第6話 地に足のついた少女は幼女?

「ガパオの掟は私が守る! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 真理亜、お友達10億人キャンペーン実施中!


「強くなり過ぎたでござる! アハッ!」

 最近の真理亜の悩み事である。まさに青春! 十代特有の思春期! 大人になる前のきれいごと!

「もう少し弱くて一から始める地に足の着いた少女になりたい。」

 ガパオライスの正統継承者の真理亜は圧倒的に強くなり過ぎたのだった。

「私が強すぎて、つまらない!」

 なぜなら、全てタイキックの一撃で終わらせてしまうのがオチだからだ。

「弱くなければ、悲しみも試練も努力も生まれないじゃないか!」

 その通り。薄い共感性しか生まれないギャグストーリーにしかなっていない。

「悪いのは強くなり過ぎたお姉ちゃんよ。」

「楓!?」

 妹の楓が現れた。

「この道場で待っていて、新しいキャラクターが道場破りにやってくるシリーズでもいいけど、問題はお姉ちゃんが強すぎるのよ!」

「クウッ!? 何も言い返せない!?」

 真理亜は最強の侍だった。

「織田信長にもタイキック!」

「ギャアアアアアアー!?」

「魔王にもタイキック!」

「ギャアアアアアアー!?」

「神にもタイキック!」

「ギャアアアアアアー!?」

「な~んだ、私って強いんじゃない! アハッ!」

 勝ち誇る真理亜。

「強い分だけ、お姉ちゃんの悲しみや優しさが伝わらないのよ。悩みや弱さに共感できない! また、試練や敵、算数ドリルを克服する時の苦労や努力、葛藤というものが見えないから共感できないのよ! 共感できなければ支持もされないわ!」

「そんなにダメだししなくてもいいよねん・・・・・・。」

 妹のダメ出しに暗い気持ちになる真理亜。

「はっ!?」

 その時、真理亜は気づいた。

「この妹に姉なのにケチョンケチョンにダメ出しをされる落ち込む姿! これこそが悲しみであり試練・クエストだ! このどん底から這い上がる熱い情熱が一般大衆の共感を生むに違いない!」

 そしてギャグモノの主人公として、そうそうに立ち上がる真理亜。

「私って、天才! アハッ!」

 この良い感じ短いフレーズは流行語にもなれるだろう。

「やはり悪役や、試練が必要ね。落としてから上げる。強敵に一度負けてから諦めないで修行して強くなってリベンジ。これがストーリーモノの鉄則ね。」

「いや、だから、本作品はギャグモノだって。」

 楓は聞く耳を持たなかった。

「ということで、ここからは○○幼女ワールドよ! アハッ!」

「〇〇幼女ワールド!? クーデターだ!? 主人公の私の座が奪われる!?」

 被害妄想が強い真理亜。

「違うわよ。私はガパオライスの正統継承者の真理亜お姉ちゃんから、修行をつけてもらって、次期ガパオライスの正統継承者を引き継ぐのよ。だってガパオライスは一子相伝なんだから。」

「おお! 私が強すぎるからピカピカの小学一年生の楓を主人公にすれば、レベルが下がり弱くなる! そうすればスムーズに弱さが物語に生まれるというやつだな! さすが我が妹よ! アハッ!」

「私って、自称、天才の妹なので。アハッ!」

「自称って・・・・・・。」

「悲しみなさい! お姉ちゃん! その姿に一般大衆は優越感と同情するのよ! そして支持される作品になるのよ! アハッ!」

 天才っていうと、自称というお約束である。

「不幸! 不幸! 不幸! 物語は最初に不幸を起こさないと始まらないのか!?」

「始まらないよ。親が殺されたり、妹が鬼になったり、姫がさらわれたり、ボールが無くなったり、腕を食いちぎられたり、警察だって不幸な事件が起こらないと動けないからね。」

「そうね。日本の自衛隊も先制攻撃はできないから、一撃目で核爆弾を落とされたら反撃する前にゲームオーバーだものね。」

 他人の不幸は蜜の味。

「でも核爆弾を落とされて壊滅したのが悲しみで、そこから復興や反撃、復讐っていうのが物語ってやつじゃない?」

「ガーン!? じゃあ、誰か私たちの周りの人で死んでもらわないといけないのね!?」

「大丈夫。今回の時代劇では兄の一郎にお父さんとお母さんを殺された設定よ。」

「なんだ、そっか。アハッ!」

 不謹慎に笑う真理亜。

「両親の仇の兄を見つけて八つ裂きにする、というのが不幸や悲しみを交えたストーリーね。」

 できた! ストーリー!

「そのために多くの大切な人を亡くしてしまった。悲しい。」

 悲しみに包まれる真理亜。

「頼もう!」

 その時、道場にやって来た少女がいた。

「私だよ! アハッ!」

「また来たのか・・・・・・。」

 三度、道場破り少女である。

「遠くまで飛ばされたからお腹空いた! ご飯ちょうだい!」

「あの別におまえとお友達になった覚えはない。」

「酷い!? 人のことを蹴り飛ばしておいて!? 慰謝料と思って、ご飯くらい食べさせろ!」

 真理亜は気を集中してサイキックの力を足に溜める。

「宇宙まで飛んでいけ! そして帰って来るな! ガパオ流奥義! トム・ハンクス!」

「ギャアアアアアアー!? また来週!」

 蹴り飛ばされた道場破り少女は星になって消え去った。

「毎回、戦闘シーンがあるのはラスト5分のお約束だね。アハッ!」

 しっかりフォローする楓は良く出来た妹である。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る