第46話


後ろから抱きついてきたのは、人の姿の凪でした。

こんなところで、人になっていいのかしら?

というか、キスで人になるんじゃなかったっけ??


「凪?」


「華・・・怖かった」


「どうしたの?」


どうやら、凪は震えているようだ。

私を抱く腕がプルプルとしている。

泣いているのか、声も少し掠れている。


「凪?顔みせて?」


優しく声をかけるが、凪はどうやら、顔をふるふると横に振っているようだ。

肩に当たっている凪の頭が、左右に小刻みに揺れた。


「なにがあったの?」


凪がこんなに甘えてくるなんて、なにかあったのかと不安になる。

というか、人の姿だから落ち着かない。


猫の姿なら、抱き締めてなで回すのに・・・。


「僕、華に嫌われたくないから、言わない」


言わないって・・・。気になるじゃない。

そんなに、落ち込んでいて平常心欠いているんだから、なにかあったのは一目瞭然だ。


お腹に回された凪の手をそっと、手で包み込む。

凪ってば、男の子なのに肌がスベスベしてる。羨ましい。

猫の姿の時も、毛艶よかったしなぁ。


「凪、嫌わないよ。何があっても、嫌わないよ」


だって、凪を嫌いになるなんて出来ない。私が凪に嫌われることはあっても、その反対はあり得ないのだ。


「ほんと?」


「うん、ほんと。ほらこっち向いて」


ポンポンと宥めるように、凪の手を軽く叩く。

凪の手が少し緩んだ瞬間に私は向きをかえて、凪の顔を覗きこんだ。


「凪?」


目が腫れぼったいようだ。

涙もやっぱり滲んでいる。

まったく、何があったのやら。


「・・・キス」


「キスがどうしたの?私にしてほしいの?」


問いかけると、ふるふると頭を横にふる。

どうやら、キスをして欲しい訳ではないようだ。


「華からのキス欲しいけど、欲しくない」


「なんで?」


「キス・・・された」


ん?それで、こんなに落ち込んでるの?


「誰に?」


猫の姿の凪にキスをしたってことよね。いったい誰が?


「華といつも一緒にいる女の子」


「ヒロインちゃん!?」


コクリと頷く凪。


私の頭の中には疑問符が浮かぶ。

何故、ヒロインちゃんが?

なんで凪にキスをするの?

隠しキャラだから?


なにが、なんだかわからない。

いったいどういうこと!?

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