠。」

「おバカ師匠!?」

「出ていけ! ガパオちゃん!」

「楓まで!? 酷い!? あんまりだ!?」

 道場の所有権の変更に伴い手の平を返す大神姉妹。

「さあ、私はガパオライスを楓に教えて、将来は楓に正統継承者を引き継いでもらおう。」

「やったー! 私もガパオライスを使えるようになるんだね! アハッ!」

「楓、ガパオライスは絶対無敵の暗殺拳。あなたも戦いの世界に引き釣り込むお姉ちゃんを許して。」

「大丈夫。「暗殺拳の使い手は小学一年生」とかウケそうだよ。アハッ!」

 気楽なアハ姉妹。

「おまえたち、アハ教の目的を忘れるなよ。」

「分かってるよ。お笑いで世界征服! 目指せ! M1グランプリ! アハッ!」

「微笑みで世界征服だよ! お姉ちゃん! 少しズレてるよ!」

「アハッ!」

 アハ教は少しズレている秘密結社だった。

「これ本当に時代劇だよね?」

「そうだよ。だから剣術道場があるんだよ。アハッ!」

 時代劇に剣術訓練道場は必須。

「頼もう!」

 その時、道場に入ってくる少女がいる。

「道場破りだ!」

「また、おまえか。」

 再び現れた道場破り少女。

「また、おまえかとはなんだ! もっと嬉しそうにしろよ! せっかく会いに来てやったんだからな!」

「嬉しい!」

「わざとらしいよ。お姉ちゃん。」

「アハッ!」

 困った時は笑って誤魔化す真理亜。

「剣術で勝負だ! 今日こそは私が勝つぞ!」

「いや、いや。ここはムエタイの体術道場だから。」 

 あっさり断る真理亜。

「いいだろう。受けてたとう!」

「師匠!?」

 ガパオ師匠が剣術の戦いを受け入れた。

「なぜですか!? 我々はムエタイの体術道場ですよ!? どうして剣術の勝負を受けて立たなければいけないんですか!?」

「ガパオライスは絶対無敵の暗殺拳。剣術相手でも勝たねばならん。破れた時は死あるのみじゃ。」

「あの・・・・・・どんどんハードルが上がっているんですけど?」

「お姉ちゃんの気のせいよ。アハッ!」

「なんだ、気のせいか。アハッ! ・・・・・・って笑ってられるか!? こつちは死ぬんだぞ!?」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す楓。

「いざ! 真剣に勝負!」

 木刀を構える道場破り少女。

「こうなったら仕方がない。ガパオ流ムエタイの恐ろしさを見せてやる!」

 真理亜は戦う覚悟を決めた。

「いでよ! サイキック刀!」

 どこからともなく超能力で出来た刀が現れた。

「どこから刀が!?」

「私はタイキックでなんでも作りだせるの。アハッ!」

「サイキック! お姉ちゃん、少しズレてるよ!」

「アハッ!」

 これで刀と木刀の戦いになった。

「卑怯者!? こっちは木刀だぞ!?」

「何とでも言えばいい。こっちの刀には第二段階があるんだからな。」

「第二段階!?」

「せっかくだから見せてやろう。更なる絶望を味合うがいい!」

 真理亜は気を集中して刀に送る。

「これがライト・サイキック刀だ!」

「刀が光っただと!?」

 サイキック等がライトセイバーのように光を放ち輝く。

「どうだ! 私の刀は!」

「ヌヌヌヌヌッ!? まさか妖刀使いだったとは!? これでは伝説の妖刀の蛍光刀ではないか!? ええーい!? 油断したわ!?」

 道場破り少女には真理亜は妖刀使いに見える。

「だが、私にも勝負を挑んだ意地がある! いくぞ! 必殺! 我流! 木刀100連撃!」

 道場破り少女は決死の覚悟で突撃する。

「こい! 道場破りめ!」

 真理亜は刀を捨てる。

「なに!? 刀を放り投げただと!?」

 意表を突かれた道場破り少女。

「誰が刀で戦うと言った?」

「じゃあ!? 今までの光る刀の件はなんだったんだ!?」

「光る刀なんて、ただの飾りよ。」

 真理亜曰、時代劇に光る刀は飾り物。

「くらえ! 道場破り少女! これがガパオ流奥義! トム・クルーズだ!」

 ただのタイキックである。

「ギャアアアアアアー!? 覚えてろよ!」

 キランっと道場破り少女は蹴られて星になった。

「もう忘れたよ。」

 あっさりと勝利した真理亜。

「よくやった。それでこそガパオライスの正統継承者だ。アハッ!」

「さすが楓のお姉ちゃんだ。アハッ!」

 自画自賛の師と妹。

「ガパオの掟は私が守る! アハッ!」

 恐るべし最強の体術ガパオライスであった。

「真理亜、おまえが蹴り破いた道場の屋根を修理しとけよ。」

「お姉ちゃん明日は雨だから、今日中に直してね。」

「え? 冷たい・・・・・・そんな・・・・・・。」

 戦いには勝ち、家族には負ける。

「人は悲しみを知れば知るほど、人にやさしく出来るものだ。真理亜、おまえはまだまだ強くなれるだろう。」

「お姉ちゃん。お姉ちゃんの分もご飯は食べておくから、安心して屋根を修理してね。アハッ!」

 それぞれの思いが交差する。

「くそっ! ジジイとガキめ! いつか殺してやる! イタッ!?」

 なれない屋根の修理をしながらハンマーで間違って指を打ってしまう真理亜であった。

 つづく。

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