第6話 お見合い

 ある朝、助左衛門から明後日、見合いをすると告げられた。

なんでも姫ご一行が隣の村に着いたらしい。


 そしていよいよ見合い当日。

かみしもを着せられた。


 見合いについて助左衛門から着替えの最中に聞いてみた。

それによると見合いとは名ばかりで、

 見合いで、ご対面 = 結婚

という方程式だそうだ。

なら、見合いなんて不要では? と、思うが口に出せる雰囲気ではない。

通常見合いが設定されると、よほどの理由が無い限り断れないらしい。


 とどのつまり、俺がこの見合いで姫にあうということは・・

本物の若が戻ってきたら、会ってもいないのに結婚していることになる。

ご愁傷様です。


 見合いの席に着く前に、助左衛門から簡単な見合いの手順の説明を受けた。

最初は相手方の口上を聞き、その後、お付きの者の紹介などがあり、最後に二人で庭園を歩くことになるらしい。

その時、何も話さず、はい、いいえ、だけ言えば良いと言われたので簡単なお仕事と割り切ることにした。


 ところが予期しないことは起こるものである・・助左衛門よゆるせ・・


 さて、実際にお見合いをしてみたのだが・・

お見合いでのご対面は、正座であった。

さすがに他家の姫とのご対面で胡座あぐらはダメだと怒られた。

先に座って待つこと30分位、やっと姫ご一行が現れた。

 

 それから姫のお付きの者から口上が述べられ、姫の紹介、介添人の紹介などなど・・

そのため正座で足が痺れてしまい、冷や汗が背中に流れる。

相手方の一通りの話しがすんだと思われる頃、介添人として付いた助左衛門に耳打ちをして助けを求めた。


 助左衛門は仲人らに、あれこれと理由をつけ俺を残して全員別の部屋に誘導した。

人がいなくなったので立ち上がろうとしたが、足の感覚はなく痺れまくり倒れてしまった。

助左衛門は、その様子に呆れて口をアングリと開けていたが、現代人を知らないから仕方ない。


 そして思った、二度とお見合いはごめんだ。


 しばらくして足の感覚が戻るまで、助左衛門に一人にしてもらった。

たぶん30分位かかったと思う。立ち上がれることを確認してから助左衛門を呼んだ。


 助左衛門から見合い相手は今、庭園に一人だけでいると聞かされた。

庭を鑑賞しているので、俺一人で行って相手をするように言われた。

そして、話しかけられたら、はい、いいえ、だけにしろと、クドクドと言われる。

決して余計な話しはするなと・・。

要は、しばらくしたら迎えをやるから、それまで、のらりくらりと、相手方に話させるだけで、こちらは、はい、いいえ、だけの受け答えだけで乗り切る戦略だった。

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