第10話 暴露
1週間ほど経った頃、京都地検の本村検事から、勘太郎に電話が入った。
『星本容疑者なんですけど・・
何か、真鍋刑事にお話しし
たいことがある言うてます
ねん。
念次郎さんのことやっ
て。
それからは、黙りです。』
本村検事は、念次郎と言われてもわけがわからない。
『なるほど、その娘、五条大
橋刀剣強奪事件の強盗教唆
ですけど、五条大橋修行僧
殺人の被害者の友人です。
被害者について、何か思い
出したんでしょう。
強盗教唆の件はえぇんで
すか。』
『ハイ・・・
本人、かなり反省してま
すし。
今後の捜査への協力も、
約束してますので、起訴
猶予処分ということで。』
『なるほど、了解しました。
ほな、迎えに行きます。』
という会話の後、勘太郎は、いつものように、覆面パトカーの準備を始めた。
暖機運転をしていると、木田と本間が、ニヤニヤしながら近づいてきた。
『勘太郎・・・
酒粕ラーメンは、刑事の場
合飲酒にするぞ。』
勘太郎は、星本沙織を伴って、伏見の名物酒粕ラーメンに行くと呼んだ本間の冗談だが、この冗談は、勘太郎にはキツかった。
すったもんだして、結局のところ、いつものように3人で行くことになった。
勘太郎は、はなから誘うべきだったとようやく気付いたが、時すでに遅しである。
勘太郎の覆面パトカーは、国道24号線を南下して、深草方面に左折、龍谷大学を過ぎた交差点を再度左折して、京都地方検察庁に入った。
検事室で、星本沙織の引渡しがされると思っていた3人は、玄関にまで、検事と事務官数人で、連れ出してきていた本村に驚いた。
『捜査1課の本間警部と木田警部補、それに真鍋であります。
この度は、ご連絡いただき、ありがとうございます。』
勘太郎の挨拶もそこそこに。
『勘太郎・・・
やっぱり勘太郎や・・・
わからへんか、俺や、本村
幸治。』
勘太郎は、キョトンとしていたが。
『幸治・・・
なんでお前が。司法試験合格
すんねん。
世も末やんけ。
小学校の卒業式以来か。
懐かしいなぁ。』
勘太郎と本村は、小学校の同級生で、公立中学の勘太郎とは違って、本村は私学の中学校に進んだ。
『お前、どうしてた。』
勘太郎には、自分の友人が司法試験に合格していることが不思議でならない。
『アホか・・・
俺は、洛星中学高校で、京
大法学部ストレートや。』
とんでもない秀才である。
『なんやて・・・
お前、俺らと遊び呆けてた
やんけ、』
勘太郎には、まだ信じられない。
『勉強なんて、授業を必死こ
いて聞いてたらできるわい。
あとは、お前らと遊んで元
気で健康になれ、ガキの頃
親父にやいやい言われ
てた。』
本当に天才的な人間にしかできないことである。
『本村君・・・
何を玄関で騒いで。
その人達は。』
『沢田検事正・・・
京都府警捜査1課長の本間
警部と係長の木田警部補と
真鍋刑事です。』
検事正。
地方検察庁のトップである。
3人は、さすがに直立不動姿勢で敬礼した。
『失礼しました。
あの有名な本間警部と木田
警部補、それに新しい府警
捜査1課のエースと呼び声
の高い真鍋刑事でしたか。』
3人にしてみれば、とんでもない噂が一人歩きしてしまっている。
『私は、真鍋君とは幼なじみ
で親友です。』
本村は、勘太郎の名前を沢田検事正が知っていることに驚いた。
『幸治・・・
お前、それ、自慢になって
ないぞ。
たかが俺やんけ。』
勘太郎は、本村を思いやったつもりだったが。
『お前、知らんのか・・・
お前の評判は、全国区やぞ。
検挙率かて、どえらい数字
やんけ。』
たしかに、勘太郎は担当した事件は、すべて解決している。
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