第31話
一瞬だけ浮上した意識だったが、またすぐに意識を失ってしまった私が次に目を覚ましたのは、寮の自室だった。
パチパチと何度が目を瞬きさせる。
あれば夢だったのだろうか・・・。
考えるように思考を巡らせたとき、部屋のドアが開き、水差しを持ったリザが入ってきた。
視線だけをリザに向ける。
身体は力が抜けたように動かないのだ。
「・・・リ・・・ザ」
喉がカラカラなのか、声が掠れてしまった。
リザが目を丸くして、小走りに近寄ってくる。
「アルメディアお嬢様!目が覚めたんですね。よかった・・・。よかった・・・」
いつもは冷静なリザの目から涙が溢れ落ちる。
どうやら、リザをとても心配させてしまったようだ。
リザの手を借りて、寝ていた体をベッドに座る体制に変更する。
そして、リザから水差しからコップに移し変えられた水を受け取り、飲む。
どうやらよほど喉が乾いていたようで、あっという間に水を飲み干してしまった。
「アルメディア様。アルメディア様がお好きなリンゴもございます。いかがですか?」
そう言って、リンゴを口元まで持ってきてくれる。
リンゴは大好きだ。
よく、春兄が剥いて食べさせてくれたのがリンゴだった。
春兄はリンゴをウサギ型にしてみたり、星形やハート型にして食べさせてくれた。
私を膝に乗せて。
小さい頃からだったし、他にしゃべる人なんていないから、リンゴの食べ方は膝に乗って食べるものだと思っていた頃もあった。
今思うととても恥ずかしい。
「食べる。リザ、食べさせて?」
「わかりました」
昔の記憶を思い出して、甘えたくなってしまったから、迷わずリザに甘える。
覚えば病気になったときはいつもリザに甘えていた気がする。
これも、きっと前世からの癖かしら?
リザにリンゴを食べさせてもらいながら、どうやって私がここまで帰ってきたのかをリザに訪ねた。
「アレキサンドライト様が気を失っているアルメディア様をお姫さま抱っこで運んできました。なにがあったのでしょうか、アルメディア様。アレキサンドライト様はとても辛そうな表情をなされておりました」
「春兄・・・ごめんね。私が思い出すことを拒絶したばかりに辛い思いをさせて。でも、まだ思い出すには辛すぎるの。」
「アルメディア様?何かおっしゃいました?」
「いいえ。なんでもないの」
私の独り言をリザが聞いていたらしい。小さな声だったのになんて、なんて地獄耳な・・・。
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