第9話 若殿、現代に現る

 目が覚めると草のきれいに刈り揃えられた場所にいた。

どうやら寝てしまい変な夢を見たようだ・・

すでに日が暮れて暗い。


 仰向けになったまま、横を向いた。

あれ? 草花があれほど咲いていたのに、どこに行った?

緑の草ばかりではないか・・それも綺麗に短く揃えられている・・

なんで草なんか刈りこんでいるんだ?

そう思い周りを見回す。

なんか低木の植木の下に潜り込んでいるようだ・・・


 おかしい・・が寝たところは野原の真ん中で木なんかなかった・・

なのになんで、はその下に潜り込んでいる・・・


 そう思い植木の下から潜りでると・・


 「なんだ、これは?」


 街灯が輝いていた。

松明でもないのに、月の光よりまぶしい光の塊が光っている。

なんだこれは?と、呆気にとられた。


 「ねえ、ねえ、あの人、和服だよ、珍しいよね、公園を着て歩くなんて・・」

 「だよね~、しかも浴衣でなく時代劇で着るような服だよ?」

 「今日、仮装するようなイベント有った?」

 「そんなわけ無いじゃん、ハロウィンでもクリスマスでもないし・・」

 「じゃあさ、アニメのイベント?」

 「この公園で、今の時期、やりっこないじゃん?」


 若い女子おなごが、訳の分からない会話をしている。


 「そこの者、ここは何処じゃ?」

 

 「そこの者? なんのこっちゃ?」

 「え~、時代劇で聞いたことある~、誰かってことじゃない?」

 「へ~・・、よくわかんない~」

 「何処か聞いているけど、どうする?」

 「え~と、おじさんさぁ、迷子?」


 「お、オジサン?! 予がか?」


 「そうに決まってるじゃん、ねぇ?」

 「うん、そうだよ、おじさん。」

 「・・・」

 「あのさ、いい歳して迷うなよ。」

 「そうそう、駅はあっちにあるよ。」


 「?  駅とはなんじゃ?」


 「うっそ~・・受ける~う、バッカじゃない?

それで私たちを釣ろうっていうわけ?」

 「行こう、行こう、もう放っておこう。」


 そういって女子は去ってしまった。


 「訳、わからん・・

おじさん? 予が・・

無礼打ちにすればよかったかのう・・

あ、いけない刀を持ってきていない・・

まあ、よかろう、民を切ってもしかたないしのう・・

それにしても衆生の者はへんな着物を着ておったのう・・

しかも、丈の短い服を着て足など出しおって破廉恥な。

禁止令のお触れをださんといかんかのう・・

まあ、その件は後じゃ。

さて・・これから、どうしたものかのう・・

ここは一体どこなんじゃ・・」


 するとそこに警官が来た。


 「そこの人、そんな恰好で何しているの?」

 「? 予のことか?」

 「そうだ、あんただ。」

 「あんた? 予を指して言うとるのか?」

 「・・あのさ・・、ちょっと職務質問に答えてくれる?」

 「? なんじゃそれは?」

 「・・お前、警察を舐めているのか?」

 「? ? 舐めたことはないが・・うまい物なのか?」

 「お、お前、俺をんのか!」

 「? 何を怒っておる?」

 「ちょっと交番まで来てもらおう!」


 「こ、こら手をつかむな! 無礼者!」

 「何が、無礼・・・・・???」


 警官は目を見開いた。

若殿の姿がユックリと透明になっていく。


 「な!・・何・・」


 やがて若殿は消えて、いなくなった。


 「お、俺、酒飲んでいないよな・・え? 何?」


 警官は暫く公園に佇んだあと、公園内を探しまくった。

しかし若殿を見つけることはできなかった。

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