第18話


 

 茶色を基調とし、床には幾何学的な模様をした絨毯がひかれている。艶のある濃い茶色をした家具には埃一つ浮いてはいない。



 木を一つそのまま切り出して作ったというウッドデスクに、木造りのチェア。



 そこに雪代継音は腰掛けていた。



 黒いハイソックスからにゅっとのびた白い脚は行儀よく整えられている。膝が完璧に隠れるほどの淡い青色の長めのスカートと黒いハイソックスの間から白い肌が覗く。



 怜悧な顔つき。まつげは長く瞳はアーモンド型に整い、白い鼻が質の良い調度品のように備わる。



 肩あたりまで伸びているその髪質も姉と似ている。夜の闇を映したかのような漆黒。艶のある鴉羽を思わせるその質感の髪。


 つり上がり気味の瞳が海原に気付く。姉とは違い、柔和な印象は受けられない。


 氷柱のような鋭さを持つ黒い瞳が海原を映した。



「悪かった、雪代風紀指導。探索チーム、海原 善人、雪代 長音、両名無事に戻りました。報告が遅れて申し訳ない」



 海原は素直に頭を下げる。若干部屋の温度が上がったような気がした。



「最初から素直にそういえばいい。ね……、彼女は保健室?」


「ああ、放送指導から聞いたのか? 今頃春野さんとこでスヤスヤしてるだろ」



 海原が扉の近くに置いてある丸椅子に腰をかける。艶のある木目の椅子、これも高い。


「そう、無事なの……」



 継音がパチリと眼をつむって、ため息まじりに呟いた。



 素直に仲良くすりゃいーのに、という一言を海原は飲み込む。



「あとで見舞いに行ってやってくれよ。喜ぶぞ、アイツ」



 海原がトートバックを手にぶら下げたまま、言葉を放つ。


「無用。一姫がいるのなら私が行く必要はない。それと」


「ん?」


「気安い。アイツと呼ぶのはやめて」



 部屋の気温が今度は下がる。海原は袖まくりをしている右前腕に霜が降りたような寒気を感じる。



 継音の整った顔が、海原を睨む。




「あー、言葉遣いが悪かったよ。アイツなんてもう呼ばない」



 海原は、内心の焦りをおくびにも出さず手を振りながら継音に謝る。



 この1ヶ月で海原はこの力持つ奇妙な高校生に対するスタンスを決めていた。



「だからそんなに怒るなよ」


 にかりと笑う。何を焦ってるんだ、何もわからないぜと言わんばかりに。


「怒ってなんて、ない」



 継音が海原から眼をそらす。同時に海原は肌に感じていた冷たさがたちどころに消えたことに気付いた。



 海原のこの超人に対するスタンスはただ一つ。



 "絶対に恐れない"



 これに尽きる。



 力を持つ特別なものを恐れるのは凡人の常だ。事実、避難者の多くはその安全を一部の超人に守ってもらっておきながら、その存在を恐れている。



 少数のこどもを恐れる大多数の大人。歪な社会構造が出来つつあった。


 避難者の中には、自らは守られて当然。早くこの状況をなんとかしろとこども達に怒鳴るような者も存在する。



 海原はその歪な社会構造の歯車の中に入るのを拒否した数少ない大人の1人だ。



「海原さん」



「なんだ?」



「あなたの笑顔、私嫌いなの」


 あまりにもな言い草に海原は表情が固まる。しかし激昂するわけでも言い返すでもない。そのまま継音をただ、見つめた。


 好かれているかは別として、海原はそのこども達と対等であろうとしている。


 この避難生活において重要な役割を持つ個人と友誼を図ろうと賄賂を渡すのも全て、相手をこどもではなく対等な人間として見ているが故の行動だった。



「あまり、笑わないで」



 それが実を結んでいるのは別として。




「わお、毒舌。いいのかなー、風紀指導。そんな悲しい事を言って」



「事実だもの。もう少しあなたは真面目になるべき」



「俺ほど真面目な奴がいるもんかよ。えーと確かこの辺に」



 継音は低いトーンのまま言葉を紡ぐ。海原はさして気にしていないような風を装いながらトートバックの中を漁る。



「何をしているの」


「貢ぎ物探してる」



 海原はトートバックから缶詰を1つ取り出すと、おもむろに立ち上がり長机の端に置いた。



「はい、ツナ缶。マヨネーズは確か家庭科室にあったよな?」



「頼んでない」



 継音は冷たく言い放つ。顔は海原の方を見てすらいない。しかしチラリと、目だけは缶詰の方を追いかけていた。



「そーか。まあでも俺、ツナ缶苦手だからここに置いていくわ」


 海原は苦笑しながらツナ缶をツンと指でついた。缶詰が机の上を滑る。


 継音がびくりと身体を震わせ、その缶詰を見つめた。



「さて、ご機嫌とりはこの辺りにして報告に移ろうか」


「何もご機嫌取られてないけど」



 じとりとした目で継音が海原を見つめる。海原はその視線を気にした様子もなく、生徒会室の壁に貼られてある地図へ近づいて行く。


「新しい化け物と会った。2つとも西区だ」


 海原が壁に貼られてある大きな地図にマーカーで印を書き入れていく。



「詳細は?」



 継音が海原を見つめる。じぃと黒曜石のような黒い瞳がよれたワイシャツ姿の男を移す。



「種類は2種。大型犬を丸呑み出来そうなサイズ、尻尾の代わりに頭がついているトカゲと、馬鹿でかい恐竜みたいなヤツだ」




 キュ、キュ、とマーカーが紙と擦れ間抜けな音が鳴る。



 見ればこの壁に貼られてある地図、ヒロシマ市内図にはいくつか赤いマーカーで書き入れられたサインや、マークのようなものが散見している。



「トカゲに恐竜。ジュラシックパーク?」


 継音がポツリと言葉を零した。


「どっちかと言えばワールドだな。それと大手河だが、もしかしたら河の中にも化け物がいるのかもしれない」



「理由は?」



「大手河で遭遇した馬鹿デカイ恐竜みたいなのが喰ってたからな。やっぱり連中にも一通りの食物連鎖みたいなものが備わっているらしい」



 海原が地図に小さな絵を書き入れる。幼児が書いたようなデタラメなデフォルメをした恐竜や、トカゲの絵が描き加えられていく。



「えーと、アホトカゲに、スピノモドキっと。よし、これでよかろ」


「何も良くないから」



 ムフーと言わんばかりに得意げに海原が腰に手を当てる。背後から継音がぼそりと呟いた。



 海原が首を傾げながら自らの絵を見つめた。そんなにダメか? とじっと地図を見つめた。



「2種類の化け物との遭遇……。よく逃げてくれた。彼女の力?」


 継音が海原に問う。この校内で雪代 長音の力の事を知っているのはこの部屋にいる2人だけだ。


「あー、それなんだがな…… アホトカゲの方は雪代が仕留めてくれたんだが、スピノモドキは違うんだわ」


 海原が頭を掻きながら途絶え途絶えに話す。脳裏に浮かぶのはあのガスマスクの人型の化け物の事だ。


「どういう事? まさかあなたが?」



「それこそ、まさかだな。なんつーか、別の化け物の横槍があってよ。スピノモドキはその化け物に殺された。連中が殺し合ってる隙に俺と雪代は逃げたんだ」



 海原はあのガスマスクの異様さを思い出しながら継音に話す。



 サイズ差をものともしない戦闘力。そしてもしあれが海原の勘違いでなければ。


「それに、もしかしたら俺たちは見逃されたのかも知れねえ。とにかく変な化け物だった」



 継音はその形の良い眉を潜めながら視線を斜め上にずらす。なにかを考えているようだ。



「……その化け物の特徴は?」


「信じれねーと思うが人型だ。ガスマスクを被ってレインコートみたいなのを羽織っていた。あの真っ赤な目ん玉は忘れそうにない」



「……黒かった?」



 継音の一言に、海原は目を大きく見開いた。



「お、おお。そうだ、真っ黒のな。どうして分かったんだ?」



「3日前に上がって来た警備チームからの報告に化け物を殺す化け物の話があった。遠目にしか見てないから詳細は掴めていないが黒い人型だったらしい」


 継音が呟く。海原は改めて地図にガスマスク?とマーカーで書き入れた。


「そいつはどこで見つかったんだ?」


「その時は中区の流山。同一の個体だとするとかなり行動範囲が広い」


 ふむ、と海原は顎を撫でる。継音に伝えていない事がもう1つあった為だ。


 あのガスマスクから流れていた声、海原には意味が分からなかったがどうもあのガスマスクの鳴き声がなにかの言葉である気がしてならなかった。


 海原がそれを継音に伝えようとしたその瞬間。


「……まあ、いい。とにかくお疲れ様。回収した食料は家庭科室へお願い」


 出鼻をくじかれた海原は口を閉じた。この話はこれで終わりなのだろう。


 継音が手元のノートに何かを書き入れていく。


 海原が少し、眼を見開いて継音を見つめた。


「いいのか? 雪代がいないのに俺1人に食料の保管を任せて。ちょろまかすかも知れないぜ?」


 海原が継音と対面になるように椅子を引いてその腰掛ける。質の良い羊毛の絨毯の上を椅子の足が滑らかに滑る。



「あなたの事は嫌い。でもあなたが愚か者ではない事は知っている。それに」


「うん?」







「あなたは私達を敵に回すわけにはいかない」






 海原は無意識に、僅かではあるが唾を飲み込んだ。


 現状、基特高校を避難者の共同体として維持しているのはこの高校に集う数名の奇妙な高校生たちだ。


 彼らはそれぞれ常識では説明出来ない、まるで魔法のような力を扱う。



 それは例えば生徒会保健指導の人を癒す力。


 それは例えば生徒会放送指導の声を届ける力。


 そして、目の前の女子高生、生徒会風紀指導の雪代 継音の扱う、冷やす力。



 この高校が、電力の供給が止まった真夏の状況において避難者を収容できているのはひとえにこの雪代 継音の力のおかげだった。



「そうでしょう? 海原さん」


 垂れた前髪の隙間から継音の黒い瞳が海原を見つめる。



 姉妹だ、と海原はその瞳を見て改めて認識した。


 この2人は似ている。容姿はもちろんのこと何より似ているのはこの瞳だ。


 初めて会った時の雪代長音と同じ、見つめられていると心の底まで探られそうな透明な視線。



 海原は胸の奥がぞわりと逆毛立つような違和感を感じる。しかし、それを表には決して出さずぐっと、飲み込んだ。



「信頼してくれてありがとよ。きちんと食料は家庭科室に届けるさ」


「信頼ではない。信用よ。あなたは使える大人だもの」



 にこりともせずに継音が呟く。




「使える大人、ねえ……」



「失礼な言い方だと思う。けど事実。私達にとってあなたはそれ以上でもそれ以下でもない。そして、そうあるべき」


 海原には目の前の18歳がとても自分より年下の存在とは思えなかった。



「はは。褒め言葉として受け取っておくよ」



「それで構わない。海原さんそれと例の件だけども」



 継音の顔色が初めてここで少し変わった。変化に乏しいその表情筋がわずかに歪む。



「……ああ。分かってる。それについても話したい。ちなみに今回向かった場所には何も残っていなかった」



「……そう」



 継音が少し顔を伏せる。その表情は痛ましい。常の世界ならば少なくともこの年頃のこどもがする顔ではなかった。



 海原が、顔を逸らし部屋の奥側に置いてある空の椅子と机を見つめる。




 会長席と書かれたネームプレートが置いてあるその机に座るものは誰もいない。



 東雲 仁


 基特高校、第78代生徒会長にして、この避難生活を成り立たせた傑物。



 彼の席は1週間前から空いたままだ。



「1週間だ。そろそろ探しにいかんとまずいだろうな」


「……そうね」



 彼がいなくなったのと、海原達、探索チームの半数以上がいなくなったのは同じ日だ。


 1週間前に行われた東雲会長率いる大規模市街探索は、残念ながら失敗に終わっていた。



 生徒会長東雲 仁と、探索チームの人間9人の行方不明という最悪の結末に。




「そんな暗い顔すんなよ。安心しろ。君の心配している事は起きない」



 継音がふっと顔を上げる。


「どういう意味?」



 首を傾げながら海原に継音が問うた。前髪がはらりと揺れる。



「風紀指導、君のお姉さんである雪代 長音は連れて行かないからだ。あい……、いや彼女にはここに残ってもらう」



「……無理よ。あの人、ああ見えて頑固。そんなの絶対認めないわ」



 姉はあなたを1人で外に出さない。継音は目の前の男にそれを言おうとして、辞めた。なんとなく嫌な気分がしたからだ。



「たしかに、君の言う通りだ。だが今は状況が違う。彼女は今、寝込んでいて休息が必要だ、普通に考えて連れて行けないさ」


「……姉さ…。あの人は力を何度使った?」


「2回だ。誤解を恐れずはっきり言おう。あれは俺のせいだ」



 海原は目の前のこどもから眼を離さず告げた。氷柱の鋒を向けられているかのような継音の視線から逃げない。



「……傲慢。そんな風に簡単にいうのはやめて。あなたごときが姉さんの、雪代家の人間の選択に影響を与えることなんてない」



 継音の声色が低い。姉妹だな。怒った時の反応まで似ている。



「事実だ。2回とも雪代は俺を守る為に力を使った。結局俺は口ではあいつに力を使うなと言ってたのに、頭の奥、心の底ではあいつの力を頼りにしてた」


 海原はまっすぐに目の前を見る。部屋の温度が下がり始めていることに気付いた。




「潔いとでも言うと思った? あなたの無能はあなたの責任。それをいうのは勝手だけど私は何もしない」



「手厳しいな。でもだからこそ君は信頼出来る。あの会長だけじゃない。君がいないとここはダメだったろうな」



 海原は冷たい空気の中、体が芯から震えそうになるのを抑えながら笑う。



「準備が整い次第、前から警備チームの連中と話していた行方不明の連中の捜索に向かう。ウチからは俺と鮫島が向かうよ」



 部屋の温度が、下がる。



 今度はわかりやすく、木の机の上に霜が降りる。


「この前の話で、私達探索チームからは人員は出さないと決めたはずだけど」



 低い声。海原は表情を変えずにその低い声にうなづく。



「そうだな。君は反対してくれた。俺たちが危険なところへ向かう事に」



「私には責任がある。あなた達を安易に危険な場所に向かわせるわけにはいかない」



 継音は机の上でその小さな手を組みながら海原を睨みつける。



「それだよ、雪代 継音。君がそういう事を言ってくれる人間だからこそ俺たちは、外に出ないといけないんだ」



「何を言っているの?」



「君たちだけに任せてはいけないという事さ。君たちは俺たち探索チームの事をまともな大人と呼んでくれる。それが俺たちにはとても嬉しく、そして情けないんだ」



 海原は継音を見つめながら話す。



「君たちは本当によくやってくれている。この終わった世界の中、未だに俺たち普通の人間が生きていけるのは全て君たち、基特高校の生徒達のおかげだ」


「わからない。何が言いたい?」



「マトモな大人は、こどもにそんな重荷を背負わせたくないのさ。終わったからこそ、もうどうしようもない世界だからこそ、君たちこどもが生き延びなければならない」



 海原はこの1人では広すぎる生徒会室を眺める。埃1つない部屋。雪代 継音がひとりきりでこの部屋で何をしているのか想像はつく。



「それは違う。出来る人間が出来る事をするべき。そこに大人もこどもも関係ない」



「ああ、だからこれが俺の出来る事だ。まあこんなカッコつけた事言っても結局、あのボクシングヤンキーが引率のリーダーだけどな」



「田井中が? 彼に唆されたの?」



「言い方が悪いぜ、ボス。焚き付けられたと言ってくれ。悪いな、アホな大人ばっかで」



「意味が、分からない」


 継音がまた顔を伏せる。困惑しているかのようにも見えるその表情は一瞬だけ、年相応の幼さを海原に感じさせた。


 海原が笑う。それは本心からの笑顔だ。継音の氷のような冷たさに覆われた表面からわずかに覗いた彼女の暖かさに、笑みをこぼす。


 似ている。他人の為に真剣に怒り、心を乱すその姿。姉と似ている。




「だから、そんなアホな大人から君に頼みがあるんだ」



「聞くと思う? 私の言うことを聞いてくれないのに」



「いいや、君は聞くさ。雪代 継音」



 海原が告げる。太陽は東から昇ると言い切るかのように。



「……………言ってみて」





「雪代 長音と仲良くしてくれ」




 その短い一言を告げた途端、継音の顔がキョトンとなる。


「何を、言っている」



「そのままの意味だ。俺が言う事じゃないのはわかる。言う筋合いがないのも分かる。でも、頼む」



 海原が頭を下げる。顔を動かすと冷気が肌にまとわりついた。



「その通り、あなたに言われる筋合いは、ない」


「筋合いじゃないのは分かる。そして俺は部外者に過ぎない。それでも、頼む」



「なんで、あなたにそんな事を言われないといけないの」



 頭を下げている海原は継音の顔は見れない。それでも、怒っているのはわかる。


 なんでと、問われた。怒っている雪代と同じ冷たい声。この声の持ち主に嘘は効かない。



 だからこそ、海原は正直に言う。




「俺が嫌なんだ。それだけだ。別にお前らの為じゃない。でもなんか嫌なんだよ」



 あまりにもな言い草だな、と海原は心の中で呟く。なんだ、この理由は。



「理由になっていない。やはり私はあなたが好きになれない。なんで、姉さんはあなたなんかと……」



「……そうだな。突然、キモい事言って悪かった」


「じゃあ、行くわ。出発の日が決まったらまた報告する」


 海原は、席から立とうと机に手を置いた。そのまま立ち上がり出口へ向かう。



「待ちなさい。本当に行くつもり?」



 海原は背中からかけられた声に振り向かない。


 ドアノブに手をかける。




「駄目。私はやはり許可出来ない。あなたのような凡夫に出来ることではない。死ぬだけになる」




 海原の胸に、わずかな熱が灯る。この冷たい部屋にぼうっと、小さな火が灯る。



 海原はドアノブから手を離し、振り返る。


 座ったままこちらを睨みつける、そのこどもに笑いかけた。



「やかましいわ、がきんちょ。たまには大人の言う事聞いとけや」



 そのままドアノブを回し、部屋から出る。背中に感じる冷気がより強くなったことは気付かないフリをした。



 がちゃんと、ドアが閉まる。



 海原は早足で生徒会室から離れる。



「あ。やべ」


 呟き。



「トートバック、忘れた」


 数十秒間の間、もう一度生徒会室のドアを開くかどうか迷った結果。


「よし」


 そのまま生徒会室に戻る事はなかった。海原は乾いたシャツを嗅いで、顔を顰める。


 校内のプールサイドに向かうべく歩みを進める。


 生徒会室に戻らないのは決して、怖いわけではなかった。



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