友達
次の日の学校の昼休み。いつものメンバーで集まり、たわいないことを話して花を咲かす。話題は夕べのことだ。
「だいたい二言目にはおまえのためおまえのためって行くけど、本当は自分の虚栄心を満足させるために良い学歴を取らせようとしているんだよ」
私の愚痴に同意したたーちゃんが苺牛乳のパックのストローを咥えた。
「だいたいさー、そもそも娘が出来損ないなのは自分達の遺伝子のせいだっつーの」
みこちゃんがポテトチップスを口に放り込みながら言う。今、お昼ご飯食べたばかりなのに。
「せやな、現実はトンビがタカを生むことなんて万が一にもあらへん」
コテコテの大阪弁でてっちんが言った。
「うちの両親も二言目には金が無い金が無いってばかり言ってさー。大学も高校もうちはお金が無いから公立で、とかいわれてるけど私に国立大学は無理だー」
うり坊は両手で万歳した。
「ほんと、大人って口うるさくてやんなっちゃうよね」
私はみんなを見回して言った。みんな同じ事考えているのだなぁ、親や世間に対する不満は同じ。
昼食を終えた私たちは教室で輪になって世間話をしている。季節は冬で中学一年生の三学期ももうすぐ終わろうとしていた。
私の中学進学に合わせて親が家を買ったことに伴い、私達家族はこの街へ引っ越してきた。なので私は去年の春この中学に入学したものの、同じ小学校からのそのまま進学してきた人達と違って知り合いが無く孤立していた。しかし幸いにもクラスに同じように別の地域の小学校を卒業した人を見つけ友達になることができた。その輪は広がり今では私を含めて五人になる。もちろん同じクラスにそんな人がたくさんはいるはずもなく、たーちゃんとてっちんはクラスが違う。
「まだ中学一年生なのに将来のことなんて考えてないよ。明日地球がどうなるか、世界なんていつ核戦争や隕石の落下でなくなるかわからないのに将来のことばかりはなしてんじゃねーよ、もうバブルの時代じゃないんだから」
たーちゃんの物言いにみんな同意する。お金がない、という話はうちの両親、特に母親が言う。そのせいで私はまだ携帯電話を持たせてくれない。持っている人はクラスの半分以上いるのに、家のローンと私の塾にお金がかかるという理由で。
お金が無いというのなら私を無理して塾には行かせなくても良いと思う。
「なあなあ。今度、男の子と合コンせえへん?」
突然てっちんが話題を変えた。
「え、合コン? うわ~やらしい」
「やらしいことあらへんがな、青春しなきゃ。そんなこといってたらあっという間におばあちゃんになってまうで」
「で、向こうの参加メンバーってだれ?」
いやらしい、と言っておきながらたーちゃんは興味津々だ。
「いくよね、まーちゃんも」
突然てっちんがこちらに話を振った。まーちゃんとは私のことだ。真央だからまーちゃん。
「合コンって何をするの?」
初めて会う男の子となにしたらいいのだろう。
「特に決まってヘンけどね、だいたいボウリングかカラオケ、またはその両方やないん?」
「映画とかじゃないの?」
「男女十人集まって映画? そんなの時間の無駄や。映画ってのはね仲睦まじい二人だからこそその時間を一緒に過ごすのが楽しいんやで」
「えらい合コンにくわしおますなぁ」
変な関西弁でうり坊はてっちんに言った。
「まーちゃんが気になってる。山田もメンバーやで」
てっちんは私が一度前に無理矢理言わされた気になる男の子の名前を言った。
「で、いついつ?」
まこちゃんも積極的だ。私はあまり気乗りしない。
「今度の土曜日」
「まーちゃんも行くよね」
「ええっと、う~んどうしよっかな」
土曜日は一日塾の予定となっている。
「行こうよぐずぐずしてると、あっという間におばあちゃんだよ」
「カラオケはあるの?」
私が迷っている間にこの五人で合コンをすることで話はサクサクと進む。普段業務連絡以外でろくに男の子と話をしたことが無い私にはハードルが高い。皆とは知り合って一年経っていないけれどリアルが充実した人生を送っていたのだな。私は初めて知らなかった面を見せつけられた感じがする。
「でも、合コンなんてしたことないし」
「大丈夫、怖くない怖くない。私たちがサポートするし」
たーちゃんが私の頭をやさしくなでた。
「それともまーちゃん、この機会を逃して一生独身でいる?」
「そんなオーバーな」
普段ならそんな事はしないだろう、だが私は母への抵抗心から塾をサボることを決めた。
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