第47話


「ほんとうに、アンナ嬢がキスしたの?」


信じられなくて、凪にもう一度確認してしまう。

だって、信じられない。

いったいいつの間にヒロインちゃんは凪のことを好きになっていたんだろう。


「うん、アンナ嬢」


「どうして、アンナ嬢が凪にキスするようなことになったの?」


「・・・わからない」


「そう」


凪はプイと下を向いてしまった。

何か知ってそうな感じではあるんだけど・・・。

ただ、これ以上聞いても教えてくれそうにないので、聞かないことにした。


とても気になるけど。


別に、凪が誰と恋愛しようが関係ないのに。どうして、こんなに気になってしまうのかしら。


でも、ヒロインちゃんはいったい何を考えているのかしら?


アレキサンドライト様の部屋に行っていると聞いたし、凪にキスをしたっていうし。

一度、ヒロインちゃんに確認した方がいいのかしら。


「嫌わないで?」と上目使いで見つめてくる凪の頭をよしよしと撫でまわす。

なんだか、イライラするけど気にしないふりをして、凪の柔らかい髪に指を通す。

すると気持ちいいのか、頭を撫でている手に寄せてきた。


こうしてると猫だよね。


でも、学園に知らない男の人がいてもいいのかしら。

凪、学園から追い出されたりしないのかしら??


「凪、そう言えば貴方、どこに住んでいるの?」


この学園は比較的猫に対して優しい学園だから、学園内に猫が住み着いていてもまったく気にしていない。

むしろ、猫が住み着くことに歓迎しているのかいたるところに、猫の餌が置かれている。

さらには、猫のためか木に、小さなハンモックまでかかっている始末だ。

いったい誰がハンモックをつけたのかは謎である。

だから、猫の凪であれば学園内に住んでいても問題ないのだけれど、人の姿をとれるという場合はどうなんだろう。

キスしないと人間になれないとはいえ、いきなり知らない男の人が学園内を歩いていてもなぁ。


「僕は普通に寮で暮らしているよ?」


まさかの寮だった。

誰かの飼い猫ってことかな?


「そうなの。どこの部屋?」


「華!僕の部屋に来てくれるの!?大歓迎だよ!」


そう言って、質問には答えずに私に抱きついてくる。


しかし、凪のこの姿どこかで見たような気もするんだよなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る