第14話
ヒロインちゃんの後をついていくと、ヒロインちゃんは中庭のベンチに座って、肩を震わせてうつむいていた。
声をかけるのも躊躇われるほど、落ち込んでいるのがみていてわかる。
声をかけるか、かけまいかと悩んでいると、ブツブツと、ヒロインちゃんが呟いている声が聞こえてきた。
「・・・どうして・・・私・・・悪役令嬢・・・ざまぁ・・・れちゃう。そんなの・・・そんなの嫌ッ。どうしたら・・・」
ん?
なんか、意外な台詞が聞こえてきたような。
ヒロインちゃん何かに怖がっている?
そういえば、乙女ゲームものの対として、悪役令嬢がざまぁする話が流行っていたことを思い出した。
ヒロインちゃんは、この世界が悪役令嬢ものだと思っているのかもしれない。だから、今から必死なのかもしれない。
自分がざまぁされないように。
「アンナ嬢。ここは、現実です。ゲームの世界でも、ネット上の小説の中でもありません。ここは、現実なんです。」
ヒロインちゃんの前に屈みこんで、そっとヒロインちゃんの手を包む。
「っ!!アンタに何がわかるのっ!?あんたはざまぁする立場だからいいかもしんないけど、私はざまぁされる立場なのよ!!」
睨み付けながら言うけれども、泣き張らした目で言われてもあまり効果はない。
そうか、不安だったのね。
ヒロインちゃんは。
「乙女ゲームの世界では私が断罪されるのよ?私も怖いのよ。知ってる?」
「でも、アンタは攻略対象に好かれてるんじゃん。このままいったら私がざまぁされる。それが嫌で早めに学園に通えるように頑張って、いろいろと調整していたのに。」
「好かれたくて、好かれたわけじゃないわ。彼らに対して私がなにかをしたって訳でもないし。私はただ、猫様たちを愛でていただけ。猫様たちはいいわよ。言葉は通じないけれど、あの子たちは心を開けば私たちに寄り添ってくれる。優しくその存在で癒してくれる。言葉はないけど、態度でとても慰められるわ。
だから、あなたも猫様たちに優しくしてみて、きっと猫様たちは想いを返してくれるわ」
「でも・・・どうして仲良くしたらいいのか分からないわ。それに、強制力が働いたらと思うと怖くないの?」
「怖いわ。でも、逃げてばかりじゃいられない。精一杯生きなきゃ。生きて、幸せをつかまなければ」
現実だと気づいて。
ここが現実だと認識して。
そして、一緒に、
「一緒に断罪もされない、ざまぁもされない世界を目指しましょう。」
一生懸命生きてみよう。
「っ・・・うん」
小さいながらも、確かに頷いた。
泣き止んでもいるようだ。
よかった。
「涙を拭いて。目が赤くなってしまうから擦らないでね。冷やしていなさい。」
制服のポケットから洗ったばかりのハンカチを取りだし、ヒロインちゃんに手渡す。
ヒロインちゃんはそれをそっと受け取り、目に当てる。
「・・・ありがと。私も頑張ってみる。でも、猫たちにどうして接したらいいかわからないの。・・・教えてくれる?」
「ええ。もちろん。」
私たちは約束を交わし、それから乙女ゲームが開始される15歳になった。
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