第3話 またぞろの魔界

六道珍皇寺と言えば、またまた魔界めいてきたと勘太郎は思っている。

六道珍皇寺、京都の地獄への入口とされている。

閻魔大魔王を奉っているのも珍しい。

何はともあれ、被害者の身元確認のために、2人の兄弟子が同行してくれた。

一番上というお坊さんが。六道珍皇寺の説明をしてくれた。

『私達は、臨済宗建仁寺派大

 椿山六道珍皇寺にて。六道

 修行をさせていただいて

 おります修行僧です。

 六道と申しますのは、

 地獄道・餓鬼道・畜生道・

 修羅道・人道・天道

 の六道でございます。

 私は、お師匠様より奏介と

 お名を頂戴いたしており

 ます。

 お声をかけていただきまし

 た彼は、傳介と申します。

 そして、亡くなりました。

 弟弟子の彼は、念次郎と

 申します。

 私共、3人あわせて奏傳念

 と覚えて下さいませ。』

そこまで話して奏介は号泣した。

必死で堪えていたことがうかがえる。

府警察本部に到着する頃には、奏介は、まだ号泣で、立ち上がることさえままならない。

傳介は、少し前に、落ち着きを取り戻したばかりの状態。

『奏介さんは、僕達が支えて

 行きますが、傳介さんは、

 歩けますか。』

助手席から下りながら、木田が傳介に問い掛けた。

『ハイ・・・

 なんとか、歩けます。』

かなり気丈な男のようだ。

木田と勘太郎で、奏介を抱えて霊安室に傳介を案内した。

ここまで気丈に歩いてきた傳介だが、被害者念次郎の顔を見るなり大号泣になってしまった。

『この3人・・・

 よほど仲良かったんでしょ

 うねぇ・・・。』

勘太郎まで、涙ぐんでいる。

『そうやなぁ・・・

 って・・・なんでお前が。』

とか言いながら。木田ももらい泣きしていた。

『あはは・・・

 警部補もですやん。』

木田と勘太郎のコンビも、かなり深い絆が出来ている。

捜査1課長公用車を呼んだ本間が。老齢の高僧を伴って帰ってきた。

全員が整列直立不動で敬礼する中、本間と高僧が霊安室に入った。

『おい・・・

 奏介・傳介、大丈夫か・・

 しっかりせんかい・・

 念次郎に笑われるぞ。』

涙ぐんではいるものの、しっかりした口調で、2人をたしなめる高僧に。

『お師匠様・・・。』

『ご住職様・・・。』

奏介と傳介が泣きついた。

この師弟の絆の深さがわかる。『前回は、猿が辻で・・・

 今回は、六道の辻ですか。

 小野篁がこの世と冥界への往復に使った井戸がある。

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