第4話 手掛かりを探せ

またまた魔界めいてきたというか、オカルトめいてきた。

勘太郎の意見は、なんだか複雑に絡まりそうな事件のような気がするということ。

木田と本間は豪快に笑い飛ばした。

とはいえ、まだ被害者の身元が確認できただけで、何の進展もない。

捜査1課横の小会議室のドアに、五条大橋殺人事件捜査本部と紙で書かれた。

『まず、被害者は、六道珍皇

 寺の修行僧で念次郎さん

 24歳。

 シアン化カリウムを高分子

 化合物カプセルで飲まされ

 て殺されたものと断定して

 えぇでしょう。』

つまり、胃の中で徐々に溶け出すカプセルで、青酸カリを飲まされて殺されたということ。

科学捜査研究所の坂本研究員が説明して、第1回の捜査会議が始まった。

しかし、それ以上、話す内容がない。

『坂本さん、お渡ししたカプ

 セルと念次郎さんの胃内

 残留の高分子化合物の素材

 検査、結果出てますか。』

勘太郎が、何かを坂本研究員に依頼していた。

『勘太郎君・・・

 残念やけど違うなぁ・・・

 ましてや、勘太郎君が

 持ち込んだあのカプセルは、乳酸菌のやろう。

 念次郎さんの胃内残留のは、

 ビタミンCやと思うで。』

本間警部が、ポンと手を打って、立ち上がった。

『勘太郎・・・

 坂本さん・・・

 お前らは、なんちゅうナイス

 なことやるんや。

 今の、かなりの手掛かりや

 と思わんのか。

 みんな、聞いた通りや。

 被害者周辺で、ビタミンC

 のカプセル飲んでる奴、

 洗い出してくれ。』

唯一、できる作業には、違いない。

念次郎は、日頃から外の仕事が多く、日焼けによる肌荒れを気に病み、ビタミンCを常用していた。

そのことを知っている者で、念次郎が、普段ビタミンCのカプセルを入れている入れ物に細工したカプセルを投入できる立場にいる者。

捜査班が、捜査に出動した。

坂本研究員は、さらに詳しく検査をしている。

『坂本さん・・・

 できれば、メーカーと商品名

 の特定はできれば・・・。』

という本間警部からの依頼があった。

『警部・・・

 結果から申しますと。

 大手メーカーの、売れ筋

 商品ですので、大量に出

 回っているものと推察でき

 ます。

 したがいまして、それで

 絞り込むことは、少々無理

 があると、報告せざるを得

 ません。』

普段、念次郎はカプセルのビンが入った巾着を、閻魔堂横のベンチに置いて、観光客に説明している。

しかも、日焼け対策でビタミンCのカプセルを入れていることを話して、笑いを取っている。

つまり、不特定多数が触ることができる。

不特定多数がビタミンCカプセルを買っている。

念次郎は、恨まれるような人物ではない。

ましてや、六道珍皇寺の順位でも、ナンバー3にも入っていない。

念次郎が殺されて得にはならない。

『じゃあ、五条大橋刀剣強奪

 未遂が原因でしょうか。』

勘太郎は、やはりそこから離れていない。

『奏介さん・・・

 傳介さん・・・

 最近の念次郎さんに、気に

 なることありませんでし

 たか。』

勘太郎は、再度、六道珍皇寺を訪ねていた。

木田は、境内をうろうろしている。

『理由も原因もわからしまへん

 けど・・・

 突然、フイっと居なくなる

 ことが・・・。』

どうやら、その時に刀剣強奪犯に化けていたようだ。

しかし、聞けば聞くほど、刀剣強奪などする人物とは思えない。

『夢遊病って、あんな感じ

 なんでしょうか。

 顔つきまで変わっとったん

 です。

 なんか、誰かに操られとる

 ような動きでした。』

兄弟子の奏介は、そのように分析した。

ついて行きたかったのだが、仕事の担当があって行けなかった。

奏介と傳介と念次郎の3人で、観光案内に当たっている。

多い時は、猫の手も借りたいぐらい忙しい。

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