第5話 城での生活と城下

 草原で目が覚めたその日は、何も要求もなく、することもなく、殿様らしい食事をして一日を終えた。


 翌日からは殿様としての仕事をさせられることとなった。

殿様の一日なんて考えたこともなかったけど、夢って本当に想像力ある。

我が夢ながら天晴れあっぱれというしかない。


 朝起きて朝食、そして重臣からの報告を聞く。

聞いているだけだからツマラナイ・・。

まあ、胡座あぐらで聞くからいいようなものだが、正座だったら死んでいただろう。

なんせ、報告される量が多い。


 仕事を簡単に説明すると、なにやら城下の報告を重臣らしき人々から奏上され、助左衛門の目配せにより”あい分かった、よきに計らえ”と答えるいう仕事だ。

この仕事、昼食を挟み一日中続く。


 助左衛門に、別に俺が聞かなくても助左衛門がやればいいのでは?と、言ったら顔を真っ赤にして、延々と説教をされた。助左衛門にも逆らわないようにしよう・・。


 助左衛門に、こんな仕事ばかりでは気が滅入るので何か他に無いかと聞いたら、では、剣術、馬術を致しますかと、笑顔で勢い込まれた。

これには、さすがに引きつった笑顔で、やったことがないので断った・・

助左衛門は、すごく残念がっていた。


 なんでも若殿は武芸が嫌いで逃げ回っていたので、せめて記憶を無くしている間なら厭がらないでやるのを期待したとか・・

本当の若殿に言いたい、武家ならちゃんと武芸をやれよ、と。

助左衛門の落胆姿が目に焼き付く・・でも、俺はやらないよ、死にたくないしね。


 仕事が終わると湯浴みの後に夕食だ。

湯浴みとはお風呂の事で蒸し風呂だった。別の建屋に行き部屋に入る。

その部屋は板の間で、湯気が板の間の隙間から絶えず出ていて、そこに浴衣で寝転んで小一時間いるという風呂だ。

薬草の臭いがしているので、なんらかのハーブが入っているのだろう。意外と気持ちがいい。


 食事だけど・・これは、ちょっと不満がある。

暖かいご飯ではない。味噌汁も水みたいに冷たい。

助左衛門に暖かいご飯が食べたいというと、これも怒られた。

理由を聞くと、毒味もせずに出せないとか、台所から遠いのと安全のため調理前と調理後に料理人の身体検査をしてから食事を運ぶからだとか、云々・・ 

それにしても、夢でも味が分かるんだ・・自分の夢に敬意を払いたい。


 このように数日生活していて分かることは、この国は日が昇ると起き、日が暮れる前に家に帰るという、おそらく江戸時代と同じ生活のように思えた。


 外出だが、これは以外だった。

四六時中監視されて城から出られないと思ったがそうでもなかった。

城の外には百合監視が付けば比較的容易に城から外に出ることはできた。

その様子から戦国時代とか、風雲急を告げる時代ではなく平穏な時代のようだ。


 城から出て初めて外から城を眺めると、現代に残る城とは違った。

城は平城(平地に築かれた城)で、平屋の木造建築だった。

石垣の上に建っている。

城の中は御簾みすが掛かっていたり、畳み張り、透かし彫りの欄間だとかがあり、時代考証をすると、そこかしこ突っ込まれるだろうが、夢の中だ、気にしない。


 城の周りは板でできた塀で囲まれている。

見張りやぐらがあり昼夜問わず外敵を監視しているようだ。平穏なのにやはり城は城ということだろうか・・

そして城は川、いや堀で囲まれており鯉などが泳いでいる。


 城の周りは武家が住むという木造建築の家が並び、城に近い位置ほど重臣らしい。

武家屋敷の外は商人街で活気に満ちている。そこより外に行くことは百合により阻まれた。

そこは見回すと百姓家がそこかしこにある田園が見渡せた。

家は藁葺きで小川に沿って建っている。おそらく炊事洗濯を考慮したのだろう。


 道は細く人が横に3人並ぶ程度で、曲がりくねりながらはるか遠くまで続く。

まあ、よく分からないが風景だけなら戦国時代前か、織田信長がいた時代なのだろう。

江戸時代ほど進んではいないようだ。


 これらの風景を見たときに思ったことがある。

スタバでコーヒーが飲みたい、マクドをつくって欲しい、ラーメン店が無い・・

そう、とりとめの無い事をを考えた後、ため息が出た。


 はぁ・・、なんだろう、この夢・・長すぎる。早く覚めて欲しい。

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