街
その夜から明け方にかけて休息中のこの街にあるものからの意思が伝わる。
――プログラム変更
――昨日のハプニングは予想の範囲内です
――モデル二〇一八年七月九日を開始してください
――尚、プログラムは絶対ではありません
――繰り返します、プログラムは絶対ではありません、各自の判断を優先したとしても罰則はありません
私は誰にも起こされずに目を覚ました。
ベッドから降り窓に向かいカーテンを開け、強い陽の光を部屋に入れるついでに自分の全身にも浴びせ大きく伸びをした。
雲1つ無い青空が今日も一日暑くなる事を予感させる。
パジャマから制服に着替え、部屋を出て階段を降り洗面台に立つ。
顔を洗ってからいつものようにくせっ毛の髪を櫛でよくすいてから、頭の後ろで左右二本に分け、それぞれを三つ編みに結う。
鏡の向こうにはちびで童顔な女の子が立っていて、さっきから私のまねばかりしている。
私はその子をジーとみた。すると鏡の中のその子も私をジーとみる。
今度は笑顔を彼女に向けてみた。するとまたもや私のまねをして笑顔をこちらにむける。
こうしてみると結構可愛いじゃないの。彼女の笑顔を見て素直にそう思った。
「おはよう」
いつもの待ち合わせの場所である交差点にくると、二人とも先に来て私を待っていた。
「今日はきたな、登校拒否児童」
「止めなさいよ、由夏」
由夏ちゃんの軽口を千怜ちゃんはいさめた。
いつものように二人に挟まれておしゃべりしながら登校した。
「今日こそ、帰りにクレープ食べていこうぜ」
まだ朝だというのに由夏ちゃんが早々と、放課後の予定を提案する。
「買い食いはしないよ、だって私太っちゃうから」
もう遠慮はしない。言いたいことを言う。無理に周りに合わせて皆を人間だと思い込むのは止めよう。
「女の子はちょっとぽっちゃりしてるくらいが可愛いんだぞ」
「実は私、ぽっちゃりじゃすまなくて」
「ん? いま体重は何キロあるんだ?」
「さん・・・・・・言わないよ!」
「オレ四二キロ」
「私は四〇キロ」
女の子にはマル秘な個人情報を迷いもなく告白するモデル体型な二人。
今言った数値が本当なら見た目より大分細い。
「と言うわけで真央は?」
「・・・・・・やっぱり言わない」
二人よりは軽いけどそもそも身長が違う。
「買い食いしないなら今日の放課後は図書室でお勉強ね」
千怜ちゃんが新たな放課後の用事を提案する。
由夏ちゃんがものすごい嫌な顔をしたが、それが無難なところだ。
勉学こそ学生の本分である、といってもこの世界では学歴に意味は無いが勉強して損をすることはないだろう。
「ひゃっ」
学校の校舎に入ると下足室で靴から上履きに履き替え廊下に出ると、すれ違いざま男子にスカートをめくられた。
いつものことなのに私はすっかり油断していた。
「今日の分のノルマはこれで終わりね。じゃなくて、このやろー」
私は持っていた鞄をその場に放り出して男子を追いかけた。
彼は私が追いかけてきているのに気がつくと全力で逃げた。
「お、真央、珍しくやる気満々じゃん」
由夏ちゃんも走ってきて私の横に並ぶ。
「黙ってやられてばかりじゃ駄目、由夏ちゃんお願い、あの男子を捕まえて」
私の足ではとてもじゃないが全力を出した男子にはかなわない。
「よしきた!」
返事と共に加速した由夏ちゃんは、私を追い越しあっという間にその男子に追いつき、取り押さえた。
「おらっ、ジタバタすんじゃねぇ」
彼女は男子を羽交い締めにして、私が追いつくまで待っていてくれた。
「さぁ、やっちまえ真央」
私は深呼吸して走って乱れた息を一旦整えた。そして男子の正面に立つと限界ギリギリまで右足を後ろに振り上げた。
「毎日毎日・・・・・・いい加減にしろ!」
その足を振り子の要領で男子の股間目がけて思いっきり振り上げた。
その日以来日課となっていた私に対するスカートめくりはなくなった。
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