第32話


私が倒れた次の日。

大事をとって授業は休むことになった。

部屋で横になっていると、リザがやって来た。

5匹の猫様と一緒に。


「ティーガ、クロロ、ギュリン、フィラー、ヤン。いらっしゃい。来てくれたの?」


猫様たちは「にゃあ」と鳴きながら、私の側までやってきた。

そうして、ベッドの上に飛び乗ってくる。

私の顔の側まできて、ペロッとティーガとクロロがそれぞれ、左頬と右頬を舐める。

ギュリンとフィラーはそれぞれ左手と右手の甲を舐めている。

ヤンにいたっては、胸元の顔をグリグリと押し付けてくる。

どうやら、猫様たちも心配してくれていたようだ。


「ありがとう」


それぞれの頭を優しく撫でる。

すると嬉しそうにゴロゴロと喉をならす猫様たち。


可愛い。


もう、どうしてこんなに可愛いのかしら。


・・・ナギ様も来てくれたらいいのに。


前世で見つけた猫様。白猫の凪はとてもナギ様に似ていた。

あの頃は凪にさわれることはなかったけど、今は健康な体を手に入れているので、猫様にさわり放題だ。

どこか凪にそっくりな凪様。今世では、うんと可愛がって幸せにしてあげたい。

今度こそ、凪を守りたい。


凪を守れなかった・・・。


でも、何から守れなかったんだっけ?

そこが、まだ靄がかかっているようで思い出せない。

きっとまだ、私が受け入れる準備ができていないんだろう。


「貴方たちはナギ様のこと知っている?とても可愛い白猫様なのよ」


猫様たちを撫でながら確認すると、ティーガがピョイッとベッドから降り、外に出ていってしまった。

どうしたんだろう、ティーガ。

他の猫様たちはキョトンとした目をして相変わらず私にひっついている。


ぐうかわ。


可愛いは最強です。

すり寄ってくる猫様たちに囲まれて、今、私は幸せです。


幸せを噛み締めていると、ティーガが戻ってきた。

そして、私の方に寄ってくるかと思うと後ろを振り返り「にゃあ」と鳴いている。

いったいなんだ?

と思ってみていると、真っ白い毛玉もといナギ様がトコトコとやってきた。

どうやら、ティーガは私の言葉を拾ってナギ様を呼んできたようだ。


「ありがとう、ティーガ。ナギ様、こちらにいらしてください」


ナギ様に手を伸ばすと、ナギ様がゆっくりとベッドの上に飛び乗ってきた。

そして、私にすり寄ってくる。


可愛い。

凪もこんな手触りだったのかなぁ。

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